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4.春
(この世界は乙女ゲームの世界だ。)
俺が、そう確信を持てた理由は髪飾りを貰った経緯が、前世で散々妹に聞かされた、“春”の攻略対象の過去の話と完全に一致したからだ。名前に春が入っていて、グッズを身につけて、過去話まで、一致しているなどという偶然があるわけが無い。しかも、「お母さんの友達」から、もらったというかなりイレギュラーな事が一致している。
(さて、知りたい事は知れた。これからどうしようかな…。)
「あの…。みなとくん…。」
俺がまた黙り込んでいると、心配になったのかそう声をかけてきた。
「ああ、ごめんね。へぇ〜!その髪飾り、春樹くんのお母さんのお友達に貰ったんだ〜。いいな〜!」
「……へへへ。そうでしょ?」
いや、可愛いなコイツ。しかし、突然ハッとして、顔を伏せてしまった春樹くん。
「?どうした?」
何か不快にさせてしまったか?そう心配したのだが、彼から発された言葉は全くの予想外のものだった。
「……その。僕と友達になって!」