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第42話 一応温泉に行きました。

満を!持しての!水着回だぁーーーーーー!!!!

 こんにちは、勇者です。

 エルヴィンさんと別れて一人寂しく待ち合わせ場所に佇んでおよそ二時間。ようやく女子組たちが和気あいあいとして帰ってきました。


「おーそーいーでーすーよ!」


「わりぃわりぃ! 結構品揃えが良くってさ、迷っちまったんだわ」


 どう見ても悪びれていないエメラダ。そして既に酒瓶片手に引っ掛けてるルルエさんとクロちゃん――――ん? クレムの姿が見えません。


「クレムはどうしたんですか?」


「あ? あぁ、それならよぉ」


 エメラダが悪戯っぽく笑って自分の後ろを指差します。それと同時に、クイと控えめに袖を引かれる感触がして振り向くと、そこには姿の一変したクレムがいました。


「あの、お兄様。どうでしょうか?」


「お、おおぅ!?」


 父であるクラウス様から贈られたというガチガチの全身鎧とは打って変わって、なんというかその――可愛い!


 鎧部分は胸部や肩部、小手に限定され、かなり身軽そうになっています。靴もブーツに変わり脛部分に鉄当てが着けられ、自分やエメラダと同じ軽装備に様変わり。


 しかし最も目を惹くのが、ピッチリとした黒い薄手のショースに締められた細い脚と、フリフリと纏う可憐な黄色のスカート。

 髪も後ろで束ねるだけでなく、お団子にして簪で可愛くまとめられています。


 緩んだ自分の表情から好印象なのを悟ったのか、クレムは機嫌の良さそうにクルクルとその場で回り出します。

 その度にスカートがたなびき、ちょっと中見えちゃうから~! とか心配してしまいます。男の子なのに!


「エメラダ様とルルエ様に選んでもらったんです! どうです、可愛いですか!」


「は、はい。すごく可愛くなりすぎて……もう知らない人はクレムが男の子とか絶対分からないでしょうね」


 それはもう、凄まじいくらいの破壊的な可愛さです。ドレスを着ていた時とはまた違う方向性で、快活そうな美少女にしか見えません。


 しかし実用性にもなんら問題なさそうなのがまたすごい。


「ふふふ! これすっごい軽いんですよ! 今までのは動きにくくて仕方なかったんです!」


「クレム! 近い、近い!!」


 クレムは嬉しそうに自分の腕に身を絡ませてきます。あの、なんか、すごい緊張するから!


「ほらお兄様! もう一度褒めて!」


「うん、すごく可愛いですよクレム。良く似合ってます」


 頬を染めながらニコニコと笑う姿はまるで天使! 今のクレムをクラウス様に見せたら果たして喜ぶでしょうか哀しむでしょうか――絶対喜びますね!


 テンションの上がったクレムがまだクルクルと踊っています。エメラダはその姿を見て仕方ねぇ奴と呟いてますが、その顔はどこか姉のような優しさが含まれていました。

 そう言えばエメラダには弟がいたんでしたか。案外面倒見の良いお姉ちゃんだったのかも。


「で、予定よりも二時間は押しているわけですがその辺のとこ皆さんから何か言い訳はありますか?」


「あらぁ、可愛いのを見れたんだからこれでチャラでしょぉ? それにグレイくんにはこれからもっと凄いのを見せてあげるんだから、むしろプラスなはずよねぇ」


 ルルエさんは手に持った紙袋を見せつけるように持ちあげます。あぁ、水着というやつですか。そもそも水着ってどういう服なんでしょうか?


「お前には一人一人に感想を言ってもらうからな。覚悟しとけよぉ?」


「あ~。あまり自分には褒め言葉の語彙が多くないんですが……」


「うるせぇ、そういうのは見てから考えろ! 素直な意見を言えばいいんだよ、ほら早速温泉行くぞ!」


 エメラダに手を引かれて歩きだします。それに目ざとく反応したクレムが、反対の手を握ってぐいぐい引っ張る。自分は一人ですよぉ? あまり強くすると君たちじゃ冗談抜きに自分を二つに裂きますからねぇ?


