姉?兄?どっちなの?
きゃあきゃあ言い合いながらお風呂を済ませ、先に姉(兄?)のゴッドハンドにより化粧水やボディミルクなどスキンケアを一通りされ、とろかされた疲労からパウダールームのソファに座り渡された白湯を手にぼーっとしながら姉を待つ。どうやら私は体力を使い果たしてしまったらしい。それでも、貧血で倒れることもなく、常に付き纏っていた吐き気も頭痛も無い。ただ体が動かせ無いだけでフワフワとした心地でむしろ心地よさすらある。以前からは考えられなかった事だ。此方へ来て、確かに姉に申し訳無くも寂しくもあるけれど、なんといっても姉が一緒にいてくれる心強さを考慮すれば、私としては現状のこれだけで十分報われたと思う。ポツポツある小さな幸せは過分とまでは言わないけれど、是非ともアカシア様に恩返ししていきたい。
そうしていると、自分の事も済ませた姉に抱き上げられた。眠気に襲われるが、ご飯を食べなければ。私の体はまだ貧弱なのだから。そう思うものの、上瞼と下瞼がどうしても仲良くしたいらしい。瞼の仲良しをやめさせようと頑張っていると、瞼の向こうで姉が苦笑するのが分かった。
「みーちゃん、美味しいって言ってた雑炊だよ。ちょっとでもいいから食べようね〜。」
そう聞こえたと同時に唇に温かい何かが当てられ反射的に口を開いた。そうだろうとは思っだけれど、やはりスプーンだった様だ。声の反射具合からしていつのまにかダイニングに移動したのだろう。口に入ってくると、またもや反射で閉じ少し咀嚼して飲み込む。やっぱり美味しい。お出汁が効いている。そうして何口か頑張っていたけれど、もう無理みたい。
そこからの記憶は無く、そのまま眠ってしまったのだろうか。突然目が覚め、歯磨き、とハッとするも口の中は気持ち悪くは無かった。姉が洗浄魔法でもしてくれのだろうか。おそらく寝室と思われる部屋は、カーテンはしっかりと閉じられていて薄暗く時間は分からない。
一先ず、隣で死んだ様に寝ている姉を起こそう。
私の大好きなお姉ちゃんは基本的に目に光が無い。それを差し引いても十分美しいのだけれど、死んだ魚の目とまではいかなくとも彼女は大体無表情である。本人曰く、脳内では割と騒がしいらしいけれど。美人の無表情は恐ろしいと言ったのは誰だったか。私も、妹として愛されている自信がなければ、姉とは言え話しかける事は容易では無かっただろうなと想像がつく。
けれど、それでもごく稀に、彼女が楽しめる様な何かが事が起こった時は目が輝き笑みが溢れる事もあった。それの多くは何かはかりごとが上手く成った時であったり、愉悦を感じた時だったりしたので、その笑顔は基本的にあまり可愛らしくはない類のモノだった。(いわゆるゲス顔と言えばいいのか。些か治安が悪い表情であった。)
それとは別に、ごく普通に可愛らしい笑顔になる瞬間も存在した。自惚れかも知れないけれど、それはほとんど私と一緒の時の事だと思われる。ハルお姉さん達もそう言っていたし。確かに二人きりだと頻繁に微笑んでくれる。その中でも特に笑顔が輝く事象があった。
そう、それが私をアレコレ着せ替えて楽しむ時だ。
姉は今その貴重な可愛らしい笑顔を見せながら、私に十二単衣を着て見せろと迫っているのだった。ゲームのアイテムで存在したとは思えずどこから調達したのかと聞けば、まさかの自分で作成したと返って来て、思わず絶句したのは無理もないと思う。私が何日も寝ていたとは考えられないと言うと、私がお風呂の前に寝ていた数時間で作成したとの事。頭がおかしい。
姉の言を信じない訳ではないが手にとって見た布の上質さや縫製は、間違っても素人が作ったとは考えられない品質だ。母の所持していた数百万はくだらない着物たちと遜色は無いように感じ、シスコンの真髄を垣間見た気がして思わず震えた。
「何コレ?何考えてるの・・・。ここまでやる・・・?」
朝食後のティータイムに突然装備を試着してほしいと言い出し、衣装部屋へわざわざ移り何事かと思えばコレである。先程食べた朝食が戻ってきたらどうしてくれるの。
「え?みーちゃんを合法的に着飾れると思って、せっかく魔法使えるんだしと思って、つい、へへ。」
「つい、で出来る品質じゃないのよね!これ。・・・合法的にって、逆に普段は違法なの?違法に着飾るって何なのか聞いても大丈夫なやつ?」
