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13.モブのくせに…!〜桜凪side〜


 そして、入学式が終わって教室待機の時間、私はずっと隣の彼の事について考えていた。


 (どうして隣の席の人が夏目じゃないんだろ?)


 考えた結果、私は様々な可能性を考えついていた。一つ、私が転生してから、ゲームのヒロインとは別の行動を気付かず内に取ってしまっていて、シナリオが変わってしまったこと。ただ、この可能性は低いと思う。ゲームのヒロインに過去の回想はないし、高校に入る前に、攻略対象と会っていた記憶もない、もちろん隣の彼とも会った記憶がない。


 (となると、もう一つの説が濃厚かも…。)


 もう一つの説とは、彼も転生者であるということだ。その説が正しいのならば、色々と納得がいく。だが、これには証拠がない。


 (なら、彼を観察してみましょう。)


 何か手掛かりが見つかるかもしれない。そうして彼を観察していると、教室のドアがガララっと開いた。その音に反応して、ドアの方へ視線を向けると彼がいた。


 (あ、夏目だ!やばい、隣のモブの事ばっかり考えてたから、油断した!)


 そして、夏目がこちらへ向かって歩いてくる。そして、そのまま自分の席へ座った。その席とは、隣のモブの前の席だ。やはり、隣のモブが原因で席がずれていた様だ。


 (何にせよ、夏目が来た!えっと、まずば喧嘩を始めるんだった。よし!)


 私は意を決して、夏目に声をかけた。


 「「あの!」」


 「「え?」」


 誰かと声がハモった。その正体は直ぐにわかった。


 (あんのモブ男!)


 そう、今日私を散々悩ませていた原因の桐賀溱だ。またシナリオを壊すつもり!?


 「あ…、俺は後でいいよ…。お先にどうぞ…。」


 意外にも彼は私を先に譲ってくれた。


 「ど、どうもありがとう…。」


 私は何だか気まずくなってぎこちなくお礼を言う。感謝なんてしてないけど。


 (じゃなくて!今は夏目の事を考えなきゃ!)


 そうして私は夏目に声をかける。確か、ヒロインはこう言ったはず…。


 「始めまして!桜凪雪実といいます!よろしくね!朝遅かったけど、どうしてこんなに遅かったの?」


 「あ?お前には関係ないだろ?気安く話しかけんな。」


 こ、怖い。けどシナリオ通りだ。


 「確かに関係はないけど…。気になったから…。そのごめんね…?」


 「チッ」


 よし、次は彼が私に「調子乗んなよ。殺すぞ」と脅してくるはずだ。しかし、彼は隣の桐賀へと体の向きを変えた。


 「で?お前はなんの用だ?くだらないようだったら殺すぞ。」


 っと、話しかけていた。


 (ちょ、シナリオが変わったんですけど!)


 「いや、俺の前の席なんだから、名前くらい知っとこうと思って。」


 夏目と桐賀が何か話しているが、私はそれどころではない。


 (どどどど、ど、どうしよう!と、取り敢えずこっからどうしよう!シナリオ変わっちゃったじゃん!あのモブ、許さん!ええっと、シナリオは変わったけど、喧嘩すれば問題無いわよね!)


 でも、どうやってと考えてると。


 「あ?お前もそこのクソ女と似たような感じか?」


 喧嘩に繋げやすい言葉を彼が言った。


 (夏目ナイス!ありがとう〜!これで無事喧嘩出来る!)


 そうして、アドリブだが私は夏目に文句を言った。


 「ちょっとクソ女って何よ!」


 「あ?そのまんまの意味だ。」


 「は?何で私が初対面のあなたにクソ女呼ばわりされなくちゃいけないのよ!」


 「はぁ。これだから女は面倒くせぇ。」


 「何ですって!」

                      . .

 いい感じ、このまま突っかかれば、彼が私に興味を持つはず。しかし、また彼が邪魔をした。


 「あの。俺の前で喧嘩しないで下さい。やるなら他所でやって。」


 「あぁ?」


 すると、夏目は彼に向き直ってしまった。


 (おいこらモブーーーーーー!)


 「喧嘩なんざしてねぇよ。コイツがウゼェだけだ。一緒にすんな。そんで、テメェは何様だ?指図してくんな。殺すぞ。」


 そしてギロっとモブを睨んだ。


 あ、脅した。こ、これはまずい。本来で有れば、脅しに屈しないヒロインに夏目が興味を惹かれていくシナリオとなっている。しかし、今夏目はモブの彼を脅している。


 (ま、まあ、大丈夫でしょう!夏目の強面な顔で脅されて屈しないモブなんて居ないでしょ!)


 きっと、ビビって夏目の興味から外れる。そう思っていたのに。


 「別に何様でもないよ。俺は君の名前が知りたいだけだから。」


 「あ?」


 彼はそう言い返した。


 「え?何でそんな驚いたような顔するの?」


 「いや、…お前変わってんな。」


 ま、まずい。


 「え?いや、至って普通だと思うけど?」


 (やばいやばい!これ夏目、名前名乗っちゃうんじゃない!?)


 私は、冷や汗をかきまくっていた。夏目が名前を名乗るのは、興味がある相手だけだ。


 「…久瀬夏目くせなつめ


 あああああああああ!!!!!


 「え?」


 「俺の名前。」


 「え?ああ、名前ね。久瀬夏目ね………。」


 な、名乗っちゃった………。


 「じゃあ、久瀬。これからよろしくな。」


 「……お前とよろしくするつもりはねぇよ。」


 「ハハ、そうかい。何かあれば言ってくれ。」

 

 「…………。」


 「何だ?」


 「何でもねぇよ。」


 モブとの会話が終わったのか夏目は前へ向き直った。


 (終わった……。夏目が私じゃなくて、モブに興味を持っちゃった……。)


 くそ!全部モブのせいだ!私はキッとモブを睨んで呟いた。


 「モブのくせに…!」


 


 

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