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【完結】タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。  作者: 渡里あずま


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一難去ってまた一難

 メルが少年の姿になった時、ランは何気なく言った。


「あ、人の姿の時は『アガタ様』は無しな」

「無しは無しだ」

「いや、反論するなよ」


 けれど、メルが即却下したことでランは声を低めて目を据わらせた。アガタを優先するだけならともかく、ランの言うことを全く聞かないのでいい加減、腹に据えかねたようだ。

 どちらの言い分が正しいかと言えば、当然、ランである。それ故、アガタはこれを機会に様付けをやめて貰おうと声をかけた。


「メ、メル? 私からも、お願いしたいの。姉弟ってことにするから、様付けはちょっと……」

「そんな!? アガタ様は、アガタ様なんですよ!?」

「……えっと」


 しかし、アガタからの頼みでもメルとしては受け入れられないらしい。アガタを大切に想っている為と思うと、無理強いするのも申し訳ない。だが、姉妹設定でやはり様付けは――そんなアガタの躊躇も、メルのこだわりもランによって一蹴された。


「いや、お前。様付けするくせに、アガタ本人の言うことも聞けないのかよ」

「「っ!?」」

「……どうしても、アガタに様付けしたいんならよ?」


 途端に青ざめたメルに慌てていると、ランがやれやれと言うようにため息をついて言葉を続けた。



「門番さん、ありがとうございます……でも『僕』も『アガタ姉様』を守りますから!」

「お? 頼もしいな!」


 メルと門番との会話が違和感なく成立していることに、アガタは内心で滂沱の涙を流していた。


(良かった……ありがとう、ランさん。そして、ありがとう!)


 感謝するばかりのランが、メルにした提案というのはこうだった。


「どうしても、アガタに様付けをしたいんならよ? 『アガタ姉様』ならどうだ?」

「……ねえ、さま?」

「そう、アガタ姉様だ。姉弟設定なんだからな。あと、一人称は私じゃなく『僕』でどうだ? アガタの『しもべ』って意味だから、お前にピッタリだろう?」


 もっともらしく言っているが、確かに『姉様』と『僕』ならちょっと丁寧過ぎる気はするが、元々が敬語な美少年なメルなら成立しそうだ。そして、提案されたメルはと言うと。


「確かに……ああ、それなら良かろう」


 ランの言葉に、色々とくすぐられたらしい。金色の目を、キラキラと輝かせて頷く姿をアガタは可愛く、微笑ましく思った。

 そして門番と別れ、さて、今日の宿を探そうかとなった時――視界の隅で影が動いたのに、アガタは何気なく振り向いた。

 そして視線の先で荷物を抱え、座り込んでいる老婆を見て、アガタは慌てて駆け寄った。


「……大丈夫ですか!?」

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