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4話 会議は会議場で会議です


 世界平和管理特務課、日本支部。月に一度定例会議が行われる。各部門の主任が集まる会議だ。

 集まる場所は東京タワー……の、地下。そこで行われるのには理由があるらしいが、聞いても誰も教えてくれなかった。


 どうして聞いたかというと、その会議に今回同行するのが俺だからだ。

 東京タワーまではそう遠くない。距離的に歩いても行けるが、タクシーを使う主任。に、同行者として俺も同乗した。

 直ぐに東京タワーに着いた。そうだよな、ワンメーターで着くわな。

 タクシーから降りた主任に続き、俺も後について行く。タワー内部に入ってから数分、違和感を感じた。それを主任に話そうかと思った時、主任が後ろを振り向き俺を見た。


「重は俺の後ろでただ突っ立ているだけだ。口を、開くんじゃねえぞ」


「え……」


 それは今からなのか、会議中の事なのか。只の同行者な俺では分からず、主任に聞き返そうとして止めた。どうやら、ここのエレベーターも横移動の様です。今口を開いたら、キモイとしか出ない。主任にそんなことを言ったら……間違いなく死ぬ。横に移動した後、下へ下へと移動していくエレベーター。胃のむかつきが収まった頃に、エレベーターの移動は止まった。


 ――チン


 そんな普通の音と共に、エレベーターのドアは開いた。一瞬眩しさを感じて薄目になったが、主任が出て行くから慌てて俺もエレベーターから降りた。


「うっわ、うっわ」


 俺と同じく、主任と思わしき人と同行者。二人一組にはなっていそうだけど、凄い人の多さに声が出てしまった。東京タワーの地下に、こんなに広い場所がある事も知らなかった。

 床も壁もコンクリートの様に見える。扉が開いたらそこは……的な事を想像していただけに、普通な感じが逆に違和感を感じさせている様な気もする。

 ただの広い空間に、沢山の人がいる。特務課(異世界)なのに、普通過ぎる。


「ボケっとしてんじゃねえ。迷子になっても探さねえからな」


 コクコクと激しく頷いた。口を開くなと言われているので、何も話さずにだ。密かに主任のパーカーの裾を掴んだ。人の多さに、迷子になったら最後な気がしてきたから。

 因みに、今日の主任は小さくなっていない。大人の姿だ。小さな主任も、可愛いと言えば可愛いんだけども。


「おやおや、久しいでありんすねぇ。柳田主任」


「月一であってんだろが。時田(ときた)主任」


「先月も小さい姿でありんした。ふふ、大人の柳田主任は……三ヵ月振りでありんすよ?」


「あ? それがどうしたってんだ。俺は俺だ。どっちも変わんねえ」


「ふふふ、そうでありんすねぇ」


 何だこの会話は! 主任と良い感じの女性とか、俺初めて見た! 

 誰なんだこのありんすさんは。和服にパーカーだけど、間違ってないかそれ。和服……だよなぁ? 裾が短くないか? 

 化粧もしているし、爪も綺麗だ。女子力はありそうだが。柳田主任と良い仲なのか?

 柳田主任なんて、直ぐ殴るし、口調は悪いし、力の反動で小さくなっちゃうのに。俺が知らないだけで、意外とモテモテなのか⁉


「そこのお前、良からぬことを考えていないか?」


「やめんなし。わっちが話しかけたんでありんす。その同行者は……」


「おい! 聞いているのか!」


「お?」


 柳田主任とありんすさんの関係を考えていたら、胸倉を掴まれたらしく目の前に知らない顔があった。

 一瞬の思考の後、俺が絡まれているという状況は理解した。

 柳田主任をチラッと見たら、にやにやと笑っていたので、自分でどうにかしろという事なんだろうと思った。


「どこを見ている! 馬鹿にしているのかっ⁉」


「可愛い顔なのに、言葉使いは予想外」


「な⁉」


 掴まれていた腕は、片手で簡単に振り解けた。ありんすさんもこの絡んできた人も、女性だ。

 女性を守るのが男。っていうのは、特務課では当てはまらない。女性でも英雄はいるからなぁ。なんで絡んできたのか分からないけど、ここは落ち着いて貰ってから、話をした方がいいんじゃないかな。

 絡んできた子は俯いている。周りがざわついていた。あれ、この感じだと俺、悪者?

