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noisy  作者: 明日RUN
10/12

第9話:a utopia

そろそろ皆の心の中を描きたいと思います。

森の奥には[立入禁止]とだけ記された、看板が立っていた。

その更に奥に草に隠れるようにして、洞窟は口を開けて待っていた。

中に入れば、視界は一気に暗くなり、ほんの少しだけ不安になる。

前にいる、コルダとシフトの足音を頼りにして、歩いていると、後ろから手が回ってきた。

マカナだ。

マカナは自分の頭を俺の背中に押しつけるようにして、抱きついた。

「マカ・・・?」

「ごめんなさい。ごめんなさい」

彼女は震えながら、謝った。

「後悔してるか?」

「えっ?」

「町を出てきたこと。マカには、母さんも大切だったんだろうが、ばあちゃんも大切な家族だったんだろう」

マカナが頷いたのが、暗闇でもわかった。

「でも、後悔はしてないよ。それほどにお母さんに逢いたいんです」

ぎゅっと服を掴む。

そして、頭を離した。

「ありがとう、モート。あなたは優しいんですね」

そう、添えて走っていった。


「あの子は・・・」

「何よ、イチャイチャしちゃって」

「うわっっ!!」

コルダが横に立っていた。

「お前、いつから!?」

「最初からよ。暗くて見えなかったんでしょ。あたしもよく見えなかったけど」

よかった。

見られてたら、何と言われるか。

「あんた、あの子のこと何でそんな気にかけるのよ?」

「・・・あの子、昔の誰かさんによく似てんだよな」

俺が少しずつ歩き始めるとコルダも歩き出した。

「誰かさん?」

「ああ、どっか無理してて、焦っていて、パンクしそうなんだよ。それを見ると、すっげぇ苦しくなる」

一度ゆっくりと目を閉じる。

暗さは変わらないが、《誰かさん》の顔が見える気がした。

「それでも、あいつは笑うんだ。無理やり笑顔繕って、大丈夫だって言うんだよ」

目を開いて、隣にいる《誰かさん》の頭に手をおいた。

「心配しないわけ、ないだろう?」




「!!」

「お、前見えてきたな」

モートがあたしの手を引っ張って、走った。

あたしもつられて走る。

「ぉぉ!!明るいな、もう夜が明けてたのか。見てみろよ、綺麗だぜ」

モートがあたしの方を向こうとしたのに慌てて、つい殴ってしまう。

「だっ!!何すんだ!」

「うるさい!バカ!!」

更にとどめとして目潰しをする。

「ぎゃあああ!」

本当にばかだ、こいつは。

こんな顔見せられないに決まっている。

あたしの顔は涙でいっぱいだったんだから。




「あー、いたいた。何してたんだよ。気が付いたら一人ぼっちで淋しかったじゃんよー」

「悪いな、今さっきまで猪に襲われてたんだ」

「猪ねぇ・・・誰のことかしら」

コルダがどこからかフライパンを取り出した。

半殺しにされるのは目に見えている。

(本当に喧嘩するほど仲が良いな)

俺はそれを眺めてた。

逃げ回るモートとそれを追い掛けるコルダとそれを眺める俺―――。

この図は俺らの生き方そのものだと思う。

そして、この図に入ってくる子がもう一人――・・・

「ちょっ、ちょっと!コルダさん!モートに暴力は止めてください!」

どこからか、マカナが止めに入った。

(マカナはこれが火に油を行為だと気付いているのかねぇ)

