20.桜凪の様子がおかしい
櫛田くんとの一件を終えて、俺たちは一時間目の授業を受けていた。
(いやぁ、まさか攻略対象とこの短期間で会話するとは思わなかったなぁ。しかも、二人。)
そして、ふと思った。
(あれ?俺、乙女ゲームのイベントとかに干渉してないよね?)
いやいや、まさかそんな!ありえないでしょう!これは偶然!ってか、干渉してたとしても、邪魔にはならないだろう!……ならないはず、だ。
(ちょ、ちょっと不安になってきた。)
ま、まぁ俺は男だし桜凪とのイベントを横取り!なんて事にはならないだろう。
(そういえば、桜凪学年一位だったな。)
ふと、横の桜凪に目を見やる。
(ん?あれ?)
俺は、桜凪の様子がおかしい事に気づいた。いつもなら、授業に真剣に取り組んでいるのだが、今日は目に喝が入ってないように見えた。
「お、おい大丈夫か桜凪?」
「え?」
俺は心配になって彼女に声をかける。そして、こちらに振り向いた桜凪の顔を見て、俺は焦った。
(!?コイツ、めちゃくちゃ顔が赤いぞ!?)
「お、おい!桜凪、お前めちゃくちゃ顔赤いぞ!?熱あるんじゃ!?」
「え?いえ、大丈夫よ、別に、なんとも、無いわ。」
「いや、明らかに息遣い荒くなってるし、ちょっとフラフラしてるぞ。」
「な、なんとも、無いから、本当に、気にしないで。」
「ほ、保健室行くか?」
「い、いいわよ、これ以上、あなたに、借りを、作るわけには、いかない…。」
(ああ、もうコイツは!)
「先生!」
「ん?どうした桐賀?」
「桜凪さんが体調悪そうなので、保健室へ行かせてあげて下さい!」
「ちょ、ちょっと!」
隣で桜凪が、不満そうな顔をするが気付かないフリをする。
「む?桜凪、体調悪いなら保健室へ行きなさい。」
「し、しかし授業が…。」
「体調が悪いことは否定しないんだね?なら、大人しく保健室へ行きなさい。」
「…っ。わかりました。」
先生に言われてやっと、行く気になったようだ。
「先生に付き添い頼むか?」
「いいわよ、そこまで、してもらわなくても。一人で、いけるわ。」
いや、今にも倒れそうなんだが…。本当に大丈夫か?
「すいません、先生、保健室に、行ってきま…きゃっ!!」
桜凪の足が絡れ、桜凪は倒れそうになる。
「ちょ、危な!!」
それを阻止すべく、俺は素早く彼女のそばへ行き、彼女を抱き止める。
「な、なにが大丈夫だ。倒れるくらいなら最初から無理すんなよ。」
「あ、あう、ご、ごめんなさい。」
「しっかりしてくれよ?」
ともあれ、倒れたのが俺のそばで良かった。やっぱり付き添いを先生に頼んだ方が良いだろう。
「先生、桜凪の付き添いお願いできますか?」
俺が行くわけにも行かないので、先生にお願いする。
「………。」
ん?何だその間は。
「いや、お前が連れてってやれ。」
「は?」
え、いや。俺が連れてけって?何で?
「いや、構わないですけど、授業抜けて良いんですか?」
「ああ、今回だけ特別だぞ?」
「な、何の特別ですか…。」
「それに、彼女も私よりお前の方がいいだろう。」
先生がニヤニヤしながらそんな事を言う。
「そんな事ないと思いますが…。」
俺は、桜凪の方へ目をやる。しかし、彼女はプイッと顔を背けてしまった。ほら、これ嫌われてんじゃ無い?
「おい、イチャイチャしてねぇで行くならさっさと行け。」
そこで、意外な人物から声が上がった。そう、夏の攻略対象の久瀬夏目だ。俺は少し驚いた。
「久瀬…、分かったよ…。ん?イチャイチャ?」
そこで、俺は自分の今の状況を見直し、ハッとした。
(やべっ!まだ桜凪に抱き止めたまんまだった!)
直ぐに彼女が倒れないように、彼女から離れる。
「わ、悪い!桜凪!」
「い、いや、別に。」
あああああああああああああああ!俺は何て恥ずかしい事を!!!!俺の体温まで上がってきたわ!!!羞恥心で!!!
「はぁ、だからさっさと行ってこい。」
「は!はいぃ!」
久瀬にそう言われて、俺は桜凪を肩で支えながら教室を後にした。………教室を出る時に感じた背後からの射るような視線は気のせいだと信じたい。




