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現世草子  作者: 弓越イオ
7/10

死ぬ運命

人間は、本能的に自分と関係のない者の最期を見たがる。


公開処刑が良い例だね。



君だって好きだろう?そういうの。


…僕も好きだよ。汚い人間が死ぬ姿はいつ見ても滑稽だ。


…あぁごめんね。ただの冗談だから気にしないで。

むかしむかし、ある村に、健気な少年がいました。

少年は、毎日村の人達の手伝いをして、村の幸せを願っていた為、みんなからたいへん愛されていました。


ある子どもたちが寝静まった夜に、村にさすらいの占い師が現れました。占い師は、村をぐるぐる回って、一軒の家の前で泊まりました。

そして、家を指差してこう言いました。


「この家にすむ少年は100日後の日暮れに死ぬ。」


その家は、あの健気な少年の家でした。


それを聞いた村の大人たちは、占い師をこぞってたたきました。

「なんて不吉な事を言うんだ。この売女め。」

「それであの子が死んだらおまえのせいだ。」

占い師は、血だらけになって土に染みつきました。



次の日から、村の大人たちは、少年をいつでもみはるようになりました。

小さい子と遊ぶ時も、眠る時も見られていたので、おかしいと思った少年は、村の長に訊きました。

「どうしてあなたたちは僕をずっと見るのですか。」

村の長は、本当の事を言うわけにはいきませんでした。

「なに。みなはおまえをどんな敵からも守れるようにと、目を光らせているのさ。おまえが拐われたりして、いなくなるのは困るからな。」

「心配してくれてありがとうございます。それならば、僕は小さな子どもたちを守れるようにならなくては。」

何も知らない健気な少年は、かわいい笑顔を見せました。


占い師が告げた日まであと1日を過ぎた夜、村の大人たちは、元気な少年に違和感を持つようになりました。

「いつになったら、あいつは死ぬのだろう。」

「早く死んでくれないかなぁ。」

「あと1日だ。明日にはぽっくり死ぬだろう。」

それを聞いた村の長は、叫びました。

「病気になる気配もなく、元気に過ごしている。それのなんと喜ばしいことか。未来ある子どもの死を心の中で望むなど、恥を知れ。外道共め。」

村の長は、大人たちの心にはもう、少年がいかに死ぬ事の期待しかない事に気がつきました。


ついに、占い師が告げた日が来ました。少年は、いつものように村の人達の手伝いをしたり、子どもたちの世話をしたりして、変わりない日常を過ごしていました。

村の大人たちは、いよいよ焦りました。どのように死ぬのか。それを我先に見届けなくては。


やがて日が沈んで、少年が家に戻ろうとした時、村の大人たちは、血の付いたスコップやくわを持って

少年を殴りました。

「日が暮れたというのに、なぜおまえは死なないんだ。」

「あぁ、おまえが奇妙で仕方ない。」

「早く死んでしまえ。」

大人たちは、泣きながらも静かに痛みに耐える少年を、それでも殴り続けました。


次の日の朝が来て、大人たちが殴るのをやめると、そこにあったのは、かわいそうな少年の死体でした。


少年は、予言通り100日後に死んだのです。

100日後に死ぬワニが完結する(?)ということなので、抗えない死を元に書きました。

問題があれば即抹消しますのでお伝えください。

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