「試してみる?」
「結構です!」
「残念。ふふ。取り敢えず着るだけ着てみてよ、どうせお姉ちゃんしかいないしいいじゃない。」
「・・・もう、仕方ないなぁ。」
何か一瞬ゾワっとした感覚を振り払いたくて、一つ息を吐き仕方ないかと諦める。こういう時は渋っても結局どうにもならない事を身を持って知っているのだ。
それに、そう、仕方ないから。
本当は着飾る事はそれ程嫌いな訳ではない。かわいい服や美しい物は好きだもの。けれど、着飾って他人からそれを批判される事を思うと途端に億劫になる。おしゃれをすれば、決まって似合わないだの調子に乗ってるだの分不相応だのと批判されてきた。そうだなと思える事もあるので、只々悲しい気持ちになるだけで、いい事はない。・・・強いて言うならば、両親やお姉ちゃんが喜んで褒めてくれる事くらい。
けれど、何か理由があればそうならなかった。それは様々で、パーティの格式やお呼ばれの招待客の層に合わせる格が必要、と言う事もそうだったし、時には親戚から譲られた品だったりもした。
それと同じ次元で姉の要望、と言う理由も同じ様に機能していた。
姉は他人に対してあまり興味のない性格だけれど、謎のカリスマの様なものがあり、大して無いはずの家の力以上に周りからいつも忖度されていた。愛されているから、慕われているから、と幼い頃は思っていたけれど、物心がついてからは段々とそう言うのとは少し違うと気が付いた。変な崇拝者も多かったけれど、そうでは無い相手の目にはなんと言うか怯えの様な物が見える事も多かったから。確かに対面しあの底の見えない真っ黒な目を向けられると圧があるかも知れないけれど、それにしても一体何をすればそんな事になるのかと私には想像がつかなかったので詮索は早々に諦めた。
そんな背景もあったせいか、姉の選んだ物だと言うだけで面白い程誰も批判して来なかったのだ。(そもそも家と家の付き合いのある大人は態々うちの家族の心象を悪くするリスクを犯したりしないので除外される為、どんな相手かはお察し。お姉ちゃん風に言うならば有象無象といったところかしら。)
だから、お姉ちゃんが言うなら、仕方ないから、着飾ってもいい。かわいいお洋服も、キラキラしたアクセサリーもつけられる。
このお着物も同じ。私には過ぎる絢爛で華麗なお着物だけれどお姉ちゃんが態々作ってくれたんだし、着て欲しいと頼まれたなら着ても大丈夫。
「着るのはいいけど、お姉ちゃん十二単なんか着付け出来るの?」
「それね、大丈夫。この一式を一度アイテムボックスに収納してみてくれる?」
何か方法がある様だ。返事をし言われた通りにした。
「そうしたらコレに着替えて。」
肌襦袢を渡された。ささっと着るも絹だからすべすべして着心地は良い。この世界の原材料は分からないけれど。え?絹だよね?
「よし、着たね。アイテムボックスの十二単衣のアイコンにタッチしながら、装着、って言ってみて。」
「?うん。装着。えっ?!ひっ、なにこれ!たすけて!」
言われた通りにすると、何枚もの着物が出てきたかと思えば勝手に体が宙に浮かされた。着物や小物は周囲に浮遊して漂っている。
「大丈夫、着付けられるだけだから姿勢だけ気をつけて。」
そう答えながらアンティーク調の椅子に脚を組み座ったまま、姉が椅子ごと同じ高さに浮遊してきた。ティーカップとソーサーも持って、高みの見物といった風情である。自分が焦っている時に余裕そうに飄々とした態度でいられると少し鼻につくのは何故だろう。簡単に言うと少しむかついた。姉はこういうところある。
驚きに体を強ばらせたままでいると、念動力なのか見えない何かに下から袴と足袋を履かされた。次に赤い単が勝手に袖を通される。胸元などの合わせが調節され止まった。そのまま次々と黄緑や黄色にピンクなど数枚重ねられその都度調節され続け、赤い地に一際豪華な金糸で向かい蝶紋様が描かれた衣を着ると、まとめて長い紐で固定される。それから後ろだけのスカートの様な物が装着され最後に他のものより丈の短い、濃いけれど落ち着いた桃色の地に金の花の丸紋の着物を羽織り扇を持たされる。仕上げとばかりに耳上の辺りに一瞬見えた花の飾りが装着されると突然頭が少し重くなった。驚いて振り返ると、花飾りが重いのではなく、髪が床についても余りそうな程伸びたせいだった様だ。
