16.律儀な桜凪さん
かんなの機嫌を直して翌日。俺たちは二日目のテストを受けていた。俺は、ふと隣の住人を見た。
(お、今日は忘れてないな。)
隣の住人こと桜凪が消しゴムを持ってきているのを確認して、テストに取り掛かる。今日は問題無さそうだな。
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テストを終えた放課後、今日は春樹と家でゲームをする日だ。さっさと帰りの支度を済ませて教室を出ようとする。
「待って!」
俺はそう呼び止められた。この声の主は桜凪だ。
(……今日は消しゴム貸してないよな?何の様だ?)
俺は疑問に思いながら返事をする。
「えっと、どうしたんだ?桜凪。」
「ついてきて。」
「え?ちょっ、何処に?」
「いいから。」
「え?お、おい!」
俺は桜凪に手を引っ張られ、連れてかれた。
(俺カツアゲでもされんのか?)
いや、そんな事ヒロインがするか?無いよな〜。
そんな呑気な事を考えていた。すると、桜凪の足が止まった。連れてこられたのは自販機の前だ。
「…えっと?で、何か用なのか?」
「……どれ飲みたい?」
「え?」
突然、何を飲みたいか聞かれた。奢ってくれるのだろうか?いや、しかし何故と言う疑問が残る。
「奢ってくれるのか?」
「うん。」
「えっと、何で?」
「昨日、消しゴム借りたでしょ?そのお礼。」
(ああ、成る程そういうことか。)
「別に気にしなくていいのに。」
「いいから、選んで。」
「ほんとにいいのか?」
「いいのいいの。」
ここまで言われてしまえば断れないだろう。であるならば、お言葉に甘えさせて頂こう。
「じゃあ、いちごみるくで。」
「いちごみるくね。はい。」
「サンキュ。お前、結構律儀なんだな。」
俺は桜凪から受け取ったいちごみるくを早速飲み始める。
「ここで借りを返さないと、後々何処で利用されるか分かったもんじゃ無いしね…。」
桜凪が俺に聞こえない様な声で何か言っている。
「ん?何か言ったか?」
「な、何でもない!」
「そ、そうか。」
そういえば、こいつこんなキャラだったっけ?初めてあった時とは口調が違う様な…。まぁいいか。
そんな事を考えていると、背後から声をかけられた。
「おーい!溱〜!」
「ん?」
「先行くなら、予め言っといてくれよ。」
「ああ悪い、忘れてた。」
「お前なぁ…。」
声の主は俺のもう一人の幼なじみの春樹だ。そして、この乙女ゲームの攻略キャラの一人だ。
「ん?溱、誰だその子?ナンパか?」
「ねーよ。クラスメイトだ。」
「何でこんな所で二人きりだったんだ?」
「この前、消しゴム貸してあげたんだよ。そのお礼にジュース奢ってもらったの。」
「成る程、つまり浮気か。かんなちゃんに報告しよう。」
「どうしてそうなるんだ!?」
根本的に何もかも違う。浮気ではないし、まず俺はかんなと付き合っていない。かんなが好きなのはお前なん……。そう言えば違うんだっけか?いや、かんなの照れ隠しの可能性も…。
「まあいいや!早く帰ってゲームしようぜ!」
「はいはい。」
必殺技の太陽スマイルをかました春樹に向かって素っ気なく返す。
「だ、誰?」
すると、置いてきぼりにされていた桜凪がそんな事を言う。
「あ、悪りぃ、置いてきぼりにして。こいつは俺の幼なじみの篠原春樹だ。」
「ご紹介に預かりました、篠原春樹でーす!よろしくね子猫ちゃん♡」
「きしょい。」
「グフゥ!」
春樹に500の精神的ダメージ。
「悪い桜凪。こいつの言うことは気にしないでくれ……。どうした?」
桜凪が呆然と、俺たちを見つめている。どうしたんだ?
「おーい。桜凪〜!」
「っは!ご、ごめんなさい!え、えっと桜凪雪実です!よ、よろしくお願いします!」
なんとも大きな声で自己紹介を終えた桜凪。
「それじゃ。俺たちはこれから予定があるからまたな桜凪。ジュースサンキュな!」
そう言い残して、俺たちはその場を後にした。
(最近、ヒロインと話すことが多いような…。まぁいいか。)
そんな事を考えながら、俺たちは春樹の家へ向かうのだった。




