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第70話 一応呼び出せました。

 こんにちは、勇者です。


 今、お空飛んでまーす。何故かって? 自分の割り振られた南側に行くまで死霊がビッシリ悪霊モッサリだからですよ! 辿り着くまでに力尽きますから!


 というわけでギンナさんに書いてもらった簡易な地図を頼りに大体南寄りまで来たわけですが⋯⋯皆大丈夫かな? 特にクレムが。まぁ危なくなったら教会に逃げ込めって言ってたし平気でしょうか。あそこには結界が張られているらしく、悪いものは絶対立ち入れないそうです。


「さて、このあたりでいいですか」


 比較的悪霊のフワフワしていないところに降りて辺りを見回します。とは言っても、見渡す限り墓石がずらりで特に景色は代わり映えしないんですが。


「なんかずっとバケモンって言われてましたが、本当に自分の守護霊って誰なんでしょう⋯⋯ていうか守護霊がバケモンっておかしくない?」


 ちょっと怖々としながらも、自分はエルヴィンがやっていたように指輪に魔力を込めて守護霊を呼び出すことにしました。


「よし、なんでもいいからカモン守護霊!」


 グッと指輪に魔力を通します。一瞬ふわりと指輪が光り、しかしその後は特に何も起きません。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯あれ?」


 その後何度も魔力を通してみますが、一向に守護霊が現れる気配はありません。むしろ無駄に魔力を吸われてちょっとげんなりなんですが? ちょっと! この指輪不良品なんじゃないですか!?


「出ろ! 出てきて! お、おかしいな⋯⋯出てこーい!」


 シン、と静まり返る墓地の中で自分だけの声が木霊します。な、なんで出てきてくれないの!?


「どどどどうしよう、困った⋯⋯これは一度戻りましょう、か――――」


 そう思った時、何やら聞き覚えのある音が小さく響く。あー何だっけこれ、すごく聞き覚えがあるのに何故か思い出せない。

 キョロキョロと辺りを窺うと、なにやら蠢く影がそこら中にあるではありませんか。それらが揺れるたび、カラカラと音が鳴ります。⋯⋯⋯⋯あ、これアレだ。


「スケルトンだぁーーーーっ!?」


 叫ぶと同時、影たちは一斉に自分へ襲いかかってきます。慌てて双剣を引き抜きハチャメチャにぶん回すと、骨たちはあっさりと吹き飛んで沈黙してしまいました。


「び、びっくりした⋯⋯でももう骨山の頃の自分じゃないですからね。精霊術なしでもスケルトンくらい余裕余裕⋯⋯」


 そう言って、自分の発言の愚かさに自分をぶん殴ってやりたくなりました。気がつけば、自分を中心に周囲が真っ白に染まるくらいの骨がカラカラと笑っているじゃありませんか。


「は、はは、いくら何でも多すぎ⋯⋯⋯⋯一時退却! 風精浮遊(シルフウィンド)!」


 堪らず空へと逃げ出しますが、時すでに遅し。側にいたスケルトンに足を掴まれ、二体三体、十体と自分に絡みついて遂には引き摺り下ろされてしまいました。


「嫌あぁーーっ! もう骨はいいの、お腹いっぱいなの! あぁもう、疾風斬(ウィンドカッター)!」


 かまいたちを振りまけば、脆い骨たちはバラバラと崩れて倒れていく。しかし風の刃は骨と共に墓石まで切り倒してしまいました。


「あ⋯⋯やべ」


 ギンナさんに、墓石はなるべく傷つけるな。そのための守護霊での除霊でもあると言われたのを思い出し、安易に精霊魔術を行使できません。


「こ、こうなったら焼きますか? でも石が古くて焼き崩れちゃいそうだし⋯⋯」


 そうしている間にも次々に骨が飛びかかってきて、取り敢えずはひたすら双剣を振り回します。


「だぁぁもう! どうしてこうなった!? 守護霊どうした!? もう帰りたいです!!」


(騒がしいと思ったら、何やってんだお前?)