気付いていても、気付いていなくても問題だけど。

俺は3人の顔を見比べた。

今まで人がこんな顔するだなんて知らなかった。人がこんなに表情豊かだとは知らなかったな。

俺もこんな顔出来るんだな・・・。

・・・いやダメだ。

俺はここにいて笑っちゃいけない。

幸せなんて、感じちゃいけない。

「おーい!シフト、ぼけっとすんな。いくぞー」

顔に青あざ作ったモートがその名を呼ぶ。

「あ、ごめん」

その声に僕、は仲間の元へ戻っていった。




「ねがいのもり?」

俺はシフトが言ったことを繰り返した。

「そう、願いの森。この先にあるらしいんだ」

「へぇ、縁起の良さそうな森ね」

木の枝を拾いながら、コルダが呟いた。

それに対し、シフトが首を振って否定する。

「いや、実際は一度入ったら出られないらしいよ」

「じゃあ・・迷いの森ですね。よくRPGでありそうですね」

「なら、大丈夫ね。ボスを倒せば、道が開けるとかそんな感じでしょ」

「まだ、物語も序盤だし、全滅はないしね」

「待てー!!」

俺は声を張り上げた。

「んな、夢にもねぇこというな!!」

こいつらが肝が据わりすぎているだけなのか、俺が間違ってんのか・・・

余裕そうな3人を見ていて怒る気力も失せた。

「・・・まぁ、ともかく、まだ夜が明けたばかりで薄暗い。もうすこし明るくなるのを待とうぜ」

――

――――

――――――

明るくなるのを待とうと言って6時間ぐらいがたつ。

そろそろ正午だろう。

「不思議だわ」

コルダが真上を見上げている。

「だよね」

「同感です」

皆同じように空を見上げた。

「明るく、ならねぇな」

「雲も動いてませんよ」

・・・・・・・・・・

「おぉ、本当だね」

「動かないわねー」

雲も俺たちもお互い動かず見つめあっていた。


・・・更に5分くらいたった頃だろうか。

「さすがに笑えないな」

この不思議な現象は一体・・・

「あのさぁ、僕思うんだけど」

シフトが挙手した。

「もしかして、もう願いの森に入ってるんじゃない?」

「願いの森にはそんな力、あるんですか!?」

マカナは嬉しそうに振り向いた。

「あ、いや、もしかしたらと思ってさ。それ以外考えられない」

「じゃ、明るくなるのを待つ作戦失敗じゃない?もう入っちゃってんだし」

「それじゃあいこうぜ」

ふとマカナの方を見ると、マカナはとても哀しそうな目をしていた。

「マカ、どうしたんだ?」

下を向いていたマカナは、すぐさま顔を上げて、笑顔をつくって、大丈夫だよ、と手を振った。

俺はその笑顔が少し引っ掛かった。



森は進んでも進んでもその姿を変えなかった。

考え過ぎなのか、誰かに操られている気がして、体が震えた。

そして、それは考え過ぎではなかった。

「なんか嫌な感じ。本当に願いの森なの?」

確かに周りの景色を見て、誰が願いなどと言うだろう。

願いが叶うとは思えない。

「あ」

一番後ろにいたマカナがふと声を漏らした。

「?マカナ、何か見つけたのか?」

その言葉は聞こえていないようだった。

ひたすら、少し嬉しそうにある一点を見つめ、声を張り上げた。

「お母さん!!」

驚き、マカナの視線の先を見るが、もちろんそこには何もいない。

再びマカナに目を戻すとどこかに走っていく、紫色の後ろ姿があった。

「って、おいマカ!!」

もうその頃には紫は消えて、木々の緑しかなかった。

俺がどうしようかと迷っていると

「お父さん・・・お母さん・・・」

深い森に手を伸ばしているコルダの姿があった。

そしてその手を握りしめはしりだした。

「待って!行かないで!」

「コルダ!!」

コルダも森に飲み込まれてしまった。

「何なんだ、この森は・・・」

異常だ、と繋げようとした時だった。

「!?」

視界は炎で包まれた。

熱気がすごい。

汗がたれるのに、恐怖で俺の手は冷たいままだった。

「あれ?そこにいるのは?」

聞き覚えのある声に振り返れば

「久し振りだね、モートくん」

血で染まった剣を従える、トロアがいた。




「みんな、どこ行ったんだ?」

戻ってくるのを待っていたが、何も変わらずだった。

それでも心配はしていない。

だって僕の情報が間違っているはずないから。

「ありゃ。まだ夢に囚われていない子がいたんだ」

