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114/115

114.洞窟内にて

「ここが海底、ですか……?」


 エリシアが、驚いたような口調で呟く。


「ほっほっ、そうじゃの。どう見ても洞窟じゃろ?」

「そ、それはそうですが……」

「ふむ。まあ、気持ちは分からんでもないがの」


 海を潜ってやってきて――たどり着いたのは、大きな空洞のある場所だった。

 ここが海底であることには間違いないが、洞窟内には空気がある。

 モーゼフにとって酸素は必要ないが、他の者達には必要なものだ。

 だが、ここならば気にする必要もない。


「ぬははっ、クラーケンは巨大なイカではあるが、地上でも生息することができる。酸素は奴が地上から集めて供給しているものだ」

「そうなんですね。でも、どうしてそんなことを……?」


 エリシアが疑問の言葉を口にする。その疑問は当然のものだ。


「ほっほっ、その話についてはいずれ話しておこう。まずは、クラーケンの下へ向かわねばの」

「本物のクラーケンに会えるの!?」


 ナリアが喜ぶような声を上げる。

 モーゼフの話を聞いてから、何故かナリアはクラーケンに執心だった。

 何にでも興味を持つナリアらしい。だが、


「一先ず、クラーケンのところにはわしとレグナグルで向かう。元々、『一部』を奪われたのはわしらじゃしの。ヴォルボラ、二人を頼めるかの?」

「言われなくてもそのつもりだ」


 モーゼフが言う前から、ヴォルボラはエリシアとナリアを守る姿勢でいた。

 ここに入った時から、周囲を警戒している。

 すでに、ここはクラーケンの領域内だ。

 本来であれば同等の力を持つレグナグルも、ほんの一部でしか来ていない。

 ヴォルボラはドラゴンではあるが――その強さの基準は、クラーケンやレグナグルに並ぶレベルではないだろう。

 ――そうなると、自ずとクラーケンと互角の力を持つのはモーゼフのみとなる。

 ただ、仮に何かあったとしても、クラーケン以外の相手であれば、ヴォルボラならば任せられる。


「頼もしい限りじゃの」

「えー、わたしも一緒にいきたいっ」

「こら、ナリア。モーゼフ様を困らせてはダメよ。ここまで連れてきてもらったんだから……」


 エリシアはナリアを注意するように言うが、モーゼフがヴォルボラに任せると言うまでは、きっと彼女も付いてくるつもりだったのだろう。

 モーゼフ自身、クラーケンの真意が分かれば、連れて行く分には問題ない。

 ここならば、何かあってもモーゼフの力の届く範囲にある。

 連れてくるか迷ってはいたが、結局のところ――モーゼフはエリシアとナリアを心配して連れてきたのだ。


「エリシア、二人と留守を頼むぞ。お前さんのことは、頼りにしてるからの」

「! は、はいっ」

「いってらっしゃーいっ」

「ほほっ、行ってくるぞい」


 モーゼフはレグナグルを抱えて、歩き出す。

 海底洞窟内は広く、入り組んでいる。

 だが、モーゼフにはどう繋がっているか、到着した時点で理解していた。

 クラーケンはこういった構造の住処をいくつも構築している。

 モーゼフも、何度か訪れたことがあった。


「モーゼフ、クラーケンのことはどう考えている?」

「ふむ……奴はわしらの身体の一部を持って行った。面倒なことをしてきたが……やりたいことは至極シンプルじゃろう。何か話がある、ということじゃな」

「話か。お前さんとわしを呼びつけるということは、およそ良い話とは思えんがの」

「ぬははっ、違いない。あるいは……わたしと同じ理由かもしれんな?」

「同じ理由、か。それはやはり、《フェンリル》の件か」

「ぬはは、次なる目的地に向かうタイミングでの誘いだ。おそらくはそうではないか? 奴は奴で、世界の均衡について考えているらしい」


 レグナグルの言葉に、モーゼフは頷く。

 ――世界の均衡。それはすなわち、レグナグルやクラーケンを含めた伝説の六体の魔物のこと。その均衡が、崩れ去る可能性があるのだ。

めちゃ久々に筆がのったので書けました……!

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平穏を望む魔導師の平穏じゃない日常
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2018/10/10にこちらの作品は第二巻が発売されております!
合わせて宜しくお願い致します!
― 新着の感想 ―
[一言] フェンリルとはまたモフモフしてそうですね。 そして伝説の6体とかカッコイイワードがっ
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