答え合わせを始めましょう。
今晩は。
今までの作品を読んでくださった方々、ありがとうございます。
続きです。
最近、狂い始めた百合枝の人生。
なぜ狂い始めたのか、答えあわせが始まります。
百合枝に復讐をしたい人物はたくさんいる。
地元にも、職場にも私の居場所がなくなった。
でも彼氏がいる。
彼氏と結婚して、勝ち組になるんだ。
そして、転職して一からやり直すんだ。
陽太くんにプロポーズしてもらうんだ。
自分からじゃ恥ずかしいから、陽太くんにプロポーズしてもらえるように仕向けなきゃ。
どういう流れでその話に持ってこうかしら?
そう考えつつ、同居している彼氏に夕飯を振る舞う。
やっぱり陽太くんは素敵。
誰もが羨む最高の彼氏。
みんなに自慢できる。
これで結婚すれば、私はまた一番になれるわ。
「ねぇ、陽太くん…。」
「なぁ、百合枝。ちょっと昔話をしていいか?お前と出会う前の話で、大事な話なんだ。」
「いい、けど……。」
タイミングを逃した。
一体、何の話かしら?
昔話?私と出会う前の話?
嫌な予感がする…。
「俺、婚約者がいたんだ。すごく大切だった。」
「そっ……そうなの?」
「でも数ヵ月前に自殺した。会社でのいじめが原因で。」
「それは……悲しかったね。」
「悲しいなんてものじゃなかった。それから俺の人生は一変した。」
「……大変だったのね。」
「大変……その程度か。」
「何が、言いたいの?」
「君は、人の痛みと言うものが分かるかい?」
「それくらい……。」
分かるわよ。
と言いたかったけれど、陽太くんの目がそれを許さなかった。
どうして今、その話を?
そもそもどうして私と付き合ってるの?
こんなに近くにいるのに、陽太くんが遠い。
陽太くんのすべてを知ってるつもりでいたのに……。
「分かるわけないよな?分からないから、あんなことできたんだよな?」
「どういうこと?」
「会社の人たちに聞いたよ。君が俺の婚約者を、自殺に追い込んだって……。」
「まさか……。そんな……陽太くんの婚約者って……。」
「あぁ。そうだよ。東藤夕日さ。」
「嘘、でしょ?釣り合わないわ。あの女と、陽太くんが?」
「そうだよ。大切な婚約者だった。」
「あの女に?婚約者?世の中どうなってるの……?」
あの底辺女に、こんな素敵な婚約者がいたの?
私を差し置いて、この女に婚約者ができるなんて、世の中おかしいんじゃない?
私の方が優れてるのに。
「俺は君に復讐をするために、君に近付いた。」
「嘘でしょ?陽太くん、冗談言ってるのよね……?」
「本当さ。」
現状が上手く処理できずに、頭が真っ白になる。
じゃあ、今までのは全部嘘だったの?
私の我が儘聞いてくれたのも?
私に優しくしてくれたのも?
「……許せない。」
「君にも、やっと人の痛みが理解できるようになったみたいだね。」
もう遅いけど。
光のない目で陽太くんが言うが、私にはほとんど届かない。
だって納得いかない。
何で?
私、何もしてないじゃない。
「君は、夕日を殺した。その罪を一生かけて償え。」
「そんな、私は何もしていない!」
「職場の中で孤立させる、仕事の情報は回さない……。これだけのことをしておいて?」
「ただそれだけじゃない!」
私が言った一言でその場が凍り付いた。
陽太くんのこんな表情、見たことない。
陽太くんは私にそんな表情をしない。
ここにいるのは誰?
陽太くんじゃない。
「君の言うそれだけのことで、夕日は死んだんだ。」
「そんなことくらいで、死ぬと思わないじゃない。」
「君も独りになれば気持ちが分かるよ。」
「分かってたまるもんですか!」
「そのうち、嫌でも分からせるさ。」
「まだ、私には居場所があるわ!友達だっているし、先輩だっているわ!」
「全部失うよ。」
「嘘よ!」
君を恨んでる人間はたくさんいるからね。
そう言って陽太くんは、私の前から姿を消した。




