表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫は愚者だが、領主は平和を望む  作者: LAST STAR
リテーレ領とゲレーダ領
38/44

第38話 準備万端!

夜が深まり、ゲレーダ戦線は所々でパチパチと焚き火が燃える音だけが広がり続けていた。


「ああ……しかし、寒いな……」

「ええ。この感じ……明日の朝方は濃い霧が出るかもしれませんね」


そんな会話をしながら、装備を整え、マレルたち隠者の一個小隊とともにミレットと合流を図るべく、コミラートで情報を得ながら前進していた。


「ミレット。今のところ動きはどうだ?」

「うーん……なんかこの感じだと朝方に攻めてこようとしているような気がするけどなぁ……そっちは今、どのあたり?」

「あともう少しだ」


渓谷の小高い丘の左右、そして少し離れた地点に通路を塞ぐ形で部隊は展開して待機していた。最前線のはずなんだが、なんだろう……この和やかな陣は――。


「タツヤ! もう飯は食ったか?」

「あ? ああ……まだだな」

「んじゃあ、最高に不味いレーション食わせてやるよ。な? 皆?」


部隊の連中が苦笑いしている。さすが、ミレット。完全に部隊を掌握している。

この緊張感が高い中でここまで和やかだと戦場ではないのかと疑ってしまう。


俺の前に出されたのは肉とご飯の炒め物なのだったのだが、脂っこく酷く塩辛い。


「確かに、こりゃあ……不味いな……」

「だろ……? 軍事研究という名目で意味無い武器作るくらいなら食料を改良して欲しぃぃ……!」


付近で飯を食っている兵士達はウンウンとうなづいている。


「さぁ、飯食って寝る奴は寝て、仕事する奴らは仕事するぞ~時間ねぇーからな!」


周囲からは「へ~い」みたいな声が聞こえ、各々、動き出した。


「何というか、ミレット様の隊は独特ですね」


マレルは半ばジト目で眺めている。


「まぁ、アレはアレでいいと思うけどな? ミレットそのものみたいで」

「そうですね。では、私達はこれで」

「ああ。マレル、危険な任務だが、頼む。無理はするなよ?」

「はい」


そう言うとマレルは周囲に居た隠者部隊を掌握し、さらに前進していった。

マレルたち隠者に課せられた作戦は2つ。


・ゲレーダ領レジスタンスが狙う拠点の戦力評価。実行に移す際の拠点制圧。

・ゲレーダ軍の偵察。進軍が認められれば、ヒットアンドウェイで兵を減らし、可能ならば予備の弓矢などが載っている馬車を破壊すること。


……という中身がなかなかに濃い作戦だ。

かなり危険と隣り合わせの任務だけあって、マレルには無理はしないように告げてはある。しかし、レジスタンスが武器を手に取れば確実に局面をひっくり返すことが出来る。


「(頼むぞ……マレル)」


心の中でマレルの無事と作戦の成功を祈り、その背中を見えなくなるまで見つめ続けた。その頃、後方ではリテーレ軍の後詰部隊が各ポイントで柵と大量の水を運搬していた。おそらく、多くの兵士はなんでこんなに沢山の柵と水を持たされているのか分からないだろう。


それが策の切り札になるとも知らずに――――。


そして、遂に朝が刻々と迫ってきた。

いよいよ開戦の時が秒読みになって来たと悟りはじめた頃、コミラートから吉報が届く。もちろん相手はマレルだ。


「ゲレーダ領南西の砦、制圧完了。こちらとレジスタンスのダメージはゼロ。敵戦力は僅か20名程度でした。どうやら、皇女は本気のようです」

「了解。指示あるまで待機しててくれ」


これは更なるアドバンテージだ。ちなみに、この情報は俺とマレル直通のコミラートだ。故に情報がもれることが無い。


そして、続いてある情報がサミラルからもたらされた。

それは密偵の確保に成功したという情報だ。


今回の作戦において秘匿し続けた荷車の中身を探ろうとした者を捉えたのだという。十中八九、リテーレ軍内部に潜んでいたゲレーダ領の密偵だろう。


「そいつが何者でどこの手の者か確実にはかせろ。多少、手荒でも構わない」

「承知しました」


少しずつ、少しずつゲレーダの勝機を潰していく。

そうすれば勝機はこちらに傾く。


「(よし、コレなら……この調子なら勝てる)」


そう俺は核心をもってそう思っていた。相手は強大な軍事力を持つ領土だ。

だが、それ以前にゲレーダの領主は暴君であり、自分の意図通りにならなければ怒り出す典型的な狂った独裁者だ。


そんな奴が自分の思い通りにならなかったらどうするか――目に見えている。

策を労さず、物量で兵の数にモノを言わせて勝負してくるはずだ。

そうなればこちらのものだ。


「(来るならば来い。ゲレーダの暴君。お前に地獄を見せてやる)」


俺は濃くなり始める霧をみながら、そう思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