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クロノスゲート  作者: 無音
3/9

こんな絶望があるって知らなかった

まだ人間が存在しない幾千年前、神々は争っていた。争いの終止符を打つ結果、神は世界を幾つかに分断させた。その境目こそが結界の誕生であった。

神は消滅し、後に人間が誕生したわけであった。しかし、限りある土地を奪い合うことで人類は争いに長い年月を費し、遂には結界の中でも更に『国』というもので土地を区切った。


終戦後、カタヤ国に住む高校生シューラは穏やかな日常を送っていた…

「始まったね、物語の歯車が。この世は物語だ。この世に悦があるからこそ生き続け、苦しみがあるからこそ死を覚悟する。だからこそ生命は美しく儚い。それを否定する思考とは如何なるものか。人生はつまらない? ならば至高の世界を切り開こう。第2話、こんな絶望があるって知らなかった」


*________*


一目惚れしたんだ。


「あの…、アグニさんですよね? 俺、同じクラスのゼキラです!い、1年間よろしくお願いします!!」


2人きりの廊下で。


「は、はい! よろしくお願いします!」



ただ彼女と触れ合いたかった。



「ゼキラくんは何か部活をしているの?」


「う、うん! 野球部だよ野球部! ほら、俺坊主だし結構野球少年感あるでしょ!?」


「確かにー! 凄く上手そう笑」


「そ、そんなことないよ! まあ、中学の時はエースとか言われて選抜にも選ばれてたなー笑笑」


「へー!すごーい!」



会話は弾むから、それだけでも彼女とは気が合うと思った。

「好き」って想いは特別で、何物にも変えられない。



「へいゼキラくんよ、アグニさんと上手くいってるようだねぇー」


「俺、決めた…」


「ん?」


「アグニさんに、告白する…!」




もう俺には勇気が湧いている…。 絶対に言う。言うったら言う!



「お前、確か前に告白するより2人きりになる約束の方が恥ずかしいって言ってたよな? チャンスがあるぜ。どうやらアグニさん、放課後よく1人で屋上に行ってるらしいぞ」


「マジで!!?」


「お、落ち着けよ! とにかく!そこが告白のチャンスだ。そんでフラれたとしても絶対に友達関係を続けろよ、いいな?」


「頑張れよゼキラ」


「何だよお前ら…! 照れるじゃねーかよ!」




本当に屋上に居るか確かめたくて下見をしたんだ。


扉をそっと、チラッと見るくらい小さく開けて、


そしたら…



「…!?」


アグニさんは男と喋っていた。



とても鮮明なあの笑顔は、俺に見せたことがあっただろうか。



「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!」


絶対に取られたくない





「俺、やっぱ告るの止めようと思う…」


うずくまってしまった。


「おいおい、何落ち込んでんだよ」


「直接聞いてはないけど、多分アグニさんカレシいる…あの男と会うために屋上通ってたんだ絶対…」


「じゃあ当たって砕けようぜ」


「は?」


「しゃーねーなぁ。恋愛マスターの俺から1つアドバイス、何事も経験だ!せっかくいい感じに進んでいたのに今いかねぇと今後もう誰にも告白できねぇぞ」


「やっぱそうなのか…?」


「そうだ。だから、そこに例の男が居ようが関係ねえ。思いっきり言え!結果はどうあれ良い経験になるから」



よくわかんない奴らだけど、こんなにも声援を受けている。こんなにも主人公気分になったのは初めてだ。もう本当に当たって砕けるしかないだろ。




「俺たち付いて行く必要あるか?」


「ゼキラの晴れ舞台だろ。いいじゃないか別に」


「いや、来なくて良かったぞ…」


俺の両側に友達が付いていた。


「んじゃこの辺で。この先はお前1人で行ってこい」


屋上へと繫がる廊下より少し離れた場所で友達がそう言った。


「後でちゃんと報告しろよ」


「おう、わかった。行ってくる」




息を整える。


心臓の鼓動がうるさい。


カップルって凄いんだなと改めて思った。だってこんなにも勇気が必要なんだろ?中学の時も付き合ってる人何人か見たことあるけど、あいつらよくこんな試練を乗り越えたな。やっぱスゲー…。

そして今日俺は、見ている側からする側になったってことか。



相手は俺の事全然考えてないだろうけど、俺にとっては運命の相手だった。他にも可愛い人がいた、会話が弾んで楽しい人もいた。けどそんな人を差し置いて、アグニさんに一途になっていた。


これが恋なんだと実感した。



フラれても後悔しない。この先の1年間仲が悪くなっても後悔しない。


だから、今、俺は、アグニさんに______






ドオォォォォォォォォン!!!!!!!





…!!



「アグニイィィィィィ!!!!」




もう一度扉を開けばそこは、無惨な爆発跡だった。



驚きを隠せない。


急いでオレは爆破で空いた穴に飛び降りた。





「アグニィィ!!!」



辺りを見渡すが、、




「クソっ! アグニ……アグニ…!!」


どこで倒れているのかわからない。とにかく必死になってガレキをどかす。



「クソ!! どこにいるんだよ!!!」

「ダ…ズ…ゲ…テ…」


…!!



アグニだけじゃない。その声は酷く、耳に研ぎ澄まされる。




「 」


見上げると物体が引き寄せてくる。

その光景に空白の時を刻む。



そして察した。



これは新たな始まりと同時に、終わりだということを。




ドオォォォォォォォォン!!!!!!!



バリバリバリ!!

ガン! ガン! ガン! ガガガッ…!!




