大事なことを忘れていたのです。
今晩は。
今まで読んでくださっている方々、ありがとうございます。
拙い文章ですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
朝日奈東子と喫茶店に入る。
「話って、何?」
「そろそろ、全部お話しておこうと思って……。」
「どういうこと?」
「あなたがいなくなった後の家族のこと。それと東藤夕日について。」
東藤夕日。
また、彼女の関係者か。
私の人生はどこまで彼女に狂わされるのか。
私が何をしたと言うのか。
私は、彼女を殺していない。
弟の嫁、朝日奈東子ときちんと話すのはこれが初めてだ。
朝日奈東子から呼び出され、話をすることになった。
何か利用できるのではないか。
そう思い、彼女の呼び出しに応じた。
しかし、ここでもまた東藤夕日が絡んでいるらしい。
「どいつもこいつもあの女が絡んで…。貴女は、あの女とどういうご関係なの?」
「私は彼女の双子の妹。」
「嘘でしょ、似てないじゃない。」
「整形したの。」
貴女の弟に近付くために。
その一言にゾッとした。
この女は、私自身を潰そうとした訳じゃない、私の家族を潰そうとしている。
瞬時にそう悟った。
なんと恐ろしいのだろう。
「私ね、家族を失った痛みを貴女にも味わってもらおうと思って、自分の顔も名前も捨てて、貴女の大切な弟に近付いたの。」
「……弟に何をしたの?」
「貴女の弟、貴女と違って健気ね。」
「どういうこと?」
「お姉ちゃんのためって言えば、何でも言うこと聞いてくれるの。だから消えてもらっちゃった。」
「消えてもらったって……弟は無事なの!?」
頭が真っ白になる。
私の大切な弟に何をしたの!?
「貴女弟の学費出してあげてたんだってね。弟に言ってあげたの、貴方さえいなければお姉ちゃん苦しまないで済んだのにね、って。」
「そんな……。私、苦しんでなんかない!出鱈目言わないで!」
「他にも言ってあげたけど。」
「他にも!?これ以上、何を吹き込んだの!?」
「吹き込んだなんて人聞きが悪い。」
「茶化さないで、ちゃんと言いなさいよ!」
「いい加減にお姉ちゃんを解放してあげたら?って言ってあげたわ。」
「なんて、ひどいことを!」
「ひどいことじゃないわ、私はただ事実を言っただけ。」
貴女も私の姉に同じようなことしたでしょ?
涼しい顔で朝日奈東子は言う。
その一言で思い出す。
昔、同僚たちに「みんなのお荷物なんだから早く仕事やめればいいのにねー。」と東藤夕日の悪口を言ったことを。
確かに同じようなことだ。
東藤夕日は、度重なる悪口に負けて自殺した。
じゃあ私の弟は……?
「貴女の弟、もうこの世にはいないわよ。」
「よくもっ……!」
「これでおあいこよ?私の大事な家族も、貴女に奪われたんだから。自分だけが被害者みたいな顔しないで。」
「もうやめて……!」
「やめてほしかったら、夕日を返して!」
その時、自分はとんでもないことをしたと気付いた。
なんで、忘れてたんだろう。
自分が傷つけた相手にも、家族がいるのだと。
大事な人がいるんだと。
自分が同じ目に遭うまで、全く気付けなかった。
「まだまだ、貴女には苦しんでもらうから。貴女を恨んでる人間は、まだまだいる。」
そう言い残し、朝日奈東子は私の前から姿を消した。




