19.秋良くんはとても良い子
「あの?」
俺はずっと考え込んでいたので、返事を返すのを忘れてしまっていた。
「あぁ、悪い。少し考え事をしてた。で、君はもしかして櫛田秋良くん?」
「あ、ああその通りだよ。僕は櫛田秋良、よろしく。でも、何処で僕の名前を知ったの?」
「さっき、そこの子が櫛田くんを秋良さんと呼んでたからね。それと、さっき順位表見てたら、同じ名前の人がいたからもしかしたらと。」
「成る程ね。」
「その子が俺に突っかかって来たのは、もしかして順位が関係してる?」
「多分ね。僕より順位が高い人がいるのが気に入らなかったんだろう。」
「それだけで、俺に突っかかって来たのか…。何か、凄い子だね。」
「ああ、よく言われるよ。いい子何だけどねぇ。」
彼は呆れ顔で苦笑した。
「ね、ねぇちょっと。何、何事もなかったかの様に自然に会話してんのよ?こっちは、溱が馬鹿にされたんだからね!」
急にかんなが横から入ってきた。くそぅ、平和的に解決しようと思ったのに…。
「それについては、本当にすまないと思っている。この通りだ。」
先程と同じように俺たちに深々と頭を下げた。
「ちょ、秋良さん!」
「お前も早く謝れ。今回は明らかにこちら側が悪い。」
「くっ…。」
すると彼も納得はいっていないのか、渋々頭を下げた。いや、この注目の中でそれは勘弁してほしい!しかも二度も!
「い、いいよいいよそんなに気にしなくて!かんなももう良いだろ?俺のために怒ってくれたのは嬉しかったから。な?」
「う…。分かったわよ…。」
かんなも渋々納得はしてくれたようだ。
「ありがとう。所で君は桐賀溱くんでいいかな?」
「ああ、そうだが…。何故俺の事を知ってる…、って聞くのはやぼだったか。」
「うん、そうだね。さっきの君の理由と対して変わらないからね。」
クスッと櫛田は笑った。
(いや、流石攻略対象…。絵になるなぁ。しかし、結構俺たち目立ってるなぁ。早く帰りたい…。)
「それじゃ、もういいか?結構俺たち目立ってるし、早くこの空気から立ち去りたいんだが?」
「あ、まだちょっと待って。」
「ん?まだ何かあるのか?」
何だろ?彼の事だから、変なことでは無いと思うが。
「君には、負けないよ。」
「ん?何のこと………、ああ、そういう事か。」
俺は、彼が順位表に指を指しているのを見て、その言葉の意味を理解した。
「ああ、俺も負けないよ。それだけか?」
「うん、今日は時間を取らせてしまって本当にすまなかった。また、会う時は何か詫びをさせてくれないか?」
「別に気にしなくていいが…。まあ、その時は何か考えとくわ。」
「うん。そうしてくれ。」
そう言い残して、彼は啓斗を連れて去っていった。いやぁ、櫛田くんいい子だったなぁ。久瀬とは大違いだ。
「あれ、何か俺空気じゃなかった??」
春樹が、訳の分からない事を言っていたが、俺は無視をして、三人で教室に戻った。
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「嘘でしょ…。秋良との最重要イベントが…。」
私は、先程の出来事に動揺を隠せないでいた。
(…また、あのモブにイベント横取りされたぁ!!!)
私は心の中で精一杯叫んだのだった。




