33.ヒロインと下校
俺は保健室に入る。
「ありがとう。このタオル洗って返すわね。」
「おう、ありがと。んじゃ帰ろうぜ。」
「そうね。」
「歩けるか?」
「もう大丈夫よ。」
そう、簡潔に会話をすませ。カバンを持ち、一度職員室に鍵を返しに行く。
「失礼しました。」
ガラガラと職員室の扉を閉める。
「…今日は迷惑かけたわね。」
そう彼女が言った。
「別にいいよ、気にしないで。」
それからはお互い無言で校門まで歩いた。
「私はこっちだけど、桐賀は?」
そう声をかけてきたので、俺は答えた。
「俺も一緒だ。途中まで一緒に帰ってもいいか?独りだと寂しいから。」
そういうと彼女は少し考えてから言葉を発する。
「そうね、分かった。貴方には借りがあるしね。」
「ありがと。」
そうして、隣同士で帰路につく。しかし、お互い無言で。
(き、気まずい…。まぁ、色々あったからなぁ。)
俺が桜凪を抱きとめたり、看病したりと、ラブコメの真ん中に放り出された気分だった。
(俺は、モブだ…。そこの意識をしっかり持たないと。)
-トゥルン
そう考えていると、2人の静寂を打ち破ったのは、俺のスマホの通知音だった。俺はスマホを取り出して確認する。
「げっ。」
その内容は、先ほど連絡していたかんなからの返信だった。して、その内容が…
『説教』
この二文字だった。
俺がはぁ、とため息を着くと桜凪が会話を振ろうとしてくれたのか、話しかけてきた。
「どうしたの?」
「あぁ、いやかんな…幼馴染からラインが来て、その内容がな…、億劫だ。」
「幼馴染…。」
すると桜凪は顎に手あて何か考える素振りをする。
「幼馴染って、私の席の前の女の子のこと?」
「ああ。」
俺は、そう相槌をうつ。そして、また少し考えて桜凪は質問してきた。
「篠原春樹くんとも、もしかして幼馴染だったりする?」
「ん?ああそうだが。」
何でそんな質問をするんだろう?
(あ、もしかして春樹を好きなのかもしれん!)
もう好きになったのか。流石春樹、天然女たらしは伊達じゃないってか。
「ねぇ、一つ質問してもいい?」
「ん?……なんだ?」
俺は、今までとは少し態度を変えた。何故なら、街灯に照らされた彼女の表情は真面目な顔そのものだったからだ。適当に流していい質問ではないと感じた。
俺は息を呑む。
「ーあなた、“四季恋”って知ってる?」
……………シキコイ?
何だそれ?コイ?コイって魚の?それとも恋愛の恋?シキって何だ?指揮?………わからん。
「……シキコイ、シキコイ、シキコイ………?ニシキゴイ?」
そして、俺が出た答えは、
「もしかして、“錦鯉”の仲間か?」
そう答えて彼女を見る。しかし、彼女は何故か阿呆を見るような目で俺を見てくる。
(あれぇー。違ったかぁ。)
じゃぁ、何なんだろうなぁと考えていると彼女が言う。
「ふぅ、そ。知らないならいいわ。」
「そ、そうか…?」
それからは、また無言が続いた。しかし、彼女の方はなにやら真剣に考えている様子だった。
────────────
「私、ここ曲がったらもう家そこだけど?まだ、着いてくるの?」
歩いて20分ほど経過した時、桜凪が言った。
ちょっとギクッとして俺は答える。
「ああ、いや俺はこのまま真っ直ぐなんだ。」
「ふぅん、そうなんだ。」
そう言って彼女は、また少し考え込んだ。
ふぅ、と俺は小さく安堵のため息をつく。
「じゃあ、ここで解散しましょう。」
「ん?ああそうだな。」
しかし、しばらく立ち止まる。このまま別れると思ったのだが、まだ彼女は何か言いたそうにしている。
「ん?どうした?」
「…。」
そして、彼女は俺の顔を見つめたまま呟く。
「やっぱり、似てる…。」
「え?」
「!?…ううんごめんなさい、何でもないの!それじゃ、今日はありがとう!」
「お、おう…。」
そう慌てて、彼女は走って行った。
「あいつ…、あんな熱あったのに、嘘みたいだな。」
とんでもない回復力である。それにしても、
「似てるって、何にだ…。」
俺は、そう呟いて元来た道を歩いていくのだった。
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