学歴至上主義者と現実主義者の委員長
前回の「利己主義者と博愛」いかがでしたでしょうか?今回は新たな2人の登場です。今回の二人はクラスにいたであろう、勉強一直線で交友関係なんて持ったことがない。そんな二人のお話です。
「自己紹介をお願いします。」
「はい、高橋翼と申します。東都大学医学部出身です。」
「ありがとうございます。では、おかけになってください。」
面接官が15人も居るとは、随分と丁重なもてなしをするものだ。幾ら、新入社員の面接とはいえども、3対15なんて聞いたことがないし、これが初めてだ。集団面接のくせして、質問も個人面接と同じ様式だ。何がしたいのだろうか?
「本日はありがとうございました。結果は後日、電話にて連絡いたします。」
特に問題もなく面接も終わった。「これならば、内定が貰えそうだ」と自分の心に語りかけ、安堵の表情を浮かべ、雨の街へと繰り出す。「何か、今日は気分が悪いなぁ。」渋谷の象徴とも言えるスクランブル交差点を渡りながら、呟いた。殊の外、大きな声で言っていたらしく、周囲の人達に振り返られてしまった。まあ、二度と合わない人間だろうからどうでも良いのだが。それにしても不可解だ。今日の記憶が殆ど無いのである。面接のこともそれ以前のことも殆ど覚えていない。覚えているのは、さっき通り過ぎた花屋の店先と面接前に行った喫茶店の事ぐらいである。更に悪いことに、渋谷には一度も来たこともないのに何故かどことなく来たような感じがするのだ。まあ、動画サイトか何かのVR映像で見たことがあるせいだろうと考え、自宅へと帰った。
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家に着くやいなや、まだ結果も出ていない面接に合格することを確信し、両親に「安心しろ」と連絡も入れてしまった。「所謂、死亡フラグというやつを立ててしまったな」自分に失笑しながら、紅茶を飲み干す。いつも、私に安らぎを与えてくれる匂いだが、今日はそうじゃない。抽出方法でも間違えたかと思い、キッチンに向かおうとした時、携帯が震えた。紅茶を入れ直し、携帯に来たメールを確認したところ、どうやら同窓会の誘いのようだ。
「この時を待ちわびていた!私を馬鹿にしてきた虫けら共を見返す日が来たのだ!」
興奮のあまり、能力者になりきる中学生のようなことを大声で叫んでしまった。きっと隣人に聞かれていることだろう。恥辱の極みだが、そんな事どうでもいい。果報を聞いて越に浸りながら、その日は晩酌を一人でした。
***
「檜山、久しぶりだな。高校卒業してからどう?」
檜山美羽、高校生の時、常に主席争いをしてきた奴だ。交流はあまりなかったが、気のおけないやつではある。
「私は東都大の医学部の大学院に行く予定よ。あなたは?東都大に入った時、張り切って起業していたじゃない?」
「インターエージェンシーユニオンの事か?あれは、実績がほしいから起業しただけでそんなに利益率は高くない。会長職について、部下に丸投げしといた。」
「君は何がしたいかわからないわ。起業したままでも、十分稼げるじゃない。」
やっぱり、この女は嫌いかもしれない。なんで、あんな昔のことを覚えてるんだ。この女は。
「良いんだよ、好きなことと稼げるかは別問題だ。」
まあ、良い。この女のことは同じ大学だから、風のうわさで聞いていた。話がしたければ、いつでも出来る。問題はかつて私を馬鹿にしてきた奴らだ。私はそいつらを見下し、自己肯定感を高めるために来ただけだ。惨めな奴らの顔を見るのが楽しみだ。恍惚とした表情を浮かべながら、奴らの到着を待った。




