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第111話 一応ランチを作りました。

更新ないと思った〜? 残念ありました〜!

※10/22追記 この話、別に幕間扱いにしなくてもいいかとタイトルをナンバリングに変更しました。

 こんにちは、勇者です。


 昨日の伯爵との密談から一夜明け、今はもう既に竜人の里へと引き返している最中です。


 何でも今回は速さが勝負ということで、出来るだけ迅速に動いて色々と根回しをしていきたいらしいです。


「ほい、着きましたっとぉ」


「はぁ〜。相変わらず速いな、なのに風の抵抗もないしどうなってんだ?」


 エメラダを腕に抱えてクルグスから里へと帰ってきた自分たち。

 彼女は自分の飛行がどういう仕組みなのか不思議がっています。


「まぁシルフウィンドの改良版というか、周りの風を滑らせてさらに加速させているというか⋯⋯うまく説明できませんね」


 そう、実際何と言えばいいかわからないのです。

 精霊術が強力になり精霊の力をさらに引き出せるようになってからというもの、空中に漂う精霊の欠片のようなものが感じ取れるようになりました。


 これをいい感じに利用するとこれまでよりも効率的に精霊術を行使できるようになったのですが、それを説明しようとしても良い表現が浮かばないのです。


「まぁ速いに越したことはねぇけどな。あ〜腹へった!」


 伯爵邸から暇する際は朝食も断って夜明けと同時に出てきましたからね。

 おかげで昼前に里へ着けましたが、エメラダの言う通りお腹ペコペコです。


「戻りましたよ〜。みんないますかぁ?」


「あ! お兄様、昨夜はどこへ行ってたんですか!!」


 すっかり自宅気分になってしまった郷長宅へとお邪魔すると、いきなりクレムに詰め寄られました。

 おぉ⋯⋯無断外泊を怒られるとかなんか久しぶりというか、新鮮?


 クレムは自分のお母さんだった⋯⋯?


「うるせぇチビ。大人は色々やることがあるんだよ、文句言ってる暇あるならクロのことしっかり鍛えとけ」


「言われなくてもやってますよ! っていうか人間姿? 半竜? のクロちゃん、正直に言ってすごく強いですよ。多分本気でやったらエメラダ様は負けます」


 ふふん、と我が事のように誇ってドヤ顔するクレム。

 う〜んそんな虎の威を⋯⋯じゃなくて竜の威を借るその姿も中々に微笑ましい。


「いや、竜に負けてるって言われても別に悔しくはないんだが⋯⋯確かに人間姿のクロに劣るってのはちょっと癪だな」


 こっちは一応大人の態度を崩さないようにしているものの、やはり小さなクロちゃんより弱いと言われるのは不本意なのか口をへの字に曲げています。


「エルヴィンや姐さんたちは帰ってきてるか?」


「お二人もまだです。全く、子供だけ置いてみんな外泊とか心配じゃないんですか?」


 いや、白金等級勇者と黒竜の子供の何を心配しろと言うのか。

 むしろ彼らに危害を加えた側の方に心配しちゃいますよ?


「あれ? ドータさんやサルグ・リンはいないんですか」


「朝まではいました。でも祭祀殿の仕上げが今日でひと段落つくとかで、朝早くからみんな出て行ってしまったんです」


 なるほど、それで置いてけぼりにされて拗ねちゃってるわけですか。


「クロちゃんは?」


「何もやることがないと分かったら、森で狩りをしてくるって飛んでっちゃいました⋯⋯ひとりぼっちです」


 ショボンと項垂れてしまうクレム。

 流石に可哀想になって、よしよしと頭を撫でて慰めました。


「それじゃ⋯⋯お留守番してくれたクレムのために、久々に自分が料理でも作りますか!」


「っ! 本当ですか!」


「お〜、いいな! 昨日の伯爵の料理はモニャッとしてて食った気にならなかったんだ」


 モニャッてなんですか。あんなん庶民が一年働いた金でも食えないご馳走ですよ!?

 ⋯⋯まぁ、昨日は自分の料理の方がいいって言ってましたし? べ、別に言われたから作るってわけじゃないんだからねっ!