「うっ! っっ…!」





「争いというのは、いつの時代においても醜いもんだな」


何者か達が、ライフルを持って現る。


「さあさあさあ! 駆除始めますか!」




こんな絶望があるって、知らなかった。





それは____軍人だ。ノイズの効いた戦闘機。空いた天井からロープを張って降りて来る。


「わざわざ高威力爆弾使う必要あった?」


「いくら消費しても俺たちには関係ないだろ。全部あっちの人が負担してくれるんだしさ」


「それに大事な威嚇行為でもある」



「何だよこれ……」



「おっ、若いの1つ発見〜。コイツ仕留めるから残りの9つは頼んだぞ」


一体…!


「何なんだよ!!!」





〈46〉

生徒の悲鳴、割れる窓。


それは、このオレが、この第6高校の破壊活動の実行犯。



「シューラ…どうして……痛いよ…」


そう言ったのは、知らない少女




ーーgwtd1mwmp6khbhzqlnc8og9mtdgjーー





「え?」


まただ…。また、変な考え事をしていた。


「これが何か分からないか?」


ハッとして俯いた目をまた正面へ上げる。


「痛み分けってヤツだよ。あえて関わりねぇガキを殺して、お前らのクソ国に恐怖を解らせに来た。後先考えずに突っ込んで一部の馬鹿のせいで同じカタヤ人のお前らが可哀想に思える。いや、同類の馬鹿か」


「何の話だ…!?」


「その反応___、流石カタヤといったところか(笑) メディアが事実を隠蔽しているなら相当笑える。それまでしてお国の鮮度を保ちたいってか。どうやら奴らの動機は仕返しらしい。これまでの全てに対しての仕返し」


「ちゃんと言ってくれよ!!! このままじゃ訳分かんねぇまま…、オレたち……!____」


「プレアデス」


「……!」


「カタヤ人による、凶悪犯罪テロ組織。その実態は自国のカタヤでさえも未だ消息を掴めず。そして奴らが遂に、我らイスタリアに手を出した。どうなったと思う?」


何も声が出ずに顔が硬直してしまう。


「200人死んだ。近年最大の民間人虐殺だ。イスタリア人は皆お前らカタヤ人を憎んでいる。国民総意でカタヤへの宣戦布告が挙がったが、総理は優しい方だ。戦争ではなく高校生を同数200殺す選択をした」


「そ、そんなことが……」


「無知って恐ろしいよな。訳の分からないまま民が殺され、その報復でやってきたことをお前は知らず、訳の分からないまま命を狙われる。まるで同じだ。無差別に、互いを殺し合う」


「お互いに…訳の分からないまま…」


「そして理解しただろう、これが示し。逆らえば更なる恐怖が待っている。本来カタヤ国なんぞとっくに支配されていた。ただ当時は『骨』が身構えたせいでむやみに手出しできなかった。今はあのバケモンも現れない。わかるか?もう簡単に植民地化できんだよ。逆らう以前の問題だ。思想の自由も、表現の自由も全部無くしてやるw」



お喋りだったその兵士は、オレに銃を構え始めた。


「くそっ!」


撃たれる前に思い切って窓から飛び降りようとしたが__、


「はーい、通さないよー」


その窓から他のイスタリア兵が待ち構えていた。


「何だもう終わったのか?」


「お前が遅すぎるだけだ。誰よりも早くに見つけた獲物だろ。いつまで掛かってんだ」


「暇だからベラベラと喋ってしまった。コイツら、どうやらテロ自体知らないらしい」


「さっさと終わらせようぜ」


挟み込まれた。

張り詰めた緊張と、疎外感。





いつしか抱かなくなった妄想だった。


どれだけ己を鍛え上げても、凶器を前にして人は抗えない。

それを覆す常識離れした力を望んで、信じようとした。


そんな幼稚な考えが、こんな状況の中で思い起こされる。



変えたいんだ____




バァァン!!!!



「え?」


窓側に張っていた兵士を、少女が銃で撃ち殺した。



「ふぅ…、間に合った」


「!!」


落ち着いた雰囲気で、オレの前に立った。



「いいよ、主人公になれなくても」


「え…?」


「私が守るから))」



この少女は…、



変な考え事の中にいた___



「君、コイツの何?恋人? にしても、よく勇気出してここに来たね。でも逃げた方がいいよ。今なら目を瞑ってあげる」


「これでわかるでしょ」



オレが、いや、誰しもが決して見たことのない妖術のようなものが、彼女に纏っていた。


「内部調査員か。なら尚更邪魔するなよ」


「邪魔? そっちらの方がよっぽど邪魔で害悪なんだけど」


話してる内容は理解できないが、初対面とは思えないほどの会話をしていた。



バンッ!!


ピュゥンンン!



「な…!?」


銃弾を弾き返したのを見て、驚きを隠せなかった。


「流石…、セコい異能力だ」


「アンタ最低ね…。一応上辺だけでも仲間だっていうのに。もう知らないから」


「そこのガキを狙ったんだよ。どけっ、この報復には国民の意志が背負ってんだ」


「じゃあ何、平等性を測るためなら罪の無い人まで殺していいわけ? アンタの国ではそう教わってきたの?」


「先に罪無き者の命を奪ったのはこの国だ!!」


「はぁ…。ホント、低脳vs低脳ね。そもそもやり返すことが正義だと言うなら、相当な腰抜けね」


「偉そうな口して。やっぱガキはガキだな! 本当は殺す数に限りあるが、2人まとめて殺してやるよ。後悔もできないままズタズタに」


「後悔できないのはアンタの方だよ」





彼女は異能力を駆使し、最後に銃でイスタリア兵を射殺した。




「ねえ、シューラ」


少女は名を呼んだ。



「魔法って知ってる?」

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