調合ってそんなんだっけ?
二人はお昼ご飯を食べ終えた後紅茶を飲みながら、作業部屋について話し合う。ああでもないこうでもないと、意見をお互い出し合いようやく納得する結論がでた。
「よし、じゃあ作業出来るように空き部屋を調合用に整えよう。」
「そうだね!」
話し合った結果、玄関から入って吹抜けのエントランスを通り過ぎた奥にある、お貴族様のサロンルームの様な広い部屋とその隣のゲストルームの壁を取り除き一つにし、作業用部屋にする事にした。
部屋数自体は割と沢山あるが、二人暮らしでは部屋はそんなに沢山は必要無い。それにこの部屋、大きな窓が幾つもあって明るいのと、テラスに出られる大きなガラス扉があるのだ。薬草が足りなくなったら、テラスからそのまま直ぐに階段で庭に降りる事ができるという利便性があった。窓も大きいので換気も容易いだろう。それに、まだこの世界での生活に慣れない内は、お互いが目の届く場所で作業しようと言う事で意見は一致した。
部屋と部屋の間の壁を取り除いた為、かなりの広さがある。空き部屋の方は、匂いのする調合などを行う様になってきたら強化ガラスのようなイメージで、新たに壁を作る予定だ。
一先ず今は、学校の理科室にある様な大きな作業テーブルを中心部分に六つ設置した。もちろん妹が使う半分の作業台はテーブルも作業用椅子も、立ったり座ったりしやすい高さに低く調整済みだ。と言っても、使用面積は部屋の四分の一程。広々と場所をあけている壁際には、そのうちに棚や収納を設置して、其々相手に使ってもらっていい素材や道具などを置くつもりだ。勿論、状態保存できる様にして。一々話しかけてアイテムボックスから出してもらって受け取るのは、効率が悪過ぎる。
カーテンは薬品の劣化などを考えたら遮光性のものが良いのではと言う話も出たが、そもそもそんなもの持っていない。当座は、劣化しそうなものはアイテムボックスにしまっておく、と言う事になった。
「じゃあ私早速試してみるね。」
色々と思考を巡らせていると、突然妹がそう言い出した。
「えっ?道具の用意要らないの?」
道具を用意せず始めるつもりのようだ。一体何をするんだろうか?
「うーん、多分、魔力だけでやれると思う。ちょっと見てて。」
「う、うん。」
妹はそう言うなり、材料となる活生草を取り出し始めた。何束か作業台に並べ終わると、おもむろに一束を左の掌にのせ、それを半透明の膜で包む。
妹はそれを、目線程の高さに浮遊させ、じっと見つめる。
しばらくすると膜の中で、フードプロセッサーに入れたかの様に、どんどん切り刻まれてはじめるではないか。驚きつつそれを見ていると、今度はスッと右手が差出され、その掌の30センチ程上に、2リットル程の水のボールが現れた。
妹をを見ると、妹は少し眉を寄せながら水球をまたもやじっと見つめると、直ぐにボコボコと水球が沸騰してきた。念動力で操っているのか、妹が手を動かすと、みじん切りが終わったらしき膜の中へそれが注がれていく。
注ぎきると、一つになったそれへ掌を向けたまま、空気ごと包むような体勢でしばらく待っていた。何をしているのかわかないが、それに魔力が少しずつ、本当に少しずつ繊細なくらいに注がれているのが分かる。不思議に思って目に魔力を纏わせると、液体の中に何かの印が浮かび上がって来ていた。いや、浮かび上がると言う表現は正しく無い。妹が魔力で印を描いている様な感じだ。印相体と言うのだったか、ハンコの文字のような模様だ。
どんどん眉間に皺がよっていく妹に、私は何故か冷や汗をかきながらも、妹が集中しているのは分かったので、大人しく黙って見ていた。
すると、少ししてパッと薬品が光って攪拌が止まった様だった。光は完成の合図だろうか。
「できた!」