「そう言えばグレイくん、エルヴィンは何処に行ったの?」


「エルヴィンさんはこれ以上お金を借りるのが申し訳ないと言って、ひとりでクエストを受けに行きました」


「はぁ~、あの文句ばっかり垂れてた三流魔法士が殊勝になったものねぇ」


 でもそれを聞いたルルエさんはなんだかちょっと嬉しそうでした。


 そんな感じで暫く歩くと、宿場を抜けた少し先に横に大きな平屋の建物が見えてきました。色んな人が出入りしていて、そこが温泉の入口なんだとすぐ分かります。


 中に入ってすぐは広いエントランスになっていて、ベンチや簡易の寝台なんかも設置され、来場客は思い思いにくつろいでいるようでした。


 エントランスの付きあたりには支払い所と男女に別れた更衣室への入口があり、自分たちは人数分の金額を支払って中に入りました。


「じゃあ中でねぇグレイくん。ちょっと覚悟しといたほうがいいわよぉ?」


「ええぇ……は、はい」


 男門を潜るとき、他の客がクレムをみてギョッとしていましたが、まぁ当然な反応ですよね。


 更衣室は出入りする人も多いためか、籠ではなく一つ一つ区切られた鍵付きの棚に衣服を仕舞うようでした。これなら財布や貴重品の心配もないです。


 自分は手近な棚を選んでポイポイと鎧や服を投げ入れていくと、支払い所で借りた水着――ただの短ズボンなんですが――に履き変えました。


 ふと隣を見ると、クレムが大きなタオルを身体に巻き付けもぞもぞと着替えをしています。


「……クレム、なんでそんな面倒なことしてるんです?」


「あ、あまり見られたくないので……お兄様は着替えが終わったなら先に行ってて下さい! 僕はもう少し時間が掛かるので!」


 ちょっと強めの剣幕でそう言われてしまい、自分はちょっと寂しい気持ちになりながら浴場の入口をがらりと開き、目の前の光景に驚嘆してしまいました。


「うわぁ、これが温泉ですか!!」


 入口を潜ると、そこはまた屋外で周囲が大きめの岩で囲まれていました。

 エメラダは泉と表していましたが、その大きさはちょっと大きめの池という感じです。


 もうもうと湯気が漂い、池の中には沢山の人がふよふよと浮かんでいます。そしてやはり目立つのが、女性の存在。


 沐浴や入浴という行為に際して異性がいるというだけでちょっと緊張してしまうのに、そこにいる女性の多くが結構な感じに肌を露出させていて凄く目のやり場に困ってしまいます……。


 しかし他の男性たちはその大胆な女性の姿に次から次へと目移りしているようで、なんだか温泉の熱気とは違う熱さを感じます。


「えーと、まずは洗い場で垢汚れを落とすんでしたか」


 支払い所で浴場内での注意事項を説明された時、温泉に入る前に備え付けの洗い場で身を清めてから入ること、というのがありました。


 少し見回すと、浴場の片隅に上から下へと温泉が流れ出る滝のようなところがあり、皆そこで石鹸や藁などでごしごしと身体を洗っていました。


 自分もそれに倣い汚れを落とすと、あとは皆を待つだけです。なんか今日は待ってばかりな気がしますが……。


「お、もういたなぁ? 待たせたなグレイ!」


 後ろから弾んだようなエメラダの声が聞こえ、何気なく振り向きます。そこで自分は自らの考えなしに後悔したのです。


 浴場にいる女性たちがこれだけ薄着になっているんだから当然彼女もそうなんだと予想できたのに、自分は何の覚悟もなく振り向いてしまい、そして硬直してしまいました。


「じゃーーん! どうよこの水着! 結構良いと思わないか?」


「――――――――――――っ」


 思わず生唾を飲み込み、しかし言葉が出てきません。


 そこにいたエメラダの姿はあまりにも扇情的過ぎました……上半身は赤いチューブトップの胸元の布だけ。

 それによって乳房が寄せられ、普段は胸当てで見えない彼女の女性的な部分がとても大きいことに気付かされます。

 くっきりとくびれの際立つボディラインに可愛げなへその窪みがまるで彫刻のようです


 下もまるで下着のような際どい履き物で、内股の部分にささやかに添えられたフリルがポイントになり、すごく――エッチです!