「はぁーーーー。素晴らしい。今世紀一良いもの見た。すっごく似合ってるよ。世界一の美少女だわこれは。あーマジでカメラ。カメラ欲しい。一眼レフなんて贅沢言わないからスマホくれ。これを映像に残せないなんて拷問だよ。それにしても愛し過ぎる。私の若紫ちゃんにしちゃっていいかな?」
本当に驚くと声も出ないと言うのは本当らしい。現に今私はそうなっている。お姉ちゃんが何か言っているけれど右から左に通り抜け全然頭に入ってこない。
浮遊したまま呆然としていると、これまたいつ椅子から降りたのか浮遊した満面の笑顔の姉に手を引かれ大きな姿見の前に連れて行かれた。
そこには絵巻物から飛び出して来たかのような、平安時代のお姫様がうつっていた。
「みーちゃん、驚き過ぎじゃない?体験で着た事あるのに。おーい。」
馬鹿な。クオリティが違う。あまりの事に呆然としていると、呼びかけられる。
「聞こえてるかなこれ。みーちゃん、お姉ちゃんも着替えて来るね。びっくりさせたいからそこで待ってて。」
「わ、わかった。」
ハッと我にかえり返答し未だ浮遊している自身を見渡す。髪は、テレビで見た事のあるお姫様のあのハート型みたいな髪ではなかった。普通に長くなっただけの様だ。ただ、顔まわりの一部は短くカットされていて、大分前に流行った姫カットというやつだ。
そして驚くべき事に、見た目の割に重量を感じていない事に気が付いた。けれど、裾が無駄に浮いていない事を見るに重力は働いているらしい。けれど足よりずっと長い袴も下には垂れず他の着物と同じ様に後ろへ流れている。そして私へは全くと言っていい程負荷はかかっていないのだ。この様な繊細な魔法、問題なのは姉がかけてくれたのか、装備に付属するスキルなのかだ。前者ならば、あの脅威の身体強化使いの姉だしな、の一言で片がつく。しかし後者ならば、ただでさえ自動着付け機能付きなのに、重量操作系のスキルまで付いているとなればとんでもない逸品な事は間違いない。私ごときが装着していい品とは到底思えず、汚したらどうしようと嫌な意味でドキドキしてきた。
そう一人オロオロしているとコツコツと足音が聞こえてきた。姉が戻って来た様だ。
「お待たせ。大人しくしていたかな?子うさぎちゃん。」
「ヒッ」
姉が戻って来たはずが、とんでもなく秀麗な公達が扉から出てきた。角度によって紫にも紺にも見える地の布にそれより少し濃い同系色で紋様が織られた上の衣に、下は萌黄色に金糸で紋様が描かれた袴、を見えないけれど足首でまとめた様な出立ちだ。えーと、確か束帯?じゃなくて狩衣?だっただろうか。それにしてはもっと豪奢な衣装だけれど。教科書や絵巻物で見た公達そのもの。その一目見て分かる程豪奢な衣服を身に付けた貴公子は、閉じた扇の先を口元にあて扉に寄りかかり海外式壁ドンポーズを披露している。このスチルなんだろうはじめて見るけれど、乙女ゲーでも始まるのだろうか?一体どこから夢だったのかしら。でも何処と無く姉に似ている気がする。背が高くシュッとした輪郭にキリッとした目元。女性的と言う訳でも無いけれどそれ程男性的でも無く、そしてちょっと意地悪そうな笑み、ってやっぱお姉ちゃんだ!?
「息!また息止まってる!みーちゃん、息して!」
背中を軽い力で叩かれ我にかえった。
「けほ、はふ、何なの?何で公達?何処の貴公子ですか?普通ここは一緒に十二単衣でしょ???こんなイケメンふざけんな!」
「こら、みーちゃん言葉使い!ダメでしょ!」
「うわ、喋ったらお姉ちゃんだし。コスプレ感が出るはずの冠が妙に似合って違和感無いのもなんなの?」
「まぁまぁ、我ながらイケメン過ぎて申し訳ないけどこれで行くよ。笑いをとりに行ったセリフも忘れさせる程イケメンでごめん。ハハ。女の子二人より兄妹の方が舐められ具合はマシかなと思って。丁度おり良く邪魔な胸部装甲も外れた事だしね。昨日みーちゃんが寝た後急いで作ったのだよ。十二単衣だともしもの時に足を使いにくいだろうなとか、みーちゃんも動きにくいだろうからずっと抱っこしてようとか思ってないよ。」
なんか当然の様にルックスに自信のある態度に腹たつけれど本当にイケメン過ぎて言い返せない。これいざとなったら暴力に訴えるつもりでは無いよね?
