聖女の浄化
思っていたよりかなりあっさりと終わった。
初めて自分の意思で動物を殺したにも関わらず、特に何の感慨も無い。いや、動物では無い、魔物だ。私のこの精神状態が順応スキルからきているのか、魔物イコール殺していい物と認識しているからなのか分からないが、取り敢えず恐慌を起こしたりせずに済んで良かったと思おう。
さて、この魔物をどうするか、と考えたところで突然体の質が向上したのを感じ取った。
「っ・・・、なんだ・・・?」
「んぐっ・・・、」
驚いた拍子に腕に力をいれてしまったらしい、妹の呻きが聞こえ慌てて力を抜いた。
そこでやっと、もしやレベルアップ現象では?と思い当たった。慌ててステータスをひらく。
Lv.11
HP 162/4620
MP 1187403/1290500
やはり当たっていた。しかも大幅にレベルが上がっている。一匹でここまで上がるのはどうなのだろう。やはりBランクだっただけはあったと言う事なのだろうか。
しかし、だ。何故かHPしか向上していない。ふと、パーティー経験値は入ったのだろうかと過ぎり妹見ると、妹もステータスを表示していた。と言う事は、妹も体に何か変化を感じ取ったのだろう。
「みーちゃん、PT経験値入った?レベルアップしてる?」
「うん、入ったみたい。レベルアップしてるよ。何故か強化されたのHPだけなんだけど・・・。」
「ああ、お姉ちゃんもそうだよ。レベル一気に11になった。そっちは?」
そう言いつつ覗き込む。
Lv.7
HP 25/1060
MP 521720/525500
「7まで上がったみたい・・・。」
「おお!みーちゃんもレベルアップしてるね!1060かぁ。これなら安全にみーちゃんの虚弱な体を強くしていけるよ!」
「そ、それは嬉しいけど、でもこれってズルじゃない・・・?」
「あー、まぁ言いたい事は分かるよ。パワーレベリングは卑怯じゃ無いのかって事でしょ?でもさ、考えてみて。ここはゲームじゃ無いんだよ。みーちゃんを守れるなら卑怯でも何でもいいと思う。それで遠慮して死んだりしたら只の馬鹿だよ。むしろこれが可能って事は、王侯貴族とか存在する世界なら同じ事してる可能性大だし。お金持ちとかね。」
「馬鹿・・・。確かに、命かかってるから・・・、ううん、いいのかなぁ。いや、お姉ちゃんには悪い気がするけどお姉ちゃんがいいなら私も気にしない事にする!死んだら元も子もないし。浄化に行けなくなっちゃう。」
「それで良し!・・・それと、みーちゃんが気に病む前に今のうちに言っとくけど、全部が全部お姉ちゃんの善意とかじゃ無いからね。」
「?」
「これから先パワーレベリングをする事についてだよ。そりゃ、8割方みーちゃんが可愛いからと大事に思う気持ちからではあるよ?でもね、みーちゃんが害されると言う事はお姉ちゃんに無能の烙印が押される事と同じなんだよ。考えても見てよ。これだけ能力貰ってて守れなかったら無能以外の何者でもなくない?例えみーちゃんがそんな事ないって否定したとしても私の私自身に対する評価はそうなっちゃうのは免れない。そう考えると、お姉ちゃんの心の平穏の為にもみーちゃんがレベルアップする事は、守り易さは確実に上がってリスクは減る、良い事しか無いよね。だから、みーちゃんは申し訳ないとか余計な罪悪感抱いたりする必要ないからね!」
「・・・。そっか、お姉ちゃんにも打算とかあるなら安心した。・・・それがお姉ちゃんにとってメリットって言えるメリットじゃ無い気がするけど。でもモヤっとした部分が無くなってちょっと安心したかも。」
「ふふ、ならばよし!さて、この魔物このままだと森を穢すから回収するけど、解体・・・は街でしてもらおうか。面倒くさいし、みーちゃんにスプラッタはまだ早い。」
「うう、それって私足引っ張っちゃって無い・・・?あぁ、でもごめんなさい、・・・そうして欲しいかも。」
「いいのいいの。これは足引っ張っちゃってるとかじゃなくて、私自身が『そうしたいからそうしてる』の範疇だよ。だから気にしない。」
「ううーん、そうかなぁ・・・。」
そう遣り取りしつつ、魔物を軽く結界で包みアイテムボックスへしまった。剣を洗浄してみたものの、何だかモヤモヤしている気がする。ミスリルソードを鞘へ収めずじっと見ていると、妹が浄化したいと言い出した。
「剣を?まぁ確かに、洗浄したけど変な気配が消えないんだよね。」
「うん、たぶんこれが瘴気。ごく薄いけどね。モンスター本体はもっと濃かったけどね。放っておいてもここならその内浄化されるけど、あの大樹に少しでもに負担をかけるのはちょっとね。」
何を言ってるんだろう。いや、瘴気が見えてるっぽいのはまだ分かる。聖女だし。浄化する役割を持つならば繋がりとしては分からなくもない。そこでは無く、放っておいても浄化されるだとか、大樹に負担を、とかの部分だ。ああ、でも、放っておいても浄化されるって言うのは妹が近くに住んでいるから、と言う事ではないか?
