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クロノスゲート  作者: 無音
5/9

終わりにはきっと始まりがある

まだ人間が存在しない幾千年前、神々は争っていた。争いの終止符を打つ結果、神は世界を幾つかに分断させた。その境目こそが結界の誕生であった。

神は消滅し、後に人間が誕生したわけであった。しかし、限りある土地を奪い合うことで人類は争いに長い年月を費し、遂には結界の中でも更に『国』というもので土地を区切った。


終戦後、カタヤ国に住む高校生シューラは穏やかな日常を送っていた…

「そ、それじゃあ耳貸して。他の奴に聞かれたくないから…」


「おーい、シューラ。プレフ先生が呼んでるぞー」


ビクッ!


「お、おお…。今行く」


「あ……」




ほっこりと眉を顰めるクレハに、もう一度彼女の耳に口を近づけた。


「……警察だよ」


_____

__________

_______________




「おいシューラ!! 下がれ!!!」


他の官たちは銃撃による回避のため物陰に潜んでいたが、オレは防弾チョッキ1つで犯人の前に立った。


「う、動くな!! こ、これが見えないのか!!?」


「おめぇ…、拳銃なんて滅多に所持できない代物なのにどうやって手に入れた!」


「おい…!言ってるだろ!! 動くなって!!」


「なんで放火した…? 何の使命があってここにいる人たちを殺せた! 答えろ!!!」


「か、金だよ…金…!、、、金程度で悪いか…? 金が動機で悪いか…!? お前みたいなガキに金の価値がわからないだろうなぁ!!?」


「そんなガキがこんなにも命懸けに警察官やってんだ。 金の価値がわからないわけないだろ。ふざけてんのか?」


「とにかく黙れ…! 本当に撃つぞ!? 頭食らったらもうおしまいだぞ!?!?」


「聞けクソ野郎! 警察官であるオレを撃ち殺したらどうなると思う? 懲役刑で済むと思うか? 終身刑で済むと思うか? ちげーよ!死刑だよ! おめぇ足撃たれてんのにまだ続ける気か?もうテメェは逃げれねーよ。わかってんだろ」


「ク、クソォォォ!!」


「銃離して手上げな」


「……」



「総員取り掛かれ!!!」




「お勤めご苦労」


「その一言だけ…? はぁ、、、マジで撃たれるかと思いましたよ…」


「しかし金目当ての放火罪および殺人罪…。滅多に見ないレアなケースだ。もしかすれば、裏があるかもしれない」





この事件はその日の夜にテレビで報道された。

最近テレビには敏感になっている。理由は言うまでもなくあのイスタリア兵士。信じなければいいだけの話だけど…。

犯人の目の前で踏みとどまれたのはきっと、自分の意思が変わったから。以前なら絶対にあんな無茶やらなかった。単純により一層バカになったんだ。


そしてその4日後、約1か月の時を経て学校が再開した。_____けど…



「私は、お父さんの仕事の都合で転校することになりました」


「「ぇええ!!!!」」


「今日は皆にお別れを言いに来ました!」






「クレハ!!」


「シューラくん…! ……急なことでビックリした?」


「ホントに急だよ…。行っちまうなら前々から言ってくれたらいいのに」


「ちょっとサプライズをしたくてね」


「悲しいサプライズだな。オレにとって___いや、皆にとってもか」


「ウソウソ、冗談。真面目な話、お父さんの会社で放火事件があって、転勤せざるを得ないんだって。突然の話でね、事前に皆に伝える時間がなかったんだ」


「そ、そうなんだぁ…」


これって、多分………そうだよな?