 周りの女性や男達の表情を確認したら、またかという表情をしていた。こんな感じが会議の日には起こりやすいんだろうな。人も多ければ、不仲な人にも会うだろうし。って、俺は初対面な筈なんだけど!

 取り敢えず、俺に絡んできた子に声をかけよう。少しだけ近くに行ったけど、俯いたままだから隣には行けそうにない。


「あのー……大丈夫?」


「ここでそれは駄目でありんす!」


「お?」


 俯いていた子はブツブツと何か呟いていたけど。ありんすさんが扇を出して何やら力を使う様だ。何がしたいのか分からないから、動向を見守った。ただその場に立ったままで。

 そう言えば、主任はどこに行ったんだろうか?


「結界の波動」

「爆炎の舞」


 どっちの声が早かったのかは分からないが、俺の視界は突然真っ赤になった。周りからは「うわ!」とか「危ないじゃないか!」とかの声が聞こえるけど。俺の視界は真っ赤なままだった。

 程なくして、視界から赤い色は消えて行った。視界がクリアになり、何かあったのかと思った俺は声を出した。


「あのー?」


『っ⁉』


 周りの人も、絡んできた人もありんすさんも、何故か皆が息を飲んだのが分かった。

 何なんだ一体、俺が何かしたのか⁉ いや、ただここに立っていただけなんだが。


「ん? なんだここの黒い跡は」


 俺の周りに、焦げた様な黒い跡があった。さっきは無かったと思うんだけど……あぁ、なるほど。俺、攻撃されたんだな。特別な力の方で。

 ありんすさんは俺に絡んできた子を抱きしめている。抱きしめられている子は、唖然とした表情をしながら俺を見ているが――


「俺、どうしたらいいんですかね?」


「どうしたも何も……お、お前! 主任の結界があったから命拾いをしたんだ! 主任に感謝――もが、ううー!」


「わっちはその子に結界は張ってないでありんす……周りに、結界を張っただけでありんすよ」


 再び絡んできた子の口を押えたありんすさんは、困惑しながらもそう説明しだした。その言葉を聞いたその子は、ピタリと動かなくなった。そっかー。俺の力の事を知っていたら結界も効かない事くらい分かるか。ありんすさん主任らしいから、俺の力も知ってるよな。


「まぁ……んなことだろうと思ったが。重にその力は通用しねえ。時田主任の結界も、な」



 俺のすぐ後ろで、主任の声が聞こえた。驚いた俺は直ぐに後ろを振り向いた。そうだった、俺、柳田主任の裾掴んだままだったわ。裾を掴まれていたから、柳田主任は逃げる事が出来なかった様だが……


「柳田主任、何処に居たんですか?」


(かさね)の真後ろ。お前の力な……触れている奴にも効果あんぞ。すげえな」


 俺を盾にした様だけど、俺が裾を掴んでいたから主任も無傷で済んだらしい。ぽそっと俺の力を褒める様に言ってくれた。俺の無効化は、衣服も勿論、俺が触れている人にも効果があることが分かった。効果があって良かった、じゃなければ柳田主任は大怪我をしていたかもしれない。その事に気が付いてホッとしたのと同時に、言葉が漏れた。


