死ぬ運命
人間は、本能的に自分と関係のない者の最期を見たがる。
公開処刑が良い例だね。
君だって好きだろう?そういうの。
…僕も好きだよ。汚い人間が死ぬ姿はいつ見ても滑稽だ。
…あぁごめんね。ただの冗談だから気にしないで。
むかしむかし、ある村に、健気な少年がいました。
少年は、毎日村の人達の手伝いをして、村の幸せを願っていた為、みんなからたいへん愛されていました。
ある子どもたちが寝静まった夜に、村にさすらいの占い師が現れました。占い師は、村をぐるぐる回って、一軒の家の前で泊まりました。
そして、家を指差してこう言いました。
「この家にすむ少年は100日後の日暮れに死ぬ。」
その家は、あの健気な少年の家でした。
それを聞いた村の大人たちは、占い師をこぞってたたきました。
「なんて不吉な事を言うんだ。この売女め。」
「それであの子が死んだらおまえのせいだ。」
占い師は、血だらけになって土に染みつきました。
次の日から、村の大人たちは、少年をいつでもみはるようになりました。
小さい子と遊ぶ時も、眠る時も見られていたので、おかしいと思った少年は、村の長に訊きました。
「どうしてあなたたちは僕をずっと見るのですか。」
村の長は、本当の事を言うわけにはいきませんでした。
「なに。みなはおまえをどんな敵からも守れるようにと、目を光らせているのさ。おまえが拐われたりして、いなくなるのは困るからな。」
「心配してくれてありがとうございます。それならば、僕は小さな子どもたちを守れるようにならなくては。」
何も知らない健気な少年は、かわいい笑顔を見せました。
占い師が告げた日まであと1日を過ぎた夜、村の大人たちは、元気な少年に違和感を持つようになりました。
「いつになったら、あいつは死ぬのだろう。」
「早く死んでくれないかなぁ。」
「あと1日だ。明日にはぽっくり死ぬだろう。」
それを聞いた村の長は、叫びました。
「病気になる気配もなく、元気に過ごしている。それのなんと喜ばしいことか。未来ある子どもの死を心の中で望むなど、恥を知れ。外道共め。」
村の長は、大人たちの心にはもう、少年がいかに死ぬ事の期待しかない事に気がつきました。
ついに、占い師が告げた日が来ました。少年は、いつものように村の人達の手伝いをしたり、子どもたちの世話をしたりして、変わりない日常を過ごしていました。
村の大人たちは、いよいよ焦りました。どのように死ぬのか。それを我先に見届けなくては。
やがて日が沈んで、少年が家に戻ろうとした時、村の大人たちは、血の付いたスコップやくわを持って
少年を殴りました。
「日が暮れたというのに、なぜおまえは死なないんだ。」
「あぁ、おまえが奇妙で仕方ない。」
「早く死んでしまえ。」
大人たちは、泣きながらも静かに痛みに耐える少年を、それでも殴り続けました。
次の日の朝が来て、大人たちが殴るのをやめると、そこにあったのは、かわいそうな少年の死体でした。
少年は、予言通り100日後に死んだのです。
100日後に死ぬワニが完結する(?)ということなので、抗えない死を元に書きました。
問題があれば即抹消しますのでお伝えください。