出て来たのは巨大蜘蛛でも毛むくじゃらの化け物でもなく、

「は?子供?」

羽根をはやした小さな男の子だった。


「ねぇ、君には夢・・願いはないの?」


「願い・・・」

「そう!あるでしょ!お金持ちになりたいとか。両想いになりたいとか」

子供は今の俺には必要のないものをあげた。

俺の変わらない表情を見て

「なんて、つまらない!実はあるんでしょ。隠しているだけでしょ」

そう不満そうに言うと羽根で浮かび、俺の頭に触った。

「ふむふむ、なるほど。そうか、好きな子はいないし、君の家はとても豊かだったんだね」

自分を見透かされているようで、気分が悪くなりその手を払った。

「・・でも家族はいなくなってしまったんだね・・・いや、お兄さんは生きているんだね」

「!!」

子供はゆっくりと目の前に降りた。

そして俺を見つめると、にやりと笑った。

「お兄さんを治してほしいのかい?」

妖精のようなその子は両手を広げて、微笑んだ。

「僕なら治してあげれるよ?」

「・・・俺の記憶をきちんと見たのか?俺はそんなこと望んじゃいない。今の俺に、夢などないよ」

「・・・・・やっぱり引っ掛からないかぁ」

頬を膨らませ、悔しがった。

「これなら願ってくれるかなって思ったのに」

「そんな不満しそうな顔したって気持ちは変わらない」

幸せなど必要ない。

それは俺にとっての偽りのない気持ち。

「君にとっての気持ちねぇ」

俺の考えていることが聞こえているかのように、子供は口を出した。

「君にとっての気持ちと言うけど、君は一体誰なんだい?」

「俺・・」


そんなこと、考えたくもない。




「マカナ・・・」

「お母さん!!」

記憶よりも随分と小さくなった、母の体を抱き締めた。

涙が、止まらない。

しっかりと顔が見たいのに、どうしてもぼやけてしまう。

お母さん、

お母さん、

お母さん・・・

ずっと会いたかった・・。

「ごめんなさい、マカナ。一人ぼっちは寂しかったよね」

心地よい母の声。

忘れかけていた母の思い出が溢れてきた。

「これからはずっと一緒。好きな洋服買ったり、ピクニックに出掛けたり・・・」

それは心から望むこと・・・

「ありがとう、お母さん。その言葉だけでもわたしは十分幸せ。でもね」

抱き合っていた母の体は砂のように消えていく。

「その続きは本当に逢えたときに聞かせてね。わたし、会いに行くから」

夢の母は嬉しそうに目をつぶった。

わたしは母の砂を包み込み、抱き締めた。





気が付けば、あたしはあの家のあたしの特等席に座っていた。

バランスの悪い椅子。

昔大事に持っていたぬいぐるみ。

落書きの跡がまだ残っている薄汚れた壁紙に、優しい檜の香のする、この家。

何もかもが大切な宝物。

今はどこにも無い宝物。

「コルダ・・・」

「お父さん、お母さん」

そして、失われた家族。


「どうして・・どうして死んじゃったの・・・まだあたし、子供だから・・親離れ出来ないよ。まだお母さんのように美味しい料理も作れないよ。まだお父さんのように誰かを支えることなんか出来ないよッ!」

久し振りに会った父と母にこんなことしか言えない自分が嫌だ。

もっと話したいことはあるのに・・・

「ねぇ、どうして」

声が言うことを聞いてはくれない。

「コルダ、すまないな」

「私達を許してね・・・」

「・・・許さないよ。残されたあたしの気持ちにもなってよ!」

あたしの、ウソつき。

本心ではそんなこと思っていない。

ただ、また会えたことを喜んでる。

「ごめんなさい。でも、またこの家で住みましょう」

「3人で仲良く住もう。もういなくならないよ」

3人・・・

あたしは零れそうになっている雫を堪えた。

「・・・皆、ウソつきね。一番の嘘はこの世界かしら」

夢。

分かってた。

それでも、甘えた。

あたしの願いはお父さんとお母さんが生き返ること。

でもあたしの幸せは

「家族『4人』で暮らすこと」

二度と叶わない、それがあたしの夢。

もう、前を見ても何もない。






自分はなんとも計画性のない奴でして、中途半端な場所から始まり、中途半端な場所で終わってしまいます。今日からの目標は計画です!!

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