「無事で良かった……」


「おう」


 ニヤリと口元を歪めた主任に、軽く頭を叩かれた。主任に怪我をさせたとかになったら、皆に殺されるから。本当に良かった。

 スッと俺の前に出た主任は、ありんすさんを真っ直ぐに見た。


「時田主任。部下を使ってな、俺んとこの新人を……殺そうとしねぇでくんねぇか?」


「な、なんのことでありんすか? わっちはただ」


 うおい! 俺殺されそうだったのかよ⁉ 

 ありんすさんは時田主任っていうのか。分かり易いくらいの動揺をみせているんだけど、そんなんで大丈夫なのかこの人。


「結界を重には使わなかったって言ったよな。重が死んでも良いと思わなきゃ、できねぇだろ」


「そ、それは、その子には通用しないと、わっちは知っていたからで――」


「知るわけがねえんだよ。重の話はな、今日この後の会議で初めてどんな人物か、どんな異能なのか話すんだからよ……召喚部門以外の者が、知ってちゃいけない事だ」


「‼」


 そうだったのか! 当事者の俺も今知ったんだけど。っていうか、俺の力を知らないで力を使ったのか。視界が真っ赤になったけど、どんな力だおい。


 ――そこまで。食品部門の時田主任には、後で個別にお話を聞かせて頂きます。


 ――今から三十二秒後に、会議の間を転送します。転送後は決められた席にご着席ください。


 ――カウント、開始します。


「主任、この声は何処から……」


「口、開くんじゃねえ」


 何処からか聞こえて来た声は、地下全体に響き渡っていた。誰の声なのか気になったが、主任から口を開くなと言われてしまった。そう言われたのはこれで二回目なので、今度こそ開かない様に気をつけることにした。

 別に一回目も、俺のせいで喋る事になった訳じゃないと思うんだけども。

 それと、あのありんす時田主任は食品部門だったのか。もっとこう……異能って言うんだっけ? チートな力を活用した部門かと思ったのに。食品部門で結界とか……あ、パッケージに分ける時とかは使えそう。小分けの結界があるのならだけど。


 ――転送が終了しました。


「!」


 その声が聞こえたと思ったら、何時の間にか会議場にいた。会議室じゃない、会議室よりも遥かに広さがあった。中央に議長とか居そう。全体的に見ると、その中央が三百六十度に囲まれている会場。会議場と呼ぶ方がしっくりきた。あの転送しますといっていた声は、会議の間とか言っていたな。会議場って言葉、使ってもいいよ?


「行くぞ。三ーBのナの列の、五十一番が席だ」


「……」


 頷いたけど、どんだけ席があるんだよ。映画館かよ!

 それだけ人も多いって事だと思うが。俺は大人しく主任にくっついて歩いた。

 会議の間に来る前に色々とあったせいか、心なしか疲労感を感じた。普段任務ではこんな風に疲れないのに。

 そんなことを考えていたら、主任の足が止まった。主任の横から顔を出した俺は、番号を確認した。ナの五十一番と札があった。そこの席に主任が座ったので、俺はその後ろに立った。

 席は円形の机で、黒い椅子はソファーっぽい。隣とは結構距離はある。俺が立つスペースも広い。ここで月一の会議をしているのかぁ。始めて来たもんだから、周りをキョロキョロと見るので忙しい。喋れないし、どんな人がいるのかを見て楽しもう。


「重。動くんじゃねえ」


「!」


 後ろも見ていない主任に注意されてしまった! 

 見ていないのに主任なら「気配で分かる」とか言いそう。小さくない主任は、主任って感じがして怖い。いや、小さい主任の方も怖いのは変わらないか……


 各部門の主任が席に座ったんだろう。中心となっている場所の、下から上へとモニター画面が出て来た。三百六十度、どこからでも見れるような作りになっていそうだ。

 そのモニター画面、特の文字をまるで囲んである、特務課のマークが回転している映像が付いていた。それを見た俺は、ちょっと笑った。

 ブォンっという音がして、そのモニターに一人の人が映った。それに声も会議場全体に響いた。


 ――これより、特務課の会議を行います。

 ――特務課総代表、課長、渡辺わたなべ あつしから始めてください。


「アルカディア部門とユートピア部門、主任の変更がありましたので、そこからお伝え致します。アルカディアの――」


 あの話をしている人が、この日本支部のトップって事か。トップの役職、課長だったんだな。初めて知った。まだ若そうにも見えるけど、五十歳は超えているんだろうな。

 柳田主任を見たら、モニターではなく手元にある資料が入っているんであろう端末を見ていた。

 特に問題がないのか、次々と報告をしていく各担当者達。もう、多すぎるから俺も話は聞いていない。魔法部門で桜さんの話が出て来た時は、流石に耳が音を拾ったけど。知っている名前にしか反応しない俺の耳、知り合いは少ないから、殆どの音を拾う事は無い。


 どのくらいの時間が経ったのだろう?