 もう見つめていいのか目をそらせばいいのかも分からないくらい自分の頭の中はパニック状態で、まだお湯にも使っていないのにのぼせているようでした。


 その様にエメラダは満足したようで、フフンと鼻を鳴らしながら自分にゆっくりと近づいてきます。


 反射的に一歩後ずさるも、エメラダは気も止めず自分に縋り寄って煽るような笑顔で囁いてきました。


「どうだ、似合うか? ……興奮、するか?」


 耳元まで迫ったエメラダを見ると、どうやら彼女もそれなりに恥ずかしいのか顔が紅潮しているのが分かります。

強がりながらも恥じらうギャップも相まって自分の鼓動は増すばかりです……。


「あの、その、良い」


「ん? 何が良いんだよ、ハッキリ言えって」


「だ、から――すごく、素敵ですよ」


「まだ足んねぇな、もっとちゃんと言わなきゃわかんねぇ」


 挑発するようにそう言うエメラダに少しムカッときて、ならハッキリ言ってやろうと彼女の両腕をグッと掴み、真正面に向きあいます。


「きゃっ」


「エメラダ、すごく素敵で綺麗です!」


「~~~~~~っ!? そ、そか」


 勇気を出してそう言うと、今度はエメラダのほうが照れて縮こまってしまいます。ふふふ、自分はやり返せる男なのですよ! ……鼻血出そう!!


 周りの男たちもエメラダの大胆な姿に釘づけのようで、視線がドンドン集まってきます。


彼女はようやくそれを察したようで、更に顔を赤らめて自分の背中に隠れてしまいました。


 その際、こう、アレですよ。彼女も余裕がないので、特に深く考えもせず身を寄せるわけで、あのね、胸がね! 当たるの! 当たってるの!!


「エメラダ! 近い!本当に近い!」


「うううるせぇ! お前は黙ってあたしの肉壁になってろ!」


「そんなに恥ずかしがるならなんでそんな大胆なの選んだんですか!?」


「それはその……姐さんに乗せられて段々とこう」


「――――あぁ、頭に浮かぶように想像できます」


 きっと始めはもっと慎みある物だったんでしょう。しかしルルエさんの介入に乗せられ、どんどん布面積は少なくなり今に至ったと……。


「あーーー! エメラダ様! お兄様にくっつき過ぎです、離れてください!」


 ぱたぱたと足音と声が聞こえてクレムも来たかと見遣れば、彼もまた中々凄い恰好でした。


 下は内股まで際々のダメージジーンズを履き、真っ白で細い幼さの残る足を一層目立たせています。


それに加え、何故か隠す必要もないのに胸元にもたっぷりとドレープを蓄えたフリルが付いたオレンジ基調の水着を着ていて、君その格好で男子門から入ってきたの!? と問い質したくなります。


「まったく、だから言ったじゃないですか。ルルエ様がいくら凄いの着るからって対抗してそんなの選ぶから! っていうか近過ぎです、お兄様から離れてー!」


 ぐいぐいとクレムに手を引っぱられ、少し間が空くとまたエメラダがピトッと身体を寄せてくる。

その度にポヨンと背中に柔らかいものが当たって――もう自分は死ぬんじゃないかな?