だが、大樹とはおそらく家の側の途轍もなく大きなあの樹の事だろう。言い方からして、あれに浄化能力があると言う事か?それならどう言った流れでそれを知ったのだろうか。
「まってまって、急に知らない情報落とさないで。大樹ってあの家の側の?あの樹浄化出来るの?何で知ってんの?」
「え?あぁ、あれ?何で、あ、ゆめ?」
「え?え?急になに、こわいこわいどうした。」
「あ、何かちょっと記憶が、多分、夢の・・・。」
「うん、今日はもう帰ろう。何か記憶の混乱があるんだね?お家で落ち着いて考えたらいいと思うよ。」
「うん・・・、あ、浄化だけさせて。多分すぐ終わる。」
「ええ・・・?後でいいじゃん・・・。早く帰って落ち着いた方がいいよ。」
「すぐだから!10秒まってて!」
「もー・・・。」
降りたそうに身をよじられ、抱き上げていた妹を仕方なくおろす。妹は地面に降り立つなり跪き、掌を合わせた。
何だか心地良いような不思議な波が妹から漂ってくる。不思議に思い魔力視を使うと、妹の周りが段々とキラキラとした金色の魔力で覆われ始めていた。
これが聖女の浄化かと、神聖にも見える光景を見ていると、金色の魔力が膨らみ渦巻きだす。呆然としていると、突然弾けた様に広がっていった。そうして広がった金色の魔力は中々の広範囲に降り注いだ。
金の魔力の輝きが治まり周りを見渡すと、何だか森の色彩がワントーン明るくなった様な気がする。今の光景を見たせいでそう感じるだけだろうか。
そこでふと思い立ち、先ほど採取していたマルネの樹を鑑定してみた。
特に何も意図してはいない。本当にただ何となく思い立っただけだったのだ。この時は。
マルネの樹(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)
聖属性
聖なる魔力を豊富に保有している
先程と明らかに変わっている。確か星3だった筈である上保有しているのは聖なる魔力では無くただの魔力であった筈だ。
「・・・・・・、っみーちゃん!!やっぱみーちゃんもチートじゃん!!!!!!」
言ってから、ハッと、まさか他の樹もそうではなかろうな、と他の樹々も鑑定してみるがマルネ以外は変化は無かった。但し、周辺の他のマルネの樹は同じように星4で聖属性であった。
「ひえっ、な、何。急に。」
「いや、マルネの樹鑑定してみ。この樹、誰かさんが浄化する前は星3だったのに浄化後は星4にランクアップしてんだよね。しかも聖属性付与されちゃってます。この件についてどう思われますか?」
「違うの。これは、その、森が大変そうだったから大盤振舞いしちゃっただけで、小さな個体だけにとかも調節は出来るよ!ちゃんと。」
「でた、謎の樹との意思疎通!いつしたの?!安全なの?それ!じゃなくて、聞きたいのはそこじゃない。聖属性付与出来るとかやばくねって話。」
「ええ?でもヤバさで言ったら私世界に一人だけ神聖魔法使えるし、そんな今更驚く事?」
「へ?何それ、世界に、一人?ぐあ・・・。」
「ちょ、お姉ちゃん?」
「みーちゃんのレ・・・稀少価値が、・・・よし、取り敢えず家に帰ろう。考え事は家でしよう。」
「そうだね。浄化も済んだし。」
言われてハッと握ったままのミスリルソードを見ると、先ほど感じていたモヤつきは綺麗さっぱり消えむしろ神聖ささえ感じるほど冴え冴えとしている。美しさも増した様にも感じる。考え事を全て放り投げたい気持ちを取り敢えず抑え、先ずは家に帰る事にする。
「よしそれならさっさと帰ろう。そうしよう。」
サッと鞘に収め、言いながら妹を素早く抱え妹ごと全身に身体強化をかける。妹がぎゅっと抱き付いてきたのを確認しすぐに駆け出した。