妹が嬉しそうにこちらを振り返る。空中には黄色っぽい液体が浮いたままだ。中には沈殿物は見当たらない。お茶を淹れる時の様に抽出して漉すのかと思っていたが違うようだ。
ハッと我にかえる。
「すごい!めっちゃかっこよかった!はぁ?すごいんだけど!何なのそれ!?調合ってそんな感じなの!?薬研でゴリゴリするんだと思ってたんだけど!何あのハンコかっこよ!」
いや、すごいしか言っていないのは我ながらどうかとは思うが、語彙が無くなってしまったのは仕方が無いと思う。
「いや、これ初歩中の初歩のポーションだからね。工程が多くなってきたら集中力が持つか分かんないし、道具があったほうがいいかも。」
と、そこで妹はしまった、と言う顔をした。
なるほど、完成した薬品は未だ浮かぶ膜の中である。言われるのを想定してアイテムボックスから取り出し殺菌洗浄した。
「お姉ちゃん、ごめん、なんか入れ物ない?早く作ってみたくてそこまで考えてなかった・・・。」
「あはは。いいよ。はい、とりあえずこれでどう?」
ガラス蓋の密閉できそうな空瓶を渡す。
「ありがと、ちょうどいいサイズ。」
瓶の口を通る程、細くねじる様な流れで水量を絞られて、まるで透明なホースでもあるかのように空中から瓶へ全く溢れる事なくどんどん注がれていった。
(めっちゃ器用〜〜〜。私にはまだ無理そうな操作を簡単にしてらっしゃるわ。初めてでこれはうちの子天才では?さすがみーちゃん。まぁ、性格からして繊細な操作得意そうだもんね。私はどちらかというと力こそパワーなタイプだし。)
思わぬところで、制御能力の差を見せつけられてしまった。
(くっ・・・!このままでは脳筋ゴリラキャラになってしまう。それだけは嫌だ!制御の訓練、がんばろ・・・。)
一人決意を新たにしていると、気付けば訝しげに妹に見上げられていた。
「・・・コホン。えーっと・・・、じゃあみーちゃんはそれを続けるって事でオーケー?」
「うん。いつか目を閉じてもできるくらいに熟練度を上げたいところ。感覚で分かるんだけど、熟練度上がったら、薬草に魔力を流すだけで同じ物が出来る様になるっぽい。それを試してみたいからさ。」
「はぁ?すご。それってチートだよね?語彙もじゃんじゃん溶けるわ。まぁ、分かった。とりあえず空瓶多めに渡しとくね。また必要な物あったら言ってね。」
「ありがと。お姉ちゃんはどうするの?」
「手作業で、というか地球で作るのと同じ様な作り方で軟膏を作ろうと思ってます。蜜蝋とかもアイテムボックスに入ってたから。訓練のために、魔力循環しながら何か手作業するつもりだったから、それにちょうどいいかなと思って。」
「そっか、オーガニックがどうとか一時期はまってたもんね。そりゃ作り方知ってるね。」
「うっ・・・。ミーハーじゃないんです!作業が楽しかっただけなんだよ・・・!」
「いや、別に何も言ってないよ、急にどうした?大丈夫?」
「いや、ちょっと。ごめん気にしないで。じゃ、お姉ちゃんこっちでするね。いつでも話しかけていいからね。」
「はぁい。私、集中しないとだから多分話しかけないと思うけど、分かった。」
「塩!」
(なんか、対応が中学生時代のみーちゃん並みに塩なんだけど・・・!今朝までは甘々だったのに・・・!・・・出来ることが見つかって、少し落ち着いてきたのかなぁ。最終的にどんな感じで安定するんだろうねー。体の年相応にはならない気がする。大人びた子供になりそうだよね。)
気を取り直して自分の作業台につく。
地球での作り方にそって傷薬になる軟膏を作るには、おそらく活生草のハーブオイルと蜜蝋を溶かし合わす事になる。こちらでのちゃんとしたレシピは知らないけれど、とりあえずやってみよう精神で。例えキチンと傷薬にならなかったとしても、材料的にハンドクリームなどには使える筈だ。せっかくメイカーのスキルはあるが、訓練のために今回は使わずにおく。
