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noisy  作者: 明日RUN
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第10話:Don't forget

「トロ・・ア・・・」


その名を口に出せば、しばらく忘れかけていた憎しみが蘇る。

「あれ?君に名前を教えた記憶は無いんだけどなあ」

トロアは腕を組んで、不思議だと繰り返した。

「うーん。そうか!そういや君の仲間には情報屋がいたねぇ」

一人で納得したように頷いた。

「なるほど、なるほど。謎は全て解けたよ」

「お前・・・何故ここに・・?」

口の端をゆっくりとあげる。

だが、目は笑ってはいない。


「ここが夢の中、だからだよ」


その声が俺に届くのとほぼ同時に、奴は姿勢を低くし、突っ込んできた。

紅の刀を片手に。

「ッ!!」復讐に走る身体を何とか自制し、トロアの攻撃をギリギリで躱す。

「・・・夢の中ってのは、どういう、ことだ?」

心臓が体を震わせた。

呼吸が追い付かない。

「そのまんまの意味だよ?これは君の夢の世界。君の願いだ」

「俺の願いだと?」

俺にとっては復讐の増幅機にしかならない剣から、目を背ける。

「こんなものが、俺の願いなものか!」

「それは後でゆっくり考えればいいよ。でも今は」

風の音がしたかと思うと、トロアは俺の首に刀を突き付けた。

「遊ぼうよ。モートくん」



「あなたの友達って面白いね」

声変わりのしていない笑い声をあげる、羽根を生やした子供。

「望みを我慢したり、願いを捨てたり、一番強い願いが復讐だったり」

嬉しくは無さそうなのに、どこかを見つめて笑っている。

そして、その目は俺に向けられる。

「でも、一番面白いのは君、だよ。なのに」

再びふわりと浮かび上がると、俺の目をその小さな手で覆い隠す。

「ちっとも幸せそうじゃない。ずっと哀しそうな顔してる。幸せになりたいのになりたくない、そんな顔」

「黙れ。俺を理解したような言葉を吐くな」

「・・・それでも君より解ってるつもりだけどねぇ」

そんなこと知るか、と目を隠していた手を弾いた。

弾かれた手をゆっくりとおろすと、その子は言った。

「本当だよ。証拠を見せてあげよっか?君の友人たちに君の過去を見せることだって出来ちゃうんだよ。この森だったら」

・・・なんなんだ、この自信は。

もしかして、本当にそんなこと出来るのではないか。

そう思わせる。

「・・・・」

「うん。それでいいんだよ。静かに彼の夢の続き、待とうじゃないか」

そいつはまた俺ではない、誰かを見つめはじめた。




夢。

そういわれてみれば、トロアはこんなに遅くはないし、トロアに会って俺はこんなに冷静ではいられないだろう。

現実なら喚き散らしながら、敵に突っ込んでいるに違いない。

そして傷ひとつつけることもなく、地面に赤い水溜まりをつくって倒れているだろう。

そうこれは夢。戦う必要などまるで無いのだ。

さっさと夢から覚めて、コルダの手料理が食べたいと思う。


なのに、何故この夢が覚めない?

何故この身体は止まらない?

