クリステル=アディール 4
「失礼する。もう、授業は終わったかな?」
教室内がざわめいた。教室にはいってきたのは、金髪に青い目をしたウェールズ=エメラルダ、この国の第一王子だった。
「クリス…少し話をしたいんだけど、いま大丈夫かい?」
「ウェールズ殿下、婚約の件でしたら私からはもう話すことはございません。」
クリステルは、帰宅準備をしようと鞄を出した。そこをつかさず殿下は鞄を掴んだクリステルの手を自分の手に重ねた。
「いいから、来るんだ。」
クリステルは、殿下に教室から連れて行かれた。
☆★☆
空き教室に入ったとたんに、殿下は防音魔法を施した。
「クリス、本当のことを話してくれないか?ナターシャとは合意の上で婚約を解消したんだ。クリスだって、僕のことを好いてくれていたじゃないか。婚約を解消したとたんに、僕を避け始めるなんて……」
「それは…殿下の勘違いです。」
微かに胸の奥で、確かにあった殿下への思い。小さい頃から兄のように思っていた、私だけの王子様は、いつからかほのかな恋心を持つようになっていた。でも、それは前世を思い出す前の私。
「殿下。姉は殿下のことをまだ好いていらっしゃいます。そのような状態で殿下と婚約などできません。以前の私のことについては、忘れてください。」
「クリス、僕は君が好きだ。過去も未来も全部。いざとなったら王命をだす。覚悟しておいてくれ。」
「…!!」
殿下は、クリステルの手をとり、口づけた。