 ただ立ったままなのは飽きたので、踵を上げてつま先立ちで脹脛ふくらはぎを鍛えていた。


 そんな唯意義な時間を過ごしていた俺の耳が、召喚部門柳田主任という言葉を拾った。

 立ち上がり話し出した主任、そしてモニター画面には主任の姿が映っていた。

 おおー、すげえ! と感動していたら、次の瞬間にはそのモニター画面に俺が映った。


「!」


「彼が召喚部門の新人、九条くじょう かさねだ。一年前の勇者召喚からの帰還者だ。一時期は特務課への就職をどうしようか悩んでいた様だが、三ヵ月の研修期間を終え、正式に特務課に入ったんで、よろしくな。因みに、重の異能は……無効化だ。どんな異能も効かないんで、気を付けた方がいい」


 色々と主任が話しているんだけど、自分が画面に映った瞬間にワタワタとしてしまった。

 バッチリと慌てている自分が映っていたのを、見た。さっき話していた紹介がこんな風に紹介されるとは思わなかった。特務課には慣れて来たが、この会議の人の多さには慣れることはないと思った。


 主任の召喚部門からは以上だ。という言葉で、モニター画面には別の人が映し出された。

 ホッとした。これで今日俺が来た事の役目が終わった気がして、何だか肩の荷が下りた様な気になってしまった。


 会議はそのまま続き、体感時間で言うと三時間位経った頃に解放された。


「お疲れ。帰んぞ」


「あ~疲れた……」


 ――会議の間を戻します。そのままその場で待機してください。


 会議場に響いた声は、来た時と同じようにカウントを始めた。立ち上がった柳田主任と並んで、その場で待機した。毎月こんな感じで会議が行われるのか、正直もう来たくない。そんな事を考えていたら、会場内が真っ暗になった。

 咄嗟に柳田主任のパーカーを掴んだ。掴んだ瞬間に、明るくなったが。


「戻った……」


「お前、ビビりだよな」


「そうですよ? 死にたくないですから」


「死にそうにない奴ほど、そう言う」


「何言ってるんですか。俺の力じゃ、特別な力をただ無効化するだけなんですから。死にますよ普通に」


「そうかぁ? 殴っても死なないんだ。そうそう死にはしねえだろ」


「ひでぇ……」


 柳田主任が歩き出したから、俺は来た時と同じく後ろをついて歩いた。口を開いても良さそうなので、会話をしているけれど。言われる言葉は酷いもんだ。

 特別な力、俺で言うとチート能力。特務課で言う所の異能。そんな普通にはない力しか無効化できないんだから、死にやすいほうだ。何かあった時、俺は真っ先に死ぬ気がしてならない。

 例えば交通事故。主任の様な力があれば、生き残る可能性もある気がするが、俺の場合は轢かれたら終わりじゃないか。それこそ、瞬間移動でもあればなぁ。

 不意に横に移動しているのを体に感じ、あぁ、またエレベーターに乗ったんだと分かった。


「地面と離れたくない」


「グチグチとうっせぇな。言い忘れていたんだが、食品部門とは……仲が悪い。今更だが、近くには行かない事だ」


「本当に、今更ですね。絡まれた後に言われても。でも、どうして仲が悪いんですか?」


「奏多がな、食品部門で開発した新しい菓子を食い過ぎて……から、旨くないと言いやがった。あそこの主任、あー、時田主任なんだが。菓子に人生をかけている人でな、散々食ってから旨くないとか言わたもんで、そりゃあカンカンに怒ってだな……」


 そう話しながらエレベーターを降りた。視界に時計が見えたので時間を確認したら、地下に入ってから五時間経っていた。そんな馬鹿な、と思ってもう一度見たけど、やっぱり五時間も経っていた。