 そうのんびりと話しかけてきたのはサルマンドラさんでした。


「いや、ちょっと除霊に来たは良いんですけど肝心の除霊アイテムが働いてくれなくてあああああ噛みつかないで!? 歯形、歯形がぁ!」


(⋯⋯割と余裕ありそうじゃねぇか)


「無いですよ!? そもそも斬ってく側から新しく湧くし復活するしで完全に負け確定の消耗戦状態なんですけど!?」


(除霊アイテムって――――あぁ、その指輪か。ちゃんと魔力注いだのか?)


「やりましたよ! でも守護霊が出てくるはずがウンともスンとも言わないんです!」


(いや、それ完全に魔力足りてないだろ。もっと気合い入れて注げって)


「え、結構注いだつもりなんですけどまだ足りない!?」


 その間にも周囲には骨の残骸が積み上げられていきます。骨だけならまだいいのです。しかし遂にはそう遠くない位置に悪霊の一団がこちらへ猛ダッシュしてきているではないですか、これはマジでヤバいですよ!


(守護霊とかはよく知らんが、呼び出す相手が強いやつなら相応の代償が必要だろ。ほらやってみろって)


「わかりまし痛ぁぁ!? 脚、脚噛まないで! ああもう面倒くさい!」


 なるべく墓石が傷つかないようもう一度ウィンドカッターを繰り出すと、少しだけ周りに余裕ができます。悪霊集団はもう目前、あっちは双剣では相手できないので早いとこ守護霊を呼び出さなくては。


「どりゃああああっ! ってどんだけ魔力持ってくんですか、もう自分のキャパの四分の一は持ってかれてますよ!?」


(ほれほれ〜、早くしねぇと悪霊に取り憑かれちまうぞ? 俺、変なのが入ってきたらお前使って容赦なくこの辺焼き払うからな)


「それは怒られるからダメっ! 早く、はやくぅ! まだ足りないの!? もうこうなったら魔力全部持ってけぇーっ!」


 もはやなりふり構わず、自分は全力で指輪に魔力をブチ込んでいました。あ、マジでヤバい。もうこれ以上は帰りの魔術も使えるか怪しい。それくらいの魔力残量になった瞬間のことでした。


「うおっ、眩しっ!」


 指輪がカッと光り、ズンズンとそれは大きく膨らんでいきます。何だかエルヴィンの時とまるで違うんですが大丈夫なんですかこれ?!


 膨れ上がった青白い光の塊は、まだ何かに形を作ることなく勝手に周囲を薙ぎ払いスケルトンと接近した悪霊たちを打ち消して行きました。


 今まで崩れては起き上がるばかりだったスケルトンはそれだけで灰に還り、悪霊たちは悲痛な声を上げながらジュっと消え去ります。


 何とか周りが落ち着くと、ようやく光の塊は何かになろうと空中で蠢き続ける。⋯⋯っていうかデカい! エルヴィンの犬とは比べものにならないくらいデカい!


「い、いったい何が出てくるんですか⋯⋯ちょっと自分でも怖いんですけど」


(ん? あ〜この感じ、あいつか⋯⋯俺が言うこっちゃねーが、お前も大概変なのに好かれるなぁ)


「余計なお世話ですよ! っていうか本当に何!! 誰!?」


 大きく広がった光はやがて収束していき、段々と人の形を整えていく。そのモリっとしたシルエット、ツルンとした頭頂部に、自分は何だか既視感を覚えます。


「ん? んん? この人影なんとなく見覚えが――――って、あなたはっ!?」


『ハァーハッハッハ! 私を呼んだな、青年!!』

ハッハッハ!私が来た!

オールマイトではないです。皆さん何となくご想像がついてるあの人です。

次回からはほかのパーティメンバー視点でお送りします。


そして作者のモチベ向上のため、是非ともブクマや☆☆☆☆☆評価をよろしくお願いします!

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