暇を持て余した恩師と世話焼きアナウンサー
さて、今回の話に出てくるのは先生とおせっかいだった女生徒です。あなたにとって先生とはどんなものでしたでしょうか?面倒な人・楽しい人・優しい人・・・いろいろ意見はあるでしょうが、今回出てくる先生は「おじいさま」とも言って良いような心の優しい先生です。
さて、そして今回までに出てきた8人がこの物語のメインの登場人物です。この物語に出てくる8人は何処か一癖ある人ばかりです。『皆、本人なりの美学を持っていて、それに基づいて行動しているのです。』このことをどうか片隅において読んでください。いつか、役に立つかもしれません...
畳の上でゆっくりと瞳を開く。時刻は午前5時ちょうど。いつもの癖で早起きしてしまったようだ。
「もう、終わったんだから早起きしないで良かったのに…二度寝する気分でもないし、起きるとしますか。」
お湯を沸かし、紅茶とよく焼けたトーストを口へと運ぶ。テレビの電源を入れ、報道番組を眺める。以前までは朝は忙しく、朝食をとっている暇すら無かった。それなのに、いざ定年退職してみると級に時間を持て余すようになった。郵便物を一通り確認したところ、一枚のハガキが届いていた。
「同窓会のお誘い…?差出人は…高校か」
どうやら、私は同窓会に読んでもらえる程度には生徒に慕われていたらしい。一安心して葉書を読む。来週末に高級ホテルの大広間で開催するようだ。一体、何処にこんな会場を貸し切るほどの資金があるのかは全くもって不明だが、私はそういった会費を支払った覚えもないので、目を瞑っておいておこう。
***
「それでは、教職員の皆様の入場です。」
司会役の声とともに目の前の扉が開く。司会の声とともに一礼して大広間に足を踏み入れる。どうやら、司会は五十嵐がやっているようだ。高校時代にアナウンサーになりたいと言っていた覚えがある。あの顔ぶりからすると、夢がかなったようだ。全教職員の入場が終わると、歓談の時間となった。
「五十嵐 凛君 久しぶりですね。」
「お久しぶりです。 米山 修先生。先生、お元気そうでよかったです。」
「五十嵐君も元気そうで。アナウンサーになれて良かったですね。」
「何で私がアナウンサーになれたって、先生分かったんですか!?」
「五十嵐君の輝いた瞳と顔を見れば、分かりますよ。」
教え子との昔話に花を咲かせ、同窓会を過ごした。
***
「同窓会で米山先生と会えるなんて楽しみよね。葵もそう思わない?」
「そうね。私も久しぶりに米山先生と話したいわ。」
葵の顔がどことなく暗い。つまらなそうな感じだ。仕事でなにかあったのでろうか?
「私は卒業後、アナウンサーになれたけど、けっこう大変なものよ。葵は最近どう?」
「私はそれなりかしら。蓮と一緒のIT系の会社なんだけど。周りの技量や意識についていけなくて…」
葵は本当は行きたくない会社に行ったのだろうか。どうにかして励ませないものか。そう思っていた矢先に司会の準備に向かわなければいけなくなってしまった。
「それじゃあ、葵またあとでね。」
同窓会で皆の楽しそうな話それこそノロケ話でも聞けるものかと期待していたが、現実はそうではないようだった。同級生の悲しげな顔が脳裏に焼き付いたまま、私は司会席の方へと向かった。