となると、まずは、活生草のハーブオイルを作らねばならない。勿論乾燥させた活生草は所持していないので、今回はフレッシュハーブでの作り方で作る事にする。こちらは常温保存が出来ないが、アイテムボックスにしまっておくなら時間経過は無いため問題はないだろう。
オイル、茶漉し、漉し布、活性草、鍋、保存瓶を取り出す。
アイテムボックスに入っていたオイルを鑑定したところ、リーブルと言う実から作られた植物性オイルであった。ゲーム時代にはそんな植物は出てこなかった。むしろ、ゲームで入手したこのオイル、粘性のモンスターから搾った油の筈なのだが・・・。この世界にはもしかしたら当のモンスターが存在しないのかもしれない。それで辻褄合わせに原料が置換されたのだろうか?理由は不明だが、鑑定しても料理にも使われている事と保湿効果があるくらいで、特筆すべきところはなかったので気にしない事にする。強いて言うならば、見た目や香りはオリーブオイルに近い気がする。同一ではないが。もはやモンスターの影も形もない。
全て洗浄したら、早速はじめる事とする。まず、活性草を一束分、鍋に5センチメートルほどにちぎり入れ、続いてその半分くらいの分量のオイルを投入する。そのまま鍋を念動力で浮かし、下から魔法の火で温めていく。と、念動力を使おうとした時に、魔力循環がおざなりになってしまった。意識して再開する。保つのも難しいが、訓練なのでやるしかない。乗り越えなければ、結界の外に出られないのだ。そのまま温め続け、沸騰しそうになったところで火を消し、適当な布の上にのせ放置し粗熱をとる。
オイルは中々濃い緑色になった。成分が抽出されたせいなのだろうか。もっと黄緑とか淡い色を想像していたんだけれど。
魔法で急速に冷すと、効能がどうなるか分からないので、今回はこのまま待つ事にする。急ぐ事でも無いし。今回の完成度次第では次回試してみてもいいかも知れない。
(あっ!今の時点でどんな感じか鑑定しておこう。)
活性草オイル(⭐︎⭐︎⭐︎)
活性草の成分が溶け込んだオイル。傷や肌荒れを少し再生させる。
(ふむ。乾燥をふせいだり栄養で遠回しに肌を整える地球産のハーブとはやっぱ違うね。はっきりと、再生させるって書いてあるし。目的通り、飲み薬じゃなくてちゃんと塗布用にできそう。あ、でもハーブオイルの様に料理に使ったり出来るのかな?・・・おっと、そろそろいいかな。)
粗熱が取れたところで、瓶の上に茶漉しと布を動かないように設置し、溢れないように鍋から茶漉しへ注いでいく。注ぎおわるも、漉しきれておらず茶漉しにまだオイルはたっぷり残っている。オイルが瓶へ落ちきるのを待っている間に、ゆっくり次の軟膏の準備をしよう。
軟膏の作成に必要なのは、鍋、小鍋、ハーブオイル、蜜蝋だ。湯煎にかけるので本当はボウルが良かったのだけれど、所持していないので小鍋で代用する。因みに香り付けにエッセンシャルオイルも入れたいところだが、そんなものはないのでこれも今回は見送る。時間はたくさんあるのであとで作ってもいいかなと一瞬考えるも、やはり蒸溜の方法でハーブから作るのはめんどくさい。
(あ、みーちゃんのさっきの魔法の調合の応用で作ってもらえないかな。まぁ探索で柑橘類が見つかれば、気が向いたら作っておこう。)
柑橘系から作るのが一番楽なので。
今回は材料が活性草だし、純粋に単なる傷薬として作る事にする。
まずは、大きい方のお鍋に水を入れ浮遊させ、下から魔法の火で先程と同じ様に温め沸騰するのを待つ。しばらく待つと沸騰したので火を弱くしておく。その間にどうやらオイルは落ち切ったようだ。ひとまずそれを四分の三ほど小鍋に注ぎ入れ、更にその四分の一の分量の蜜蝋を投入する。