何故俺の心はこんなにも、大きく喜びの鐘をならすのだ。

どうして、どうして。

「どうしたんだい?モートくん。黙ってちゃつまんないよ?」

これだけ動き続けているのに、俺と違って息を乱していない。

「はは・・・こういうところ、正直なんだな、俺」

せっかくなら、あいつをレベル1に設定すれば良かったのに。

そうすれば、あいつを殺せたのに。

おじさんやおばさんの何倍もの赤を振りまいてやったのに。

「いいね。君を生かしておいて良かったって思えてきたよ」

自分だけの言葉でうめつくされていた脳に、他人の声が鳴り響く。

「は?」

「この状況でそんな風に笑っていられるだなんて、すごいじゃないか。そんなに僕を殺したかったのかい?」

反論しようと自分の顔に手をあてて気付いた。

俺が、笑っていたことを。

「ありゃ。気付いていなかったのかい?君って思ってたより、歪んでるなぁ」

「うるさい」

「おまけに心も弱いしね。そのおかげで僕はこんなにも長い間ここにいられるんだけど・・・でもね」

俺の首に狙いを付けながら素早い一振り。

突然の攻撃で、体勢を崩した俺にトロアが囁く。

「今すぐ帰りな。このままだと、本当の僕にあえなくらるよ」

「!」すぐさま声の発生場所へと肘をたたき込もうとするが、その攻撃は空を切った。

「しばらくすると君を呼ぶ声が聞こえる。その声に従って、歩けば夢の出口だ」

先ほどまで大人しく燃えていた火が集まり、炎となる。

炎はトロアを囲み、呑み込む―――

「待て!!!」

「モートくん。次に本物の僕と会うときは」

炎の隙間から人差し指が現れて、俺を差す。

「その小さな心、強くしておかないと、また大切なものなくしちゃうよ?」

あまりの熱風に目を閉じる。

次に開いたとき、火は消え去り、ただの深い森が広がっていた。




「へーえ。意外な終わり方だったな」

次に声が返ってきたのは、数十分後のことだった。

「?」

「いやね、君の友達の夢を見てたんだけど、願いが叶わないまま夢が閉じちゃったからめずらしいなぁと思ってね。本当に不思議な人たちだ」

何を言っているのか、解らなかったがひとつだけわかることがあった。

「みんなの夢が終わったんだな。じゃあ僕たちを帰してくれ。やらなくてはいけないことがあるんだ」

「・・・・・」

子供は口を閉ざしていたが、しばらくすると年に合わない渇いた笑い声を出した。

「・・僕たちか。気味悪い言葉だね」

「なんだと!?」

「君たちの旅は偽物のつくられた旅だというのに、君らはそいつを仲間と呼ぶのかい?ああ、本当に気持ちの悪いものだなあ」

目にあからさまな不満をうつしながら、馬鹿にしたように笑っている。

そして一通り笑ったあと、

「仕方ない。本当はやっちゃダメなんだけど、君たちがどんな行動をするのか見たいからなあ・・・」

俺はその発せられた声を理解することができなかった。

顔をはてなにする俺をほったらかして、その子は指をぱちんとならした。

それが合図だったのか、森は目覚め、ガタガタと動き出した。

次に止まったとき、森は3つの口を開けて、再び静まった。

3つの口からは落ち葉を踏む音が聞こえ、その姿を現すと同時に聞き覚えのある声を出した。

「あら、シフトさん」

「あ、シフト」

「よう、シフト」

そしてお互いに横から出てきた声に驚いた。

「なんだ、コルダも一緒かよ」

「なんだとは何よ」

「まあまあ、喧嘩しないでください」

会って早々喧嘩をするなと言いたいが、あまりにいつも通りなので、つい嬉しくなる。

「・・・僕に言葉はないのかなぁ」

しばらく黙っていた少年がぽつんといった。

「ん?シフト、誰だ、その子は。お前の子供か」

「さぁね。僕の子供じゃあないことはわかるけどね。何とも知的そうなお子さんで」

「ああ、まだ話してなかったね。僕はこの森の妖精さんだよ」


今さりげなくとてつもなくファンタジーな言葉が聞こえたような・・・

「妖精?」

「・・・あぁだから羽根生えてたんだー。納得ー」

俺もモートも呆れたような顔をしてたが、女子二人の反応は違った。

「すごい!妖精さんなんて本当にいるのね!」

「初めて見ました。可愛いな」

「はぅーかぁいいよぉ!!」

あっさりと理解出来ちゃうところがすごい。

適応早い・・・

てか、なんか今ひとり多くなかったか?

「女の子に褒められて悪い気はしないけど、話が進まないから、無視します」

自称妖精さんはこほんと咳払いをし、話を始めた。

「まず、えぇと今日はこの森に来てくれてありがとう。君たちの夢を見るのは楽しかった」

手をおろしてぺこりとお辞儀した。

「最初は軽い気持ちで見てたんだけど、大変なことが起こりそうだからね。特別に教えてあげるよ」

無邪気な笑顔で次の言葉を発した。



「この中に裏切り者がでるだろう」



「・・なんだと?」

「誰にとって、だとか何人とかはいわないけど。気を付けておくといい。良い奴だからだとか、一緒に過ごした年月が長いからとかも忘れた方がいいよ」

(年月・・・)

モートは横にいるコルダを横目で見た。

コルダも自分と同じように不安そうな顔をしている。

「・・・馬鹿馬鹿しい」

自然と口に出てびっくりした。

皆も驚き、俺を見る。

「いきなり出てきたお前の言葉など信じられるか。俺は自分で見たことしか信じられないんだ」

「・・モートくん。心の弱い君はそう思うしかないんだろうね」

「!」

こいつもトロアも・・・

どういうことなんだ。

心が弱いって・・・・

俺が何も言えないでいるのを確認して、妖精は続けた。

「君たちの旅は決して簡単なものではないし、君たちが思っている以上に大切な旅なんだ。それだけを覚えていてほしい。それとね・・・」

言葉を続けながら、再びぱちんと指を鳴らした。

暗かった森に光が射し込む。

その光は俺たちを包んで、キラキラと光った。



「………」



眩しさから解放されたと思い、目を開ければそこはもう森ではなかった。

妖精も、囲んでいた木々もなく、柔かな草に寝転がっていた。


・・・・

あの森が現実にあったのかはわからない。

しかし、まだここに来る前の妖精の言葉は耳に残っていた。

『忘れないで』

どういう意味だったのだろう。

この森を忘れるな、なのか

忠告を忘れるな、なのか

はたまた違う何かなのか・・・


俺にはそれが何だかわからなかったが

「忘れないよ」

そう言わずには、いられなかった。



気が付けば新年に。

気が付いたらモートたちと同い年になっていて涙が出ました。

シフトの歳になるまでにはこの話が終わっているといいなあ。

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