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第79話 一応修羅場を見ました。

 こんにちは、勇者です。


 命懸けで戦って戻ってきたかと思ったら、老獪シスターにお財布の中身を搾り取られそうです⋯⋯。いい感じに貯蓄もあったので装備を一新しようと思ったのに!


 玉座の間から集めてきた武器や防具を並べて、思わずため息を吐きます。


「うわ、なんだこりゃ? せっかくパp⋯⋯父上がくれた鎧が真っ二つじゃねぇかよ」


 壊れた鎧を見て、エメラダが顔をしかめました。持ち上げて斜めから見たりしながら、どうやって切ったんだと不思議そうにしています。


「それ、自分ごと縦に両断されたんですよ、凄いですよね」


 そう言うと、彼女はサッと血の気が引いたように自分を見てきました。⋯⋯その可哀想なものを見る目はやめて!!


「戦った銀騎士の剣は特別だったのか、双剣のほうもこの通りです。せっかく気に入ってたのになぁ⋯⋯これはさすがに修復は無理ですね」


「うわぁ、あの角の短剣ですか。こんな業物をボロボロにするなんてどんな剣だったんでしょうね?」


 今度はクレムが覗き込んできます。砕けた細かい破片も拾ってきていたので、それを元の位置にしようとハイエルくんと一緒にパズルを始めました。うむ、兄弟愛は微笑ましい。


「おや、これは見慣れない指輪ですね。敵のドロップ品ですか?」


 そう言ってエルヴィンがあの指輪を手にしました。何かの魔法具と感じたのか最近の饒舌さが鳴りを潜め、寡黙にじっくりとそれを検分しています。

 指輪かぁ⋯⋯⋯⋯指輪?


「⋯⋯す、すみませんギンナさん」


「あ? なんだい」


「実はその⋯⋯除霊のためにお借りした指輪がですね、その⋯⋯壊れちゃいました」


 恐る恐る嵌めていたほうの右手を見せて、ギンナさんの雷が落ちるのを身構えます。


「なんだい、そんなことか。別に気にしなくていいよ」


 ギンナさんがニッコリと笑う。よ、よかった⋯⋯怒られずに済みました!

 しかし彼女はテーブルの隅っこでなるべく視界に入らないよう置いておいた請求書を取ると、いつの間にか持っていたインクとペンで数字のところに線を引き、その上に増額された金額を書き加えていました。


「のおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」


 終わった⋯⋯ズルーガからこっち頑張って貯めてきたお金が一気に融けました! これで絶対に装備の新調なんてしばらく出来ないじゃない!


「うぅ⋯⋯お財布が軽い」


 観念して提示された金額をお支払いすると、ギンナさんはホクホクとした顔でお金を抱きしめています。この婆ちゃん、絶対に足元見て請求してますよ!!


「グレイ様、そう気落ちせずに。竜人の里への護衛依頼の完了提出もまだですし、もしかするとデンリー討伐で報奨金も出るかもしれません」


「そうですかね⋯⋯そうなるよう祈りましょう」


「それにこの指輪、詳しく調べなければなんとも言えませんがかなり貴重な魔法具かと思います。これを売り払えばだいぶ足しになりますよ」


 エルヴィンから返された指輪を手の中で転がして、こんな質素になってしまった指輪にそう価値が付くかなと疑問に思ってしまいます。いっそ嵌めてみてどんな効果か確かめてみますか。


「――――グレイくん、それ付けちゃうと⋯⋯あぁ、遅かったわぁ」


「え」


 振り向くと、ルルエさんがやっちまったなと言う顔でこっちを見ています。

 やっちまいましたか!? 慌てて指輪を抜こうとしますが、一向に外れる気配がありません! 嘘⋯⋯まさかこれも手枷と同じ類の呪具(カースドアイテム)!?