そうしたらそのオイルと蜜の入った小鍋を、沸かしたお湯の上に浮かべ湯煎にかける。ヘラはないので殺菌洗浄したスプーンでかき混ぜ溶かしていく。溶けきると、軟膏の硬さを確かめるため、スプーンでひと匙すくってそのままスプーンごと冷やそうとしたところで、冷凍庫が無いことに気がついた。仕方が無いので適当なお皿を取り出し、魔法で氷をゴロゴロとのせ、その上にスプーンを置き様子をみる。暫くして冷えた軟膏を触ってみると、やや硬い気がする。傷に塗るのに硬い軟膏は不適確だろう。もっとゆるくするために残りのオイルを全て小鍋に投入し温め直した。火を消し、小鍋以外を片付けると、先程の妹と同じ様に、保存容器が無いことに気がついてしまった。
何も学んでいない自分に少しショックを受けながら、キッチンへ何か丁度いい代用品が無いか探しにいく。
キッチンをゴソゴソしていると、幾つかある食器棚の中の一つにガラス製の小さなシュガーポットを幾つか発見した。こんなものまでつくられているとは、設計図さまさまである。中身は入っていないのでこれ幸いと洗浄し、一先ずこれに保存する事にする。
急いで作業部屋に戻り、シュガーポットに注ぐと、丁度ポット二つ分になった。蓋はあるものの、ガラス製だしのせるだけの蓋なので、軟膏とはいえ心許ない。また作るなら、容器を先に用意してからにしようと心に誓った。
(ふう、これで一先ず終わりかな。さて、どんなのが出来たのか、鑑定、鑑定。)
ミオの手作り傷薬(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)
どんな傷でも瞬時に治る軟膏。
(えっ?)
嫌な予感がして、本当は見たくはないが、確認しておかないと危険かもしれないので、嫌々、続きを出す。
ミオの手作り傷薬(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)
どんな傷でも瞬時に治る軟膏。
完全手作業により高濃度の魔力がふんだんに練り込まれている。含まれている魔力により、どれほど深い傷でも、軟膏が付着した部分は瞬時に再生する。
「・・・・・・。」
(・・・何これ。とんでも無いの出来ちゃった。塗り薬版エリクサーじゃね?てか、名前・・・やめてよ・・・。これ〇〇おばさんの〇〇パイ、みたいなノリで名付けてない?・・・このクオリティになっちゃったのは手作業のせいって事?みーちゃんみたいに魔法で作ったら普通のになるのかな。・・・こう言うのまじで求めてないんだけど。世に出せないじゃん・・・。まぁ、家族専用にして、使ってる所を他人にみられなければいいか・・・。)
(成功な筈なのに、このガッカリ感。なんだ、私、お金稼ぎたかったのか・・・?確かに一文なしだからなぁ。)
あまり考えていなかった不安を目の前に突きつけられた気がして、動揺してしまう。生活の目処は立てども、一抹の不安が残ってるのかもしれない。それとも、お金があればどうにでもなるとでも、心の底では思っていたのだろうか。
まぁでも確かに、金銭的な不安はある。その不安を解消するには、やはり売っても問題なさそうでそこそこ売れそうな商品を作るのが早いかもしれない。でもそうなると、実際に街に行って市場をリサーチしたいところだ。食糧の魔力増加問題もあるし、早めに街を探した方が良さそう。
そこで一旦思考を止め妹の様子を伺うと、丁度最後の瓶に投入しているところだった。
「ね、みーちゃん。ちょっとこの傷薬、鑑定して欲しいんだけど。効能を下げたいんだよね。この世界の塗り薬の性能がぶっ飛んでない限り、このままじゃとても売り物にならないんだよねー。はぁ。超高額で売れたとしても、私達の身の安全が危ぶまれるやつになっちゃってさ。」
「オッケー。」
妹は軽く返事をすると瓶に蓋をし、こちらにきて傷薬を見つめた。
