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見つけた、と思ったが

その頃のハーヴェイ。

 ハーヴェイは城を出る時、神官の加護が施された剣と鎧を身に着け、駿馬に乗り近衛騎士十数名を引き連れていた。

 しかし、旅立ちから数時間経ち。

 灰色のハイエナ――いや、ハイエナを装ったグールの群れに襲われて、ハーヴェイは必死に馬を走らせている。最初、近衛騎士達が反撃したのだが、剣で斬ってもグールは死なず、逆に返り討ちにあって喰われてしまったのだ。

 ……グールには鉄に弱い反面、一撃で仕留められず、もう一度斬りつけると傷が塞がり、復活してしまう厄介な性質がある。

 他国の者なら子供でも知っていて、とにかく逃げて振り切るか一撃で何としても必ず仕留めるのだが、ハーヴェイ達は知らない。今まで結界に守られ、そもそも魔物と接する機会がなかったからである。

 だから反撃され、近衛騎士を数人喰われてしまい――何故死なないのか、訳が解らないながらも必死に逃げることしか出来ない。


「何故……どうして、我が国に魔物が!?」

「お、おそらく結界が消えたからかと……」

「まだなのか!? あの後、マリーナ達に再度、結界を張るように父上が命じていただろう!?」

「知りませ……っ、と、とにかく逃げなくてはっ」


 我慢出来ずに叫ぶハーヴェイに近衛騎士達が返事をするが、訳が解らないのは近衛騎士達も同じだった。

 高位貴族の令息である彼らは、王族を守る剣であり盾だ。しかし、対敵として想定されていたのはあくまでも人である。

 その為、王族に怒鳴り返しそうになったが何とか堪え、近衛騎士はとにかく先に進もうとしたが、ハーヴェイはその言葉がまた癇に障った。


「逃げる前に、あの女を捕まえなければ!」

「そ、それはそうなのですが……」

「……あっ! 殿下、あれを!」


 そもそも、アガタを連れ戻さなければ王都に帰ることは出来ない。それ故、ハーヴェイが近衛騎士に言い返したところで別の近衛騎士が声を上げ、ある一点を指差した。

 その声に、ハーヴェイは顔を上げ――次いで、その青い瞳を大きく見開いた。

 彼らの視線の先で、王宮に現れた白い鳥もどきが飛び立つところだった。そしてその背には獣人の男と、出来損ないのあの女が乗っている。


「待てっ……どこに行く!?」


 ハーヴェイの制止の声は届かず、アガタ達はエアヘル国の外へと飛び去っていってしまった。それはつまり、ハーヴェイ達はグールのような魔物がいる国外に行かなくてはいけないということだ。


「待て、行くなっ……行くなって、おいっ!? くそっ、出来損ないの分際でっ!」


 馬の上から、必死に声を張り上げたが、見る間に鳥もどきは遠ざかり――口汚く罵っていたハーヴェイは、自分がアガタの張っていた結界のおかげでグールから逃げ切れたことに、気づくことはなかった。

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