「本来は封印すべきものなんだけど――――まぁグレイくんならいっか!」


「良くない! 多分絶対良くない! こ、これどんな指輪なんですか!?」


「それはソロモンの指輪。太古から伝わる超一級の魔法具よぉ。霊やアンデッド、頑張れば悪魔とか、そういう系の奴を召喚したり使役することのできる代物なの」


「やっぱ呪いのアイテムじゃないですかぁ!!」


「ちなみにヘンフェールはそれの研究を進めようとエリクシルをガブ飲みして死んで、その指輪を媒介に取り憑かれたんだけどねぇ、笑えるでしょ!」


 笑えない、マジで洒落になってない! 魔王剣といい銀の手枷といい、今度は呪いの指輪!? 自分、着実に呪具で身を固めてきてるじゃないですか!


「基本的な使い方は守護霊の指輪と同じよ。なんなら守護霊も呼べるし、試しにやってみたら?」


「え、本当ですか」


 こんなに早くアルダムスさんとの再会の機会が訪れるとは思っていませんでした。⋯⋯でも、今はエメラダもいるし出してはいけない気がする。


『あら! あなたの守護霊さんも見てみたいわ! こうして守護霊同士が集まるなんて滅多にない機会ですもの、是非呼んで頂戴な?』


 空気読んでエメラダそっくりのご先祖様ぁ! そして他のみんなも自分の守護霊が気になるのか、一身に視線を浴びせられます。


「⋯⋯エメラダ、先に言っておきますがあまり怯えないでくださいね?」


「あ? あたしが守護霊程度にビビるかよ。いいから早く出せって、勿体ぶってんじゃねぇよ!」


 ん〜空気が読めないのはズルーガの家系だからですかね? まぁいいや。どうにでもなれ⋯⋯。


「ふっ!」


 自分はアルダムスさんのことを思い浮かべながら、指輪に魔力を込めました。以前のような膨大な量の魔力は持っていかれず、前回の四分の一程度といったところでしょうか?


 指輪からぼんやりとした光が溢れ、モコモコと形作る。そしてそこに現れた巨体を見たエメラダは、口を大きく開けて固まってしまっています。だから言ったじゃない⋯⋯。


『私が来たぞ! なんだ青年、随分と早い呼び出しではないか。一体何があっ――――』


 グワっとサムズアップする貞操帯筋肉男ことアルダムスさんは、始めこそニッカリと笑顔を浮かべていたものの、そこにいる一同のうち一人と目が合った途端に固まってしまいました。アンタもですか。


『シュ、シューリア様⋯⋯⋯⋯?』


『あら、あらあらあら? ――――あら! アルダムス、アルダムスじゃないの!』


 エメラダの守護霊、シューリアさんが一際明るい笑顔で頬を赤く染めました。対してアルダムスさんはと言えば⋯⋯⋯⋯顔を真っ赤にして必死に自分の身体を隠しています。


『シューリア様――――このような破廉恥な姿を見ないでくだされ!!』


 破廉恥な自覚あったんかい。っていうか二人は知り合い?

 ⋯⋯⋯⋯あ。あのドレス何処かで見たことがあると思いましたが、エメラダが拐われた時に着せられていた物と同じ? ということは、シューリアさんがアルダムスさんの想い人ですか!!


『破廉恥なものですか! とっても素敵な姿だわぁ、特にその貞操帯! すごく似合っていてよ?』


『お、おやめください! おやめくださいっ!』


 シューリアさんはアルダムスさんに近づき、舐め回すように彼の全身を視姦して楽しんでいます。アルダムスさんは気持ち悪く身体をくねらせながらも、その瞳は妙に潤んだ様子で満更でもないようです。

 な、なんだこれは⋯⋯自分たちは何を見せられているんだ!


(おい、どういうことだよ!? なんであの怪物がお前の守護霊なんだ、悪霊の間違いだろ!)


