第2話:the start
「な・・・なんだ!?」
いきなりのことで深く考えられない。
頭がついていかない。
でも体は何をするべきかわかっていた。
「モート!」
俺と同じように固まっていたコルダも走りだす。
ひたすら走った。
その先が日常に通じていると信じて。
俺たちが着いた頃には火は更に強くなっていた。
でもそんなことは関係ない。
俺は無我夢中で家を探した。
燃え盛る火の中に家はあった。
もう、すでに前の面影などなくなっていたが。
「おじさん!おばさん!」
家だったもののなかで二人を探す。
熱いだなんて言っていられない。
「おじさん!おばさん!」
もう一度呼ぶ。
怖くて怖くてたまらない。
また叫ぼうとしたとき、床に倒れている何かを見つけた。
「おじさん!」
おじさんはおばさんをかばうようにして倒れていた。
倒れているというより、眠っているように。とりあえず二人を外に連れていかなければならない。
俺は二人を担いで火から逃げた。
「モートっ!!」
コルダが泣きそうな顔で俺を迎えた。
俺は二人をゆっくりと下ろした。
「リビングに倒れていたんだ。おじさんがおばさんを守るようにしてた。もう、大丈夫だよ」
あそこはまだ火が回ってなかった。
助かったんだといきをつく。
彼女が震えていたのにだ。彼女は気付いたのだ。
「モート・・・燃え初めてからずいぶんと時間がたつわ。でも・家が全部燃えてなかったのはなぜ?」
何を言いだすかと思えば。
「そんなの家が出火場所じゃないからだろう?」
「じゃあ、なんでお父さんたちは逃げなかったの?気付かないわけ?」
何がいいたいんだ?
「火もまわってないのになんでかばったりしたのよ!どうして・・どうして!」
涙を流しながら叫ぶ。
「お父さんとお母さんの血が流れているのよっっっ!!」
その言葉にはっとしておじさんたちをみた。
服には赤くこびりついたものがある。
血。
ちょっとどころじゃない。
俺の服にもベッタリつくほどの・・・
「うわあぁぁあ!!」
こわい。
どうして。
どうしてこんなことに。
そんなとき。
赤しかない世界に一人の男が現れた。
「だ・・だれだ・・・」
男はわざとらしく笑った。
「こんなところにまだ人がいたんだ、びっくり」
顔は髪に隠れて見えないが声を聞く限り男というより少年に近いらしい。
「逃げた方がいいよ。死んじゃうから」
「なんだ、あんた・・・」
コルダは声を絞りだした。
「いやほら、話より先にここから逃げなきゃ」
「あたしの質問に答えてよ!あんたがお父さんたちを」
コルダの首筋に刀が突き付けられる。
「コルダっ!」
「僕は警告をしてるのだけれど、わからないのかな」
刀に少し力が入った。
苦しそうな声が聞こえる。
「僕は少し質問をしたいだけなんだ。ここら辺に魔族は住んでないかな。僕はそのためにきたのだけれど。・・・知らない?」
俺は首を横に振った。
彼はそうかそうかと笑った。
「じゃ、この子はもういらないね」
微笑みながら刀を振り上げた。
「・・・へぇ、なかなかの速さだね。人間にしちゃ上出来だ」
俺は血を流して倒れていた。
寸前のところでコルダと刀の間に入ったのだ。
コルダは無事のようだ。
よかった・・・
俺の体は痛んでしょうがないが。
「モート・・・」
今にも泣き出しそうに俺を見つめる。
やめろよ。
笑ってこそのコルダだろ?
「うーむ・・おもしろい」
奴は腕を組んで言った。
「うん、君のこと興味がわいてきたよ。この場では命はとらないでおこう」少しずつ声が遠くなっていく―
「こんどは魔王の前で。また遊ぼうね、モートくん」
声と同時に意識も遠退いた。
・・・・・
真っ暗だ。
俺は
・・・・・・・・
死んでしまったのか?
不思議と怖くない。
寒くもない。
・・・・・・?
なんだろう、向こうから聞こえる。
あの声は・・・
「「えぇぇぇぇ!!」」
うるさいなぁ。
俺もうるさいけど、コルダはもっとうるさいよ。
「だって最近不振者がうろついてるって、新聞に書いてあったのよ」
おば・・・さん
どうして・・
俺は夢を見ているのかな。
「だ、だからって」
文句を言うなよ、コルダ。
おばさん、困っているじゃないか。
「おおげさだとおもうけど。一緒に行けばいいんだね?」
目の前で俺が口を開く。
バカだ。
行かなければよかったのに。
俺が残れば、おばさんたちも・・・・
無理だな。
俺にはそんな力なんてない。
誰も助けれないまま、死んでいくんだ。
そう、このまま。
「コルダをよろしくね、モートくん」
!・・・無理だよ。
俺は死ぬんだ。
コルダを・・・守れない。
「すまんな、二人とも」
おじさん・・・
こっちこそ、ごめんね。
おじさんたちが助けてくれた命だったのに・・・
何のやくにもたてやしなくて。
「そんなことない」
おじさんが俺を見る。
どうして・・・
あの日の朝にこんなこと言ってなかった・・・
「あなたがいるだけで、私たちの世界は明るくなったの」
・・・・
「お前は生きるんだ。生きることに意味がある」
・・・・でも
「そしてあの子のそばにいてあげて。あの子の支えになってあげて」
「生きるんだ!誰より強く生きろ、モート!」
「・・・・ありがとう、おじさん、おばさん」
「モートっ!」
コル・・・ダ?
あぁ、戻って来たんだ。
まだ、生きてもいいんだ。
「モート・・・あたし・・あたし」
頭に衝撃がくる。
ぐわぁぁぁんと。
「いったぁ!ケガ人になにしやがんだ!」
「うるさいよ!・・・勝手にあたしをかばって・・ケガしやがって」
コルダは泣きだしていた。
「コルダ・・・」
「・・・モートも死んじゃうかと思った・・・」
俺もということはやはり、おじさんたちは・・
俺の意志を汲み取ったかのようにコルダは言った。
「もう、火が出たときには遅かったんだって。・・・・・あの時にはもう!」
「わかったよ、コルダ」
俺は震える肩に手を置いた。
俺もコルダも精神が不安定だ。
この話はむき出しの悲しみに強く響きすぎる。
「・・モートはこれからどうするきなの?」
「えっ?」
いきなり聞かれても困る質問だ。
住む家もない。
すべて燃えてしまった。
「・・・・・あたし、あたしね。あいつを探そうと思うの」
「!!・・・な、何を言いだすんだよ!殺されたいのか」
コルダは俺を睨み付ける。
「このままじゃ、あたしの気が済まないわ!モートは悔しくないの?!」
「悔しいさっ!でも」
「・・・あんたが止めてもあたしは行くよ。あいつを・・・あいつを!!」
やめろよ。
そんな目をするな。
悲しみや怒りを背負うのは―――
「待てよ。俺が・・・やる。俺があいつを殺すんだ!」
俺一人で充分だ。