「ク、クレムもまた可愛いの選びましたね……男の子にしては布が多い気がしますが」


「え、えと……えへへ。折角だから水着もちょっと女の子っぽいほうが良いかなって!」


 なーにーがー折角なのかは全然分かりませんが! とりあえずその格好でその笑顔は反則! 思わずサラサラの金髪が気持ち良い頭を撫で撫でしてしまいます!


「あ~う~、お兄様っ、髪が乱れますよぉ」


 そう言いながらも満更じゃなさそうなクレム。あぁ可愛い、本当にこの子の将来はどうなってしまうんでしょう?


「……でもお兄様、エメラダ様の姿でそんなにしていたらルルエ様なんてきっと直視できませんよ?」


 クレムがげんなりとした顔で言ったのと同時に、遠くから男たちの雄叫びのようなものが聞こえてきました。それだけで嫌な予感がビシビシと自分の中に立ち込めます。


「あらあらみんなお揃いねぇ! さぁ、どうかしらぁグレイくん。お姉さんの会心の水着はぁ?」


「ぐれー! おまたせたー!」


 てこてことワンピースタイプの黒い水着を着るクロちゃんの手を引いてやってきたルルエさんの姿は、一言で表せば――――痴女。


 なんていうかもう、ほぼ全裸。


一本の太めの布を、肩口から内股に、内股から逆の肩口に通したようなV字型の水着…………水着? を恥じらいもなく着こなし颯爽と歩くその姿は、思わずあぁそういうものなのかなとか錯覚しそうなくらいに威風堂々としていました。歩いて揺れるたびにその豊満な胸が布からこぼれそうでヒヤヒヤします。


「……ッ……、ルルエさん、やり過ぎ!? 公共の場ですよ!!」


「あらぁ? でも売り物の中にあったんだからぁ、別に着てもおかしくないってことでしょぉ?」


「あんたの頭がおかしいんですよぉ!!」


 ぐんぐんと近づいてくるルルエさんの速度はまったく緩まずまるで故意に激突するかのように、自分の胸板にそのド級の乳房がボンと押しつけられます。


その反動でたたらを踏むと、今度はエメラダの胸にポヨヨンと弾き返され、その柔らかいクッションの間を何往復かするうち、ついに自分は限界を迎えました。


「だぁあああああああああああっ!!!!」


 思わず叫び二人を遠ざけると、一目散に温泉に向かって走り出し飛び込みます。

 飛び込みはマナー違反とは言われていましたが今は緊急事態、具体的には自分のダガーが直剣になってしまったのでそんなこと気にする余裕もありません!


 ドボンと池のような広さの温泉に身を沈め、暫く水中で心を無にします。今ならば精霊さんたちの声も余裕で聴こえてきそうです。


(おう坊主、あの程度で興奮してんじゃねーよ。ガキかおめぇは?)


 マジで話しかけてこないでくださいサルマンドラさん! いまは心頭滅却しなきゃいけないんです!!


(へいへい、まぁ頑張んな。まったく(うぶ)だねぇ)


 その後数分くらい沈んだまま、自分は必死で自分と戦いました。そしてようやくちょっぴり悟りを開いて湯から顔を出すと、浴場際にしゃがみ込んでニヤつくルルエさんと目が合いました。


「どぉ? 剣は鞘に納まったかなぁ?」


「――――――知りません!」


 その後はみんなでゆったりと温泉に浸かり英気を養ったはずなのですが、自分はのぼせ上っていまいち記憶が定かではありませんでした……。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

我渾身の水着回!如何でしたでしょうか?

ラブコメ主人公もかくやという思いをグレイくんに味わわせてみましたが、ちょっと彼には刺激が強すぎたようです。

化学繊維のないファンタジーで水着を表現するのって大変ですね……。


これまでブクマ、☆評価して下さった方々に心からの感謝を!

初見な方、面白いと思って下さった方。もし宜しければブクマやご感想等、

そして下の☆ポイント応援で評価して頂けると、もう一度ルルエさんがスリングショット水着を着てくれるかもしれません!


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