7.かんなとの登校
あっという間に春休みが終わり、入学式を迎えた。今日から俺は、乙女ゲームの舞台。〆縄高校へ入学する。
「…楽しみだな。」
「うん。私も楽しみ。」
そう返事をしてきたのは、幼なじみのかんなだ。今は、彼女と共に登校中だ。春樹とも、登校したかったが彼は家が遠いため、電車通学だ。ちなみに俺たちは歩きだ。
「……高校こそは、自己紹介失敗すんなよ?」
「うっ、む、昔のことはもういいでしょう!?」
「いや、お前ならまたやらかしかねん。」
「ひどいっ!」
実はかんなは中学の自己紹介で盛大に噛んでしまうという、大き過ぎる失敗をしたのだ。まぁ、そのおかげで男性陣からは、天然で可愛いと人気になったのだが。かんなは性格も、良ければ容姿端麗でもある。モテないわけがない。正直春樹と付き合ったも普通に釣り合うだろう。
「はぁ。俺は何で、お前らの幼なじみ何だろうな。」
「え?急に何?」
「いや、ふと思ってさ。だって、春樹は性格がよくて、スポーツも万能。勉強は心許ないが、決定打は俳優にも負けないイケメンさ。おまけに男女共に優しいときた。はっきり言ってほぼ完璧だ。」
「いや、確かに春樹くんはカッコいいけど…。」
「そんでもって、お前は超美人でかわいいだろ?性格も優しくて、裏表が全くない。声も綺麗でスタイルもいい。お前を前にして惚れない男の方が、少数派なんじゃないかと思うほどに、可愛いからな。」
「………。」
「……それに比べて俺ときたら……。ん?かんな?」
急に下を向いて黙り込んでしまったかんなを見る。
「おーい、椎名さんや。」
返事がない。どうしたんだ?
「かんなちゃーん?」
「………。」
仕方ない。
「テイっ。」
「あだっ!」
俺は、かんなにチョップをお見舞いした。
「何すんのよ!」
「お、お帰りかんな。」
「お帰りじゃなくて!何でチョップしたの!?」
「だって、お前反応なかったし。」
「そ、それはあんたが変なこと口走るからでしょ!?」
「は?俺は正直に思っている事を言っただけだろ?別に変な事を言った覚えは無いんだが。」
「ッ……。ああ!もういい!」
プイッとそっぽを向いてしまうかんな。何か気に触る事を言ってしまったのだろうか?
「その、ごめん。」
理由はわからないが謝っておく。
「べ、別に怒ってないわよ…。」
いや、絶対怒っていたと思うんだけど。
「はぁ。あのみなとくん大好きっ!って追いかけてくれたかんなはもういないのか…。」
「なっ!」
かんなの顔がみるみる内に、赤く染まっていく。あ、また怒らせちゃった。
「グフゥッ!」
案の定、俺は脇腹に手刀を入れられてしまった。