「いやそれ思ってる人の言い方。足を使うって何する気???暴力はちょっと、どうかな?胸部装甲って、うぅ、おっぱい・・・」
「人の胸にまだ未練持ってんの?まぁいいや、牛車も用意してみたから歩くシーンはあんま無いかもだけどもね。むしろハッタリがてら牛車ごと浮遊して登場予定まである。」
「うわ、それ絶対目立つやつ!大丈夫なの?そんな派手な登場して。」
「ああ、伝えてなかったっけ。どうせ周囲に溶け込むとか無理だろうからむしろ目立つ事で、街では逆に人目に触れるようにして、おいそれとモブが接触出来ない高嶺の花にした方が守るの楽かなと思って。絡んできたら正当防衛でどうとでも出来るし。何より私達目立たない様にとか絶対無理だからさ。」
「そんなに?魔法使わない様に自重するつもりだよ?って言うか知り合いじゃない人取り敢えずモブって言わないで。よくないよ。」
「さっせんした。」
全然悪いと思ってない!分かってたけど!
渋い顔をする妹も可愛い。ため息をつきながら扇で口元を隠す仕草も妙に堂に入っている。何なら持ち方も正しいし姿勢も首の傾げ方すら美しく所作も問題無い、何処ぞの姫君と言われても疑われる事は無いだろう。むしろ庶民だと告げた所でお忍びなんだな、と勝手に納得されそうだ。
「いや、じゃなくて、そう言う次元の話しじゃないんだよね。偵察して分かったけどぶっちゃけ私達、顔面偏差値と躾と言うか教育のせいで目立たないとかそもそも無理なのよ。一定のレベルまで殆どの人が教育されてる日本ならまだしも。私達がモブでいられたのも周りも全員お嬢様だったからだからね。やるなら仮面とかローブで体ごと隠すか幻覚付けないと無理。じゃないと、見た目でよって来たモブに絡まれる→コロコロ→お尋ね者になる、の流れに100パーなるわ。」
突然物騒な流れになった。
「えっええ?そこは、コロコロは我慢して貰って、って倫理観捨てすぎじゃない?て言うかそもそもお姉ちゃんがモブだった事なんてあった?・・・アッナンデモナイデス。・・・んん、コホン、まぁ確かに、この公達イケメン過ぎるもんね。立ち姿からすら溢れ出るイケメンオーラに仮面とか逆に目立つか。しかも仮面つける事自体がそもそも怪しいしダメかな。幻覚魔法も解けなくてもかけてる事自体がバレたら一気に全部が怪しく見えちゃうか。私でも何もしてなくても不審者扱いしちゃうかもだし。」
「そう言う事。そもそも本当に魔法使わずにいられると思う?みーちゃんはまだしもお姉ちゃんは無理よ。無意識に魔法使ってる時すらあるし。それがもし規格外のものだったらその後の流れは現実ではダルさしか無いよ。そんな事になるなら最初から圧かけるのが手っ取り早い。」
そう言いながら、そろそろかと本日何度目だろう、大量に作成したシュガーポットの一つを取り出しカシャンカシャンと結晶をいっぱいになるまで作り入れまた仕舞った。この作業にも随分慣れたな。何も考えず出来る。
「そっかぁ、まぁね、たったの数日で魔法使うことに慣れきってしまってはいるよね。ポカミスしないとは言えないかも。」
「みーちゃんはみーちゃんで稀代のドジっ子だしね。転びかけたみーちゃんを抱き止めた回数ももはや数えられないレベルのお姉ちゃんには分かるよ。絶対バレる。全財産かけてもいい。」
「うぐ。」
「無駄な努力するなら最初から目立ってしまって、逆にそれに住民を慣れさせた方がコスパいいでしょ。あの人だからね、あるある。ってなる様に。」
「うわ、嘘でしょ、今までそれ計算でやってたの???・・・何処行ってもお姉ちゃん最終的にそうなるから天性の何かだと思ってたのに!腹黒だったなんて!」
「エっ今更???いくら性悪ムーブをみーちゃんの前では隠してたとは言え、バレてるものだとばっかり・・・、え?だって30年近く見ててマジで?ピュアピュアじゃん。天然記念物じゃん。バレてるけどあえて知らないふりしてるのかと思ってた・・・。どんな性格だと思ってたの・・・?アッ待ってやっぱ聞きたくないかも、」