「でも嬉しいな…、悲しんでもらえるなんて…」


「2年連続で同じクラスだったから、明日から居なくなるって考えると何だか不思議な感覚だな」


「うん、そうだね…。もっとこの学校で過ごしたかった。でもそんなワガママ言ってられないから、こうやってシューラくんと話すのも最後になるね」


「もう…行っちまうのか…?」


「うん…。もう親が校門前まで迎えに来ているの。皆とはもうここでお別れだね」


「あの、クレハ___」


「クレハさん!!!」


大勢がクレハに押し掛けてきたので、これ以上話す機会を失った。




十分に時間が経ち、クレハと周りのギャラリーたちが正門に向かって流れていった。その姿をオレは教室の窓から眺めた。


「凄い人気だよなクレハさん」


隣に立ったフランツェルが、オレと同じように窓から眺めながらそう言った。


「どうせならもっと話したかったな。シューラくらいに」


「オレだって大して___。今だってそうだ。本当に深い関係なら、あの場にいるはずだった」


「きっと後悔するんだろうな。一途ではないけど、…まあ付き合いたいなぁくらいには思う。でも今から顔合わせする勇気なんか出るわけもなく(笑)」



後悔……


「!」



「クレハさん!! 僕と付き合ってください!!!」


集団の中にまぎれた1人が駆け出した。


「流石サッカー部のイケメン! 相当な自信だよ!(笑)」


そういえばコイツ、前にクレハと喋ってた他クラスの_____


「ちょっと待ったぁ!! 俺も勝負に入っていいかぁ?」

「野球部のキャプテンもキタァーー!!」


「待って俺も!」

「俺も!!」



いつの間にかオレは不安な表情で、窓から顔を突き出していた。


……自分は関係ないと心に決めているはずなのに、モヤモヤがどうしても治まらない。


「一気に4人!! 他はいねーかぁ!?」


「「アイツら相手じゃ…」」


群衆に立つ男たちは生きたそうな雰囲気を漂わすも、冷静に引け目を見せる。



「何か面白くなってきたな。誰が選ばれると思う?」


隣でニュクスが問う。オレの気なんか知らないで。


「オレは……」


クレハが口を開ける。


「私は……」


ゴクリ…


「ゴメンね、誰とも付き合えない(笑)」


「「えぇーーーー」」


真剣な空気が苦手だったのか、クレハは透かした様な気持ちで振舞った。


「それじゃあ、行くね。皆今まで本当にありがとう!!!」


「バイバーーイ!!」

「またねーー!」




…!


「あっ…」


最後に目が合った気がする、この遠い距離で。それと同時に虚しさが甦った。

___だから背を向けた。




何ホッとしてんだよ


嫌な情景だ…! 自分だけ勝手に夢中になって…苦しいだけだろ!!




.

.


ブゥゥゥーーンン!


「クレハがモテモテだなんて、お父さん知らなかったよ。付き合えばよかったのに」


「もう滅多に会えないんだよ。本当に好きなら、別れのタイミングは止めて欲しいかな」


「やけに余裕そうなのが羨ましいよ。お父さんなんて大分苦労して(泣)」


「例え学校に残れても、あの人たちじゃ選ばないよ。____だって私、他に好きな人いるから」





__



時というのは酷なもので、ピーク時にあった緊迫や喜び・悲しみは過ぎてしまうと薄れる。だからこそ離れない虚無感はより一層滲み出る。



「シューラ…、どうしたの?」


枕で顔を覆い隠すオレに、トワは気遣った。

泣いているわけじゃない。ただ、この態勢でいたい。



.

.


「そっか…、確かにそれは辛い…」


「……」



「ねぇ、外行かない?」


「え? いいけど…」



***


「こんな歩くと思わなかったぞ。丘なんか登って___」


「着いた!」


「あ、、、すげぇ…」


木々を乗り越えた先に広がる平原と共に、数多の天体が浮かぶ夜空が映った。


「どうしてもシューラとこの景色を眺めたかったの。一旦はこれで最後になるから」


「? どういう___」


「実は私ね、明日ここを出るんだ」


「え?」


「シューラには大切な人を失って、親友と絶交して、好きな人に会えなくなって、そうやって終わりを告げる寂しい出来事が続いたね。そして次は私がいなくなるわけだけど、シューラは寂しんでくれるかな?」


こんな連鎖的に事が動くと思わなかった。


「もう家、出ちゃうのか。そりゃあ寂しいよ。いきなり家に押し掛けたのが始まりだったけど、慣れてしまった以上急にいなくなると心が狭くなるな…」


「私だってまだ居たい!」


刺さる言葉にオレは頬を赤らめる。


「ねぇ、私ってちょっと素っ気なかった?」


「え?」


「ホントは最初からずっと嬉しかったって言えば、信じてくれる?」


「…」


____________

______


「ねえ、シューラ。魔法って知ってる?」


______

____________



「そう言えば初めて会った時___」


「知ってる? この星たちはね、何十年何百年かけても辿り着けないくらいに遠い場所に位置しているの。でもそんなにも離れた星を今私たちは見ることができている。私たちの立場もこの天体と似ていると思うんだ。遠いけど、キミという存在を知っていた。1つ違うのは、時間を掛けて辿り着けたこと」


「オレを知っていた…。 トワはなんでオレに会おうと?」


「それはね、___助けられた過去があったから」


「オレがトワを助けた? いつ?」


「ん~~? 200年以上前?」


「ここでおふざけかよ。クソつまんねぇぞ(笑)」


「ウソつき~!ニヤけてんじゃん! でも、それくらい長く感じたかな」


「そっか。覚えてなくてゴメンな」


「終わりにはきっと始まりがある、私はそう信じているよ。そしていつの日か、またシューラの元に帰ってくるんだ!」





トワは去った。


朝目覚めると手から魔法が出た。


全てはここから始まった。

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