努力家の彼女と刹那主義者の彼氏
皆さんは学生時代、同じグループの人とばかり話す人でしたか?普段話さないタイプの人と話すのも新たな価値観を見つけられます。時に、不愉快な思いをすることもありますが。
さて、今日出てくる二人は好き嫌いが分かれるかもしれません。毎日、真面目にノートまとめをしているような堅実な女の子とイベントの度に大騒ぎしているような盛り上げ役の男の子のお話です。
「本件の解決にはカスタマーとのコミットが必要であります。よって、コンプライアンスを第一に考えた方針で行くのが得策であると思われます。」
板についた外来語を矢継ぎ早に喋り、会議に出る最低限の意義を果たし、惰性で会議終了の合図を待った。
「では、これで会議を終了とする。今後は本田の方針に基づいてやっていくので宜しく。」
「はい。」
機械的な承諾の声とともに会議は終わり、私は自宅へと帰る準備を始めた。
「本田~ 本田葵さ~ん 聞こえてる~?」聞き慣れた声が後ろからする。振り返ると、そこにいたのは私の彼氏である一橋 蓮だった。蓮とは高校が一緒でその時に付き合い始め、大学では別々になったものの会社で一緒になった。面白いことが起こるものだ。
「蓮はいつもより早く終わったの?随分と嬉しそうな顔してるけど。」
「まあ、それもあるけどちょっと違うかな。久しぶりにキミと一緒に帰れるのが嬉しくて。」
気持ち悪いくらいにキザな男だ。自分の彼氏とは言えども、こういう台詞回しをするのはやめてほしい。蓮は学生時代からいつもこうだ。眼の前にあるものにいつも尽力していて、いつも輝いた目つきをしている。良く言えば、切り替え上手でポジティブだが、私からすれば刹那主義のキリギリスだ。
「そういえば、今度の同窓会、あなたは出席するの?」
「出るつもりだよ。久しぶりにあいつらと会いたいしな!」
「そう。あなたが行くなら、私も行くわ。」
同級生の皆はどんな感じなのか。私のように失敗している人なんて殆どいないだろう。着実に努力を続けても私みたいな凡人には天才の足元には及ばないことが大学で分かった。同じクラスにいた天才たちは一体何をしているんだろうか?私とは比べ物にならないくらいの成功をしているんだろう。頭の片隅に一物抱えながら、自宅に帰った。その日は夕飯も食べずに寝てしまい、気づいたら朝になっていた。
***
「みんな、久しぶり。みんなは高校卒業してからどう?」
「久しぶり、本田。俺は介護施設で介護職員やってるぜ。」
絹山 誠、人情味に溢れた彼はひねくれ者の橘 聖にも話しかけていたし、彼の得意なコミュニケーションに特化した職業についている。
「俺は本田と同じ会社で仕事してるぜ。デスクワークばっかだけど、こいつと一緒だから楽しいぜ!」
蓮が絹山に対抗するように声を張った。絹山も蓮も仕事を楽しんでいる。それなのに私は….
自尊心を失いかけながらも、私は周りの人に励ましてもらってなんとか生きている。当時仲の良かった女友達と話しに行こうと思い、蓮と別れる。
「久しぶり、あなたは卒業してからどう?」
「私?私は仕事で海外に移住したから、毎日忙しいわ。」
私の友人はいつの間にか出世レースを首位で独走しているようだった。久しぶりに再会した友人の近況を聞き、心に空いた穴に気づくことが出来たような気がした。