「じゃあハイ、食べたい物リクエスト〜」


「ハンバーグ!」「スパゲッティ!」


 子供舌ですか! いえ片方は本当に子供ですが、エメラダのチョイスもどうなんでしょう。


「ん〜、じゃあ自分の実家で出していたランチメニューでも再現してみますか」


 そう言って、勝手ながら厨房をお借りすることにします。


 作るのは希望通りハンバーグにスパゲッティ。それに――あぁ、ライスもありますね。

 ドワーフたちが大量に持ち込んで来てたので、今では里の第二の主食となりつつあります。


 それとアレはどうしよう⋯⋯海がないから流石になぁ。


「ただいまーーーーーっ! あ。パパ帰ってきてる! おかえり!」


 姿を表した途端にダダーッと駆け寄り自分の背中にへばり付くクロちゃん。

 前はこんなにスキンシップも過剰じゃなかったのに、やはり家族が恋しかったんでしょうね。


「ただいま、そしておかえりクロちゃん。なんか獲ってきましたか?」


「ん〜、この森あんまり面白いのいない。なんか変な虫がいたからとりあえず捕まえてきた!」


 そう言って手を引かれて勝手口から裏庭に出ると、そこには中々のサイズの足長蜘蛛ハイレッグ・スパイダーがひっくり返っていました。


「おぉ! クロちゃんナイスタイミング、これなら代用できます!」


「ん〜? クロいいことした?」


「とても良いことしましたよ! この蜘蛛の足は油で揚げると凄く美味しいです。今ご飯を作るところなので、クロちゃんもみんなと一緒に待っててくださいね」


 ご飯と聞いた途端に目をキラキラと輝かせ始めました。

 ⋯⋯これは思ったより多めに仕込みをした方が良さそうですね。


「じゃあクロはクーとタンレンしようかな。もっとお腹減らしたいし!」


「エメラダもいますから、三人で行ってくるといいですよ。一時間くらいしたら戻ってきてください」


 はーいと元気よくお返事して家に駆け込んでいったクロちゃんは、ワーキャー騒ぐ二人の抵抗を物ともせずに外へと連れ出して行きました。


「さってと、まずはコイツを捌いて、トマトがあったからペーストにして、あ、パン粉も作らなきゃ」


 ん〜、久々の凝った料理だからちょっと手間取りそう。

 でも言ったからには満足させるものを用意しないと凄く怒るだろうなぁ⋯⋯。


 そんな感じで自分はみんなに出すための料理の下拵えを進めていきました。



◇◇◇◇◇◇



「ただいまーーーーーっ!!」


「⋯⋯つ、疲れた」


「人の姿のまま羽とか生えんのかよ、反則だぜ⋯⋯」


 一時間経って三者三様の顔で戻ってきたみんなのことを、自分はエプロンを着けたまま出迎えます。


「ちょうどよかった。もうすぐ出来ますからみんな食堂にいてください。あ、ちゃんと手は洗うんですよ?」


「お! なんかめっちゃいい匂いするな、楽しみだぜ」


「うぅ⋯⋯お腹空きました」


「クロもペコペコだぁー!」


 そうして出来上がった渾身のランチプレートをみんなの前に差し出すと、お子様二人はともかくエメラダまで目を輝かせて涎を垂らしている始末。


 おい、昨日までの王女どこいった。


「と言うことでみんなのリクエストを詰め合わせたランチプレート、その名もお子さ――――じゃなかった。え〜、オルサム・ランチとでも呼んでおきましょうか」


 自分の実家の料理屋で出していたお子様向けの料理なんですが、そう言うとエメラダが文句を言いそうなので伏せておきましょう。


 皿に関しては皆よく食べるので通常の三倍の大きさ。


 そこにクレムの希望のハンバーグ。

 エルフ秘伝のタレもかけてあって肉にめっちゃ合います。


 エメラダ希望のスパゲティ。

 これはトマトペーストと挽肉を合わせたソースを絡めました。


 そしてクロちゃんが獲ってきた足長蜘蛛ハイレッグ・スパイダーの脚に衣をつけてカリッと揚げたフライ。

 本当は海で獲れる海老が一番美味しいんですが、足長蜘蛛ハイレッグ・スパイダーの脚は海老の食感にそっくりなのです。


 そしてメインはスパゲティでも使ったトマトペーストを絡めて炒めたライス。香辛料があればよかったのですが、里にはそんな贅沢品はないので素朴な味に仕上がっています。


 それを全部一つのお皿に豪華に盛り付けたのが、仮称「オルサム・ランチ」!

 子供の頃は婆ちゃんの店で賄いついでによく食べさせてもらったものです。


「こ、これ、すごいなっ!」


「なんか夢が詰まってるって感じのするご飯です!」


「おーいーしーそーーーーーっ!!」


「ハイでは、よーい⋯⋯召し上がれ!」


 自分の言葉を皮切りに、三人はがっつくように料理に齧り付いていきます。


 クレムはやはり肉食なのか、ハンバーグがお気に入り。


 エメラダも自分のリクエストとあって最初はスパゲティに手をつけていましたが、蜘蛛フライを一口食べた途端に目の色が変わってモシャモシャと貪り出しました。


 クロちゃんはトマトライスが気に入ったのか、口の周りを赤く染めながらスプーンで大量に掬っては大口を開けています。


 よしよし、みんな満足そうに食べててよかった。

 下拵えは済んでるし、ルルエさんたちやドータさんたちが帰ってきたら皆にも作ってあげましょうか。

ちょっと体調不良気味で本編を書く元気がないので、サクッと幕間を用意しました。

お子様ランチはみんなの夢!

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