勇者と魔王に似合わない口調付けてみた
常に暗雲が空を包み、波が荒れ狂う大地。黒々とした岩が地表を覆い、紫色の炎が間欠泉かのように噴き出す様はさながら地獄のようであった。
ここは封魔大陸。魔物が人を害する世界、その魔物の王にして神に叛逆を為した愚者──魔王が居る大陸であった。
魔王に蹂躙される人類だったが希望が訪れた。勇敢なる戦士、伝説の勇者が現れたのだ。
そして物語は終盤に差し掛かり、人類の希望たる勇者と悪逆非道の魔王が対峙していた。
「…………」
「…………」
両者共に睨み合う時間が続くが魔王が耐え切れなかったのか、口を開く。
「はわわぁ……勇者よ、もう分かっているのだろう? 吾輩とお前は同志だと」
滑稽。実に滑稽なセリフを吐く魔王。見た目が褐色肌の美人なのでギャップが酷い。
「あぁ、もちろんだ……ニャン」
今度は勇者である。クールビューティーなキリッとした軍服美人で獣人ではないのに「にゃん」は属性過多すぎる。
「はわわぁ……我らはあの邪智暴虐なる神の被害者だ」
「うむ……だニャン」
「はわわぁ……このようなふざけた口調の呪いをかけたアイツを吾輩は赦しはしない。勇者、お前はどうだアイツを殺したくはないか?」
「私も、奴の所為で酷い目にあったから協力……するニャ」
そうこの二人、クソみたいな神の被害者だったのである。「おっ、このゲームおもろ。ウチにも勇者と魔王作ってやるぜwwww普通だとオモロくないから呪いかけちゃおwwwwこの見た目でこの口調とかマジ草なんだけどwwww」などというくだらない理由で彼らは作られた。
また無辜たる民も今まで居なかったはずの魔物。神が「魔王がいるなら魔物も必要だよねwwwwwやっべ、人めっちゃ死ぬじゃんwwww人がゴミみてぇwwwww」と作った化け物に殺されまくった被害者であった。
「はわわっ……この口調で吾輩は魔族の中であざとい地雷女だとか誤解され、恋人はおろか友人すら居た試しが無い。おかげで婚期なんてないのだよ」
魔王は嘆く。この見た目で生まれたんだからイケメン侍らせたかったと。
「私、は『無口無表情のクール系軍服美人で語尾ニャンとか属性盛り過ぎだし、あざとすぎ』って言われた……ニャン……私、だってなりたくてなったわけじゃ、ないニャン」
勇者は泣く。恋人がアナタのその変な口調に惚れたとか言われてもしらねぇよと。
そして二人は、本来ならば敵同士だった勇者と魔王は硬い絆に結ばれた同志となった。
後に解放軍を引き連れて天界に攻め込んだがその結果はまだ……分からない。