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Experience  作者: 皐月悠
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【10】


 【10】


 仕事に対して、『器用だ』とは言えない。

時間が少し多くかかったとしても、回数で慣れるしかない。一回通してみて、分からないところやぬけている部分が分かって、その部分をもう一回さらってみて、また一回流れを通してみて・・・という風に、何回も読むためには、何回も読むための素材が必要で、なかったら、ま、作ればいいと思う。

 教える事は、後輩に仕事を教えるという意味も含めると、仕事にも必要な項目だったという事が気づく。そして、やりがいは自分で作り出す事ができて、私の場合はあるのとないのとでは、だいぶ気持ちが違うと事に気づく事ができた。

 まだまだ、慣れない部分もあるけど、続けていくことができそうだ。そのきっかけをくれた瑠奈には感謝している。

 

 「え、これ、私に?」

 「そう、気になっていたでしょ?」

 前回、見ていたビーズのアクセサリーが入った透明な袋を、いつもの喫茶店で渡す。気になってギャラリーに問い合わせをしてみたところ、まだ売約にはなっていなかったので購入する事ができ、展示期間も終了したので、先日、取りに行っていた。

 「そうだけど、買ってくれていたんだ」

 「いろいろお世話になったから」

 「あり、がとう」

 「こちらこそ、どういたしまして。瑠奈がいなかったから、教える事も、やりがいに気づくきっかけも、後、その他いろいろ気づく事ができなかったから。感謝の気持ちです」

 笑顔でそう伝えると、瑠奈は紅茶を一口飲む。

 まだ私は、教えるという事に関しては、少しかじった程度だ。それでも、自分の中で知識と経験を咀嚼して理解した言葉で伝える事が、教えるという事の意味なのだと理解はしているつもりだ。

 「・・・よかったな」

 それまで珍しく黙っていたルカが口を開いた。

 「はい」

 嬉しそうに瑠奈は頷く。

 「それで、友里恵は今の仕事続けていくのか?」

 「いつまで続けられるかは分からないけど、無理がない程度には」

いつまでも続けられないから、その先を考えないといけないと頭の片隅ぐらいにはおいてある。正直、あと定年までの間の年数を働き続けるのかと思うと、気が重くなってしまうので、今は、あえて数年単位で考えるようにしてみたところだ。

 仕事を選ぶできる事の選択肢の一つに、教える事が増えたのはいい事なのだと、思うようにしている。その事に追加して、考え方も少し前向きにとらえられる事ができたのは面白い。

 教えるという事は、相手にとって必要な事を知識を教える事なのだと思う。だから、何事にたいしても、実際には教える事はなくても意識をするだけでも、違うように考えられるようになると思っている。

 「無理しないのが一番、だからな」

 「そうですよね」

 したり顔で瑠奈は頷いた。 

 「無理しないように、気をつけます」

 「うん、無理はよくないから。それから、今度は私の話も話す時には聞いて」

 やりとりを見ていた店員のルカは、微笑ましい事を見るような表情を浮かべていた。

 「私でよければ、話を聞く事はできるから」

 珈琲を飲みながら、そう答える。

 「今の言葉、忘れないで」

 「うん」

 なぜ、そんな事を言うのだろう?と思いながらも頷く。


 後日、瑠奈からは相談をされる事になり、結果、今度は恋愛について教えられる事になったのだった。


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