「子供の時は傍若無人だけど優しい所もある、って感じでキレイなジャイアンみたいなものだと思ってた・・・。大きくなってから思ってたよりアレな事は知ったけど。もちろんスパダリは私に対してだけだったのは知ってるよ。ちっちゃい頃は妹にだけぶりっ子してるの不思議だったなぁ。」
「ぶ、ぶりっ子・・・?!」
「?うん。いやだってキャラ違いすぎて・・・でも普通逆じゃん?小さい頃はどっちが素なのか分からなかった時もあったけど、最終的に私の事好きだから仕方ないんだなと思って。」
「ブハ、ゲホゲホ」
「だって他人にめちゃくちゃ塩なのいつも見てるし・・・、天然で傍若無人だと思ってたのに、腹黒で傍若無人してたの?」
「あ、性格良いとは思われてなかったのは分かった。」
「まぁ、それはね。私に絡んで来た人達にお姉ちゃんが何したか、ハルさん達にしつこく聞いたらたまに教えてくれたし。程度はあれどアレを聞いたら性格いいとはちょっとね。ぶっちゃけお姉ちゃん、報復なら何してもいいと思ってるよね?犯罪はやめてください。舎弟みたいな人達に何かやらせるのもね。」
「いや、犯罪まではやってない、舎弟なんていません!ホントdアッ、はい。もうしません。ごめんなさい。」
弁解しようとした所で扇の奥からジロりと睨まれ慌てて謝罪した。その迫力、十分北の方としてやっていけるぞ、妹よ。でも犯罪は無いよ。ホントだよ。
気を取り直して本題に入ろう。
「ケホン、えーと、話変わるけど、それで、今日からお姉ちゃんのことはお兄様、と呼ぶように。」
「え!?・・・いや、嘘でしょ。・・・ほ、本気?」
「いやこの格好でお姉ちゃんはおかしいでしょ。お姉様ももちろん。」
「それはそうだけど・・・。」
呼び方を変えるのが恥ずかしいのか妹はもじもじしている。なんか嗜虐心を煽られるな。
「さ、我が愛する妹よ、その愛らしい声で兄を呼んでおくれ。」
ノリで軽く抱き寄せお願いしてみた。
「ひああああああ!やめて!普通の!兄妹は!そんな事!言わない!たぶん!」
少し低めの声を意識して囁いただけで顔を真っ赤にした妹があまりにもに愛らしく、思わず抱き上げ私の胸元に腕を突き離れようとする妹の顔に夢中でキスの雨を降らせる。
「ほら、呼んでくれないのかい。」
「あ、あの、もうやめて・・・もう妹のライフはゼロよ・・・。」
蚊の鳴く様な声で抗議され渋々やめた。相変わらず夢見がちな妹は寒いキザ男ムーブに弱いらしい。姉にキザ男ムーブされても気持ち悪くないんだ。ふーん。顔赤くなるんだね。なるほど。
「ふむ、でもこれからお兄様と呼ばないとならないのだし、早く慣れた方がいいんじゃない?」
「あう、わ、分かった。んん、えーと、あの・・・お、お兄様?」
上目使いかっわい。なんだこれ。はーキュンキュンする。かっっっっわい!!おいおいおいて言うかこれイケるんじゃね?性別が女じゃ無くなっただけでそんな事ある?これどう見ても私の事気持ち悪いと思って無いよね?・・・とは言ってもここで調子に乗って、これがときめきではなく只の羞恥からくる赤面だった場合は死しか無いのでこのあたりでやめておこう。
「ん。よく言えました。これから慣れて貰わないとね。ボロでたらそれこそ怪しまれるよ。」
不審を抱かれないようになるべく普段通りの声音で話し頭をいつものように撫でると、強張っていた妹の体から力が抜けたのを感じた。
「う、うん、がんばる・・・。」
恥ずかしそうに目線を下げ、少し赤らんだ顔で答える妹に何かが湧き上がってきそうになり、軽く頭を動かし振り払った。
因みにじゃあ穏便に同じ十二単衣にしろと言う声なき声は黙殺する。特に理由はないけれど強いて言えば、それではつまらないので。ね。