「んはっ!ナニコレ。お姉ちゃん相変わらずだね。どれほど深い傷でも瞬時に再生だって!めちゃうける!」
「いや、笑い事じゃなくてさー。もー、笑いすぎ。・・・売り物にしたいから効能を落としたいんだよね。」
「ああ、言ってたね。うーん、これ作る時魔力循環しながら作ったでしょ。」
「うん、訓練のためだしね。そっちがメインだから。」
「これさ、魔力がふんだんに含まれ、とかなってるの、そのせいだと思うよ。あっちで作業しながらお姉ちゃんをチラ見した時、魔力がじゃぶじゃぶ注がれてたもん。それをとめて普通に作るだけで結構違うと思うよ。」
「まじで?でもそしたら訓練になんないじゃん・・・。」
「それなんだけど、体内魔力量が今減ってるから、今なら隠蔽膜作りやすいと思う。」
「いんぺいまく?」
「あ、勝手に自分で名前付けたの。魔力が洩れない様にする為に、皮膚の下に結界みたいに強めに魔力を閉じ込める膜を作って、その膜に隠蔽をかけるの。そしたら魔力量の隠蔽が成功したから。」
「膜かー、お姉ちゃんも試したんだけどね。ほら、あの魔力爆発の時。」
「うわ、あれ膜はってたのにあんなに感知したの!?ひえー。やっば。力こそ?」
「パワー!って言わすな!もう、笑いすぎ。脳筋じゃないもん!困ってんだからね、こっちは。」
「ごめんごめん。いや、だからさ、魔力が減った状態でなら隠蔽膜作れるならさ、魔力循環そんな急いで訓練しなくてもいいんじゃない?っていう話だよ。」
「ええ?そりゃ今はいいけど、満杯の時使えないなら困るじゃん。」
「うーん、そうだけど、普段から何かに魔力をこめられる様にしておけたら、一先ず問題無くない?魔石みたいな媒体とかに。定期的にこめるのか、常時少しずつ注ぎ続けるのかはまた考えどころだけど。」
「なるほどね。とりあえず隠蔽膜ちょっと試すから待ってて。」
「うん。」
目を閉じ、自分の魔力を意識する。すると、あんなに体の周り中にモヤモヤしていた魔力が消え、ほんの少し洩れている程度になっていた。これならいけそうだと、体の内側に魔力が洩れないようにかなり分厚く膜をつくった。
「お、洩れてる魔力が完全に無くなったね。ただ、膜自体が高濃度の魔力だからやっぱ強いのは分かる。」
見ていた妹から直ぐに伝えてきた。失敗かと思ったが、洩れてる魔力を閉じる事自体には、外から見ても成功しているようだ。あとはこの膜に隠蔽をかけるのだったか。完全に隠す事なら出来るのは感覚で分かるが、弱い個体に見せかけるのはどうやったのだろうか?
「隠蔽ってどんな感じでしたの?」
「膜の内側は隠蔽で完全に隠して、膜の外側に見せかけたいごく少量の魔力を這わせる感じ?意味わかる?」
「オッケ、分かった。」
まず膜に隠蔽をかけ、その時点では魔力無しに見える状態にする。そのあと、丹田のところにほんの小さな穴をあけ、そこから体表に少しだけ魔力を纏わせた。
「どう?」
妹に確認してもらおうと顔を向けると、驚いた表情だった。
「めっちゃ弱い個体だねって感じ。逆に舐められそう。もうちょっと強くていいかも。」
「いや、みーちゃん。言うてあなたもそこそこ強力な個体な気がするんだよね。外の魔物の魔力量観察しながら調整した方がいいかも。今ここに常識人はいないんだぜ!」
「た、確かにそう言われると・・・!知的生物の標準が知りたいね。街に行くなら、遠くからある程度観察してから近づいた方が良さそうだね。」
その日はもう日が落ちて来ていたので、隠蔽膜は成功したものの、外への探索はまた明日、と言う事になった。
ベッドに入った後、眠る前にふと、妹の作った薬品を鑑定させてもらおうと思っていたのを思い出す。残念ながら隣を見ると既に夢の中のようだ。
眠るときは普通なのに朝になるとまた、おそらくあの体勢になっているんだろうなと微笑ましく思いながら、そのまま眠りについた。