 いつの間にか自分の後ろに逃げてきたエメラダが小声で苦言を呈しました。顔色は真っ青で、必死に自分にしがみ付いています。


(言いたいことは分かりますが、なっちゃってるものは仕方ないでしょう。それにしても、まさか守護霊同士が知り合い⋯⋯というか恋仲だったなんて)


(⋯⋯⋯⋯あたしの知ってる恋となんか違う気がするんだが)


 視線を戻すとちょうどシューリアさんが貞操帯を掴んでまじまじと眺めているところで、アルダムスさんはまだ必死におやめくださいと連呼しています。

 嫌よ嫌よも好きのうちとは言いますが、ここまで気持ち悪い実物を見るのは初めてです。


『せ、青年! どうか助けてくれ!』


 うわ。こっちに話振られためんどくさ⋯⋯ゴホン。まぁ可哀想ですし適度に身体が覆われるくらいに全身を鎖で巻いてあげると、アルダムスさんはホッとひと息ついていました。


『――――ふぅん? 私以外の人に縛られても良いんだ?』


『あ、いや、ちがっ!? 違うのです! これは醜い姿を見せたくなくて!』


 すると急にシューリアさんの態度が激変します。まるで汚物でも見るような冷ややかな目付きになり、鎖を掴んでグイと引っ張っています。⋯⋯⋯⋯なんか地雷踏んだ?


「⋯⋯⋯⋯ま、あたしを誘拐して天の鎖で縛り方を教えてたくらいだからなー! あーあの時は怖かったー! ドレスを着させられて縛ったらすごいすごいって喜んでたなあー!」


 そしてエメラダがわざとらしく棒読みで叫び、止めを刺しました。あの、うん。事実だし仕返しをしたい気持ちはよく理解できますが、もうこれ以上拗らせないほうが⋯⋯。


『誘拐? ――――アルダムスあなた、浮気したの? 私以外の女に縛らせたのね!?』


『浮気だなんてそんな! し、しかしエメラダ嬢はまるでシューリア様の生き写しのようでしたし⋯⋯その』


『言い訳はいいわ! ちょっと躾け直してあげる! お婆ちゃん、奥借りますわよ!』


「⋯⋯勝手にしな」


 ギンナさんが辟易しながら許し、アルダムスさんはズリズリと教会の奥部屋へと引き摺られていきました。

 その後は小一時間ほど、アルダムスさんの気色悪い嬌声を聞かせられることになったのですが⋯⋯。


「⋯⋯エメラダもああいう趣向を持ってるんですか」


「んなわけねぇだろぶっ殺すぞテメェ!?」


 ちょっと引き気味にエメラダを見るとガチギレされちゃいました。でもたまにSっ気すごいし、間違いなくシューリア様の血は継いでると思うんですよね⋯⋯。


 そうして暫くしてから戻ってきた二人。シューリア様は何処か艶々としていて、反面アルダムスさんは何かを絞られたようにひと回り小さくなったように萎んで見えます。


『エメラダちゃん、この人から話は全部聞いたわ。怖い思いをさせてしまったわね――――ほらアルダムス、謝りなさい』


『生前は貴女に大変な恥辱をかかせてしまい、本当に申し訳ありませんでした。どうか許してください⋯⋯』


 自分が身体に巻いた鎖は解かれて、何故か首だけに括り付けられてシューリアさんがグイグイと引っ張っています。その度に床に這いつくばって謝るアルダムスさんが嗚咽を洩らすのですが――――あの、もうそんな高度なプレイ見せるのやめてくれません?


「なんかもうどうでも良いから、早く普通にしてください⋯⋯⋯⋯」


 エメラダが死んだような眼でシューリア様に懇願します。でも焚きつけたのはエメラダですからね、自業自得です。


 そうして公開羞恥プレイ⋯⋯じゃない、公式謝罪は終わりを迎えました。なお子供の教育に悪いと、エルヴィンが途中からクレムとハイエルくんを連れて外に出ていました。グッジョブ、エルヴィン! クロちゃん? いまだ爆睡中です。


 なんで修羅場を潜り抜けてきた後に更に酷い修羅場を見させられてるんでしょう⋯⋯もう自分、休みたい。

すまない、もう少しロマンチックな二人の再会を果たそうとしたんだが筆が滑った! でも二人の関係と想いは鎖でこそ結ばれているんだからしょうがない! この変態!


次回、お別れです。


そして作者のモチベ向上のため、是非ともブクマや☆☆☆☆☆評価をよろしくお願いします!

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