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第84話 一応対峙しました。

 こんにちは、復讐者です。


 クロちゃんのお父さん殺しの主犯一部を見つけ、怒り心頭殺気ムンムン、されど殺しは否や。

 ひとまず周囲の邪魔な一般の方達にはアンデッドを(けしか)けてご退場願いました。そして自分にしては盛大に啖呵切ったお相手の蒼の勇者、ツムラはと言えば。


「復讐って⋯⋯竜のために復讐とか頭沸いてんじゃねぇのか」


 周囲にいきなり現れたアンデッドたちに多少なりとも焦りの色を見せている様子。それも本当に自然発生なのか自分が意図的に行なっているのか疑心暗鬼になっているようで、さっきまでのイキリ口調は何処行ったの? って感じです。


「えぇ、沸いてますよ。この竜は本来なら人に益をもたらす存在だったのに、それを分かりもせず小金稼ぎと宣い殺す屑をどうするかでグツグツとね」


 無意識に強く睨みつけていたのか、視線に気圧されるようにツムラを始め対峙する仲間たちが数歩下がる。アンタたち一応自分より格上でしょう? もう少し気概を見せなさいよ。


 するとクイっと袖を引かれ振り向けば、クレム始めみんなが苦笑いしています。そして自分を嗜めたのはエメラダでした。


「あのよぉ、アンデッド使うなら事前に言っとけよ、こっちもビビるから本気で」


「すみません。周りの豚共が目障りだったんで即興で出しちゃいました、これからは気をつけます」


「豚って⋯⋯完全にキレてんな。まぁいいや」


 どこか諦めた様子で溜息を吐くと、それ以上は何も言いませんでした。


 人影も殆ど見当たらなくなりましたし、アンデッドたちには山頂の入り口で誰も入れないよう見張りをしててもらいましょうか。そう念ずると、彼らはゾロゾロと足並み揃えて自分の思い通りに動いてくれました。


「で、どうしますか? さっさと引き下がるなら何もしません、でも⋯⋯その様子じゃやる気満々ですね」


 前に向き直れば、彼らは既に武器を構えて臨戦態勢でした。さて、とは言え相手は蒼の称号を持つ勇者。実力が未知数な以上警戒しすぎるに越したことはありません。


「なぁおい、提案なんだがよぉ」


 ツムラがそう言って、あの下卑た笑いを浮かべています。


「人数的にもちょうど良いし、一対一でやり合うってのはどうよ?」


「⋯⋯なぜそんな面倒なことをしなければ?」


「面倒もクソもねぇ、挑んできたのはテメェらだ。ならやり方はこっちで指定する。なんか問題あるか?」


 ⋯⋯まぁ確かに決闘を挑めば方法は相手に委ねるのが普通と言えば普通。しかし戦力の分散とか、どう考えても向こうにはデメリットしかないと思うんですが。


 自分はもう一度振り向いてみんなの意見を求めます。しかし誰も反論はないようで、問題ないと目だけで肯定されました。


「いえ、じゃあそうしましょう。マッチングは?」


「それもこっちで選ばせてもらうぜ」


 なんとまぁ我儘なこと。別に良いですけどね、後ろの三人はツムラに比べ格がグンと見劣りしますし大した脅威にもならないでしょう。


 お好きに、と言えば彼らは即動きだし各々相手をしたい者へと歩を進めます。


 クレムにはガタイの良い戦士系の男が。


 エメラダには鞭を携えた露出の多い女が。


 エルヴィンには長身で痩せぎすの斥候(スカウト)らしき男が。


 そして自分にはツムラが当てがわれ、何故かそれぞれ見えない距離までバラバラに散って勝負する流れになりました。


「自分が言うのも何ですが、パーティ戦じゃなくて良かったんですか。うちの仲間、けっこう強いですよ」


「あぁ、良いんだよ。俺のスキルは効果範囲が広い上、無差別に効果が出ちまうからな。流石に味方に掛けるのは気が引けるんだって」


 スキル、と聞いてピンと来ました。ツムラは転生者と名乗った。噂では彼らは常人が持ち得ない反則的な力(特殊スキル)を使えると耳にしたことがあります。


「それ、堂々と言っちゃっていいんですか。手の内晒すことになりますよ」


「別にぃ? これから確実に死ぬお前に何話したって、全く問題はねぇな」


 そう言って彼は右手を高く掲げました。途端、何か嫌な雰囲気が周囲を包み込みます。


「さてとぉ、どれどれ。お前のレベルを見てやるよ、翠の勇者様はどの程度の強さなのかなぁ?」


 腰のポシェットから取り出したのは、小さめのモノクル。それを目に嵌めると、ツムラはジッと此方を見据えてきました。

 ⋯⋯レベルってなんでしょう?


「おっほぉ? お前さん結構やるねぇ、蒼の中でも最上級並の強さじゃねぇか。こりゃ俺じゃあ勝てねぇなぁ」


 そう言いながら、口端を歪ませる三日月のような笑いはさらに深まります。

 あのモノクルは相手の強さを可視化するアイテムだったんでしょうか。しかし格上と判断した上で笑うのは何故か?


「じゃ、早速だが使わせてもらうぜ。あれだけ息巻いたのを後悔させてやるよ!」


 スッとモノクルをしまうと、たった一言呟く。


弱肉強食(レベルダウナー)


 その瞬間、自分の身体に異変が起こりました。全身から力が抜け、萎んでいくような感覚。


「なん、です、これ!?」


 何が起こっているのかわからず焦る自分を見て、ツムラがケタケタと引き攣ったように笑う。


「これが俺の転生者としてのチートスキル、レベルダウナー。どんな強敵でも強制的に身体能力を弱体化させる。お前は今、そこらの子供にも喧嘩で負けるくらいに弱ぇんだよ雑魚がぁっ!!」


 ツムラの言う通り抜けた力は膨大で、自力で立っているのもジットリと汗を掻くような状態です。

 これが⋯⋯転生者の力。勇者になる素質を持つと言われ、事実彼らの多くが勇者として活動していると聞きますが、それがこれほどのものとは。


「さて糞後輩くん、ちょっと上下関係ってものを教えてやるからよぉ」


 そしてツムラが剣を抜く。自分も同じく抜こうとしますが、力が入らずそれすら叶わない。


「武器も握れねぇのは悔しいか? 悔しいよなぁ! これからじっくり痛ぶってやっから、精々泣き喚いて無様に命乞いしてくれや!」


 引き攣った笑いが霧掛かってきた山頂で木霊する。その声音は羊か何かの鳴き声によく似ているなと、場違いにも思ってしまいました――――。

転生者という存在が果たしてどのようなものなのか。これはこの作品の根幹に関わってくるので明言は避けます。ちなみにツムラは名前の通り日本人ですが、海外国籍の転生者も勿論います。

レベルダウナーを受けたグレイくん、果たしてどう切り抜ける?


次回は、各々の戦いです。


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