 初めてな事が多かったからなのか? そんな時間が過ぎていたと感じなかった。

 東京タワーに来ている人は殆どいなかった。一般人ではなさそうな、パーカーを着ている人の方が多そうだ。チラッと外にいる人を見たら、パーカーを脱いでいる人も多かった。

 俺は脱がないし、柳田主任も脱いでいない。


「奏多先輩の事で、どうして俺を殺そうと迄……」


「その時に居た召喚部門の全員に、まずい菓子を作っている人と言われてな。召喚部門全員が敵に見えるんだろう。ま、お前は大丈夫だろ」


「どこが大丈夫なんですか。そんな怨恨があるなんて知らない俺は、危うく死ぬ所じゃなかったですか!」


「お前は死なねぇ。食品部門の奴らは、異能が無ければ一般人と変わんねえから」


「チート頼り?」


「そう言うこった」


 そんな部門もあるんだなぁ。チートな力を使わなければ普通の人と変わらないのなら、確かに俺が死ぬことは無さそうだ。

 

「力があってもな……それに頼りっぱなしだと、ここでは弱者になっちまう」


 そう言った柳田主任は、迷うことなくタクシーに乗った。

 すぐそこの距離でタクシーを使う主任。弱者じゃないからそこを突っ込めないのが残念だ。やれやれだぜ……


「重。お前は走れ」


「へっ?」


 俺も乗ろうとしたら、タクシーのドアを閉めた主任にそう言われた。

 確かに近くだけど、俺、置いて行かれるの?


「頑張れ、若者」


「えー……」


 そう言葉を残して、主任を乗せたタクシーは走り出した。肩を落とした俺だが、走るのは嫌いじゃないから、そう言われたら走って会社に帰るしかない。

 んじゃ、走りますか。


「ん? 何だこれ」


 走ろうと思った瞬間、視界が真っ暗になった。

 いつの間にか夜中に! っていう事ではなさそうだが。何なんだ今日は、攻撃されるデーなのか? これもきっと誰かのチートな力だろー……


「本当に無効化するんだ……」


 そんな声が聞こえた。声のする方を向いたら、学生服を着た子達が居た。

 学生服の上にパーカーを着ている。よく見た事のある、黒いパーカーだ。


「何なの君たちは」


「おじさんさー。しょぼい力で可哀想。とか思ったんだけど、結構便利そうじゃん」


「まだ二十歳なんだけど。二十歳っておじさんなのか、初耳」


「見た感じがおじさんだから、いいんじゃね」


 学生服を着ている時は、若い気がするもんな。見るからに学生だと主張している、学生服。無敵の装備に感じなくもない。何しても許される、なんて勘違いをしないことも無い。

 もう一人の子もケラケラと笑いながら、何かの力を発動したらしい。俺の視界に紫色を感じたけど、どんな力なのかさえ分からなかった。何も感じないから、何かされているとも思えないし。


「ねー。いいんじゃね」


「ふーん、ほい」


「え、ぐっ!」


 良く分からないけど、イラっとしたからデコピンをした。ちょっと走って学生君たちの側に行ったのに。デコピンするまで気が付かないなんて、気が緩んでんじゃないか?


「おいおい、瞬間移動もしたじゃん。無効化だけなんじゃないのかー?」


「ぶふ!」


 ただ走っただけなのに、この学生君たちにはそう見えたのか。余りにとんでもない事を言うんだから、おじさん笑っちゃったじゃないか。

 そっかそっか。見えないんだったら、無視して走って帰ろう。


「んじゃ、早く帰るんだぞー」


「⁉ 消え……た?」


 ただ走り去っただけなんだけど、俺、そんなに早くは走ってない!

 あの子達……面白い反応をしてくれて、ありがとう!

 頭が悪そうとか思っちゃって、ごめん。でも、正直馬鹿っぽかった。嫌いじゃないんだけどな。時間があったら、俺も乗ったんだけど。

 「秘儀、瞬間移動」とか、言いながら走ったのに。今度会ったら、やってみよう。あの子達なら乗ってくれるかもしれない。特務課のどこかの部門に居るのなら、また会えるだろう。


 今日は……ん、今日も楽しい仕事だった!


読んで頂き、ありがとうございます。

明日26日に更新は無いです。この次の更新は、早ければ27の日曜日になります。

お待ち頂けると嬉しいです^^


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