第100話 一応言うこと聞きました。
みんな〜、記念すべき第100話だよ! おめでとう!おめでとう!(エヴァ並感)
こんにちは、勇者です。
連日の二日酔いもキラキラ放出とすっかり慣れた解毒魔術でスッキリシャッキリ。
そしてようやく思い出す、拷問しっぱなしの彼らのこと⋯⋯。
やっべ⋯⋯丸一日放置しちゃいましたけど大丈夫だったかな?
まぁアルダムスさんには一応言付けてあったわけだし、何も言ってこないということはそれだけ彼らの意思が固かったということでしょう。
とは思いつつも、なんだか嫌な予感がして朝食の前に彼らを捕らえている納屋へと足を運んでみれば――。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「きひゅっ、たじゅげ、も、苦し、くる、狂ぅぅっ、オゲェェッ、うぅぅ、ゔェぇぇ⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
超低級ゾンビに纏わり付かれるセレスティナは、身体中ゾンビの腐液に塗れてガチガチと震えながら頭を抱えて謝り続けています。
毒針を打った痩せぎすの男は穴という穴から汚物を垂れ流し、今もなお地面でもがいて意識も失えず、死ぬに死ねない状態。
筋骨隆々の大男は、人間かと思ったら実は獣人だったみたいです。二本脚の狼のような姿ではあるのですが、今は身体中の関節が曲がってはいけない方向にうねり白目を剥いて倒れていました。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯てへ!
あぁ認めましょう! やらかしましたよ! この人たちもう抵抗する力も残らずただ生きてるってだけですよ!
だ、大丈夫かな。かなりやり過ぎだけどあとでちゃんと言い訳とかききますかね?
「ア、アルダムスさん! 喋る気になったら教えてって言ったじゃないですか、なんですかこの有様!?」
『おぉ! おはよう青年! いや〜昨晩は中々良い夜だった。このような阿鼻叫喚の宴は魔王になってからもそうそう無かったぞ!』
「宴なんぞ知りません! この人たち明らかにもう何でも喋ってくれちゃう状態じゃないですか!」
『なぜそんなに怒る? そうするように仕込んだのだろう? 君が?』
見た目の体格のわりにキョロリとつぶらな瞳でそう聞き返され、自分は思わず反論に困りました。
「い、いや確かにそうなんですが⋯⋯もう少し早めに呼んでほしかったというか」
『青年、何事も中途半端が一番いかんのだ。やるなら徹底的に。特に心を砕くというならやり過ぎくらいが丁度良いのだぞ!』
さすがは元魔王、そして真性のドM。こと拷問に関しては一家言あるようです。
でもね? 人間ってやり過ぎると心が壊れてしまうものなんですよ? そうなったら元も子もないのです⋯⋯。
とりあえず⋯⋯セレスティナの周囲のゾンビをしまって、汚れているからなるべく温かくした水魔術で綺麗に身体を洗ってあげましょう。
ジャバジャバと頭から温水を掛けてやり、汚れが落ちたら送風で乾かしてあげる。
痩せぎすの男には蠱毒針を中和するよう呪解針という魔術針を刺す。
ついでに汚物や吐瀉物も水で洗い流し、活力増進のスタミナポーションを飲ませました。
狼男は⋯⋯なんかもう色々酷いので高等治癒を唱えて傷を癒やし、傍にあった毛布をそっと掛けてやり椅子に座らせてあげます。
そこまでしても彼らは虚ろな眼でだらりとしたまま、何も言わない。っていうか喋れない。
自分も同じことされたらこうなるだろうなぁ⋯⋯。
いやどうだろ? 案外大丈夫な気がしなくもないです。
普段が普段だからね!
ピクリとも動かない彼らが逃げ出す心配はないと思いますが、念のためアルダムスさんをそのまま監視に付けて自分は一度納屋から退出。
そして大きなトレーに三人分の暖かい食事(ドワーフ特製の朝から肉料理)を載せて彼らのところに戻ると、なるべく刺激しないようそっと前に差し出します。
「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」」
三人とも黙ってその皿を見つめ、そしてチラチラと自分のほうに視線が動く。
え、なに? これ許可求められてる?
「あの、お腹空いたでしょ? 食べていいですから」
そう言うと、彼らは恐る恐る皿とスプーンを取って震える手で一口つける。
途端、何かが弾けたように貪り始めました。
その間、涙と鼻水と共に嗚咽も混じり見ているこっちが心苦しい⋯⋯。
あの、なんか、ほんとごめんね?
ひとしきり並べたものを食べ終わると、今度は惚けたように視線が彷徨う。
緊張の系が切れて心も身体も完全に弛緩してますね。
「⋯⋯それで皆さん、何か喋る気になりました?」
恐る恐るそう聞くと、三人とも一矢乱れずな動きで土下座の構え。
地面に額をこれでもかと擦り付け、軽く震えながら声を合わせて言いました。
「「「なんでも喋りますから、命だけはお助けをッ!!」」」
その揃ったトリオ振りは清々しいものがありましたが、自分は己のしてしまったことに戦慄します。
やっぱり! 明らかに! やり過ぎた!
『青年はわかっているなぁ。厳しい拷問のあとに甲斐甲斐しいほどの介抱と温かな食事。飴と鞭の使い分け、これぞ尋問というものだよ。百点だ!!』
「だから嬉しくねぇですよ!!」
帰還すると思ったぁ? 残念拷問の後始末でしたぁ〜!
⋯⋯いやね? 本当は100話に合わせて竜人の里に帰る予定だったんですよ。でも思ったより話が伸びちゃって――。そしてグレイくん、無自覚ながら拷問の素質があるようです!やったねルルエさん!
⋯⋯じ、次回! 次回こそ帰還です!
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