第1話 Prologue
人生は無数の選択の繰り返しだって、なんかで聞いたことがある。
何をするにしたって、自分では意識もしていないような小さな選択を繰り返している。
携帯を開くとか、電車の席に座るとか、お菓子を買うとか、パソコンを起動するとか、誰かと一緒に帰るとか、今日はもう寝ようとか、いろんなことを。
そして、それらが気分でころころ変わろうとも、別に不便はしない。
携帯を開かなくたって、電車の席に座らなくたって、お菓子を買わなくたって、パソコンを起動しなくたって、一人で帰ったって、ちょっとくらい夜更かししたって、別に八十年とか九十年×三百六十五日という人生の中にしてみれば、何てことはない些細な事なはずだ。
ね、そうでしょ?
そんな、一瞬一瞬で未来を左右するような選択をしているなんて言われたら堪らないじゃない。
携帯を開くとか、電車の席に座るとか、お菓子を買うとか、パソコンを起動するとか、誰かと一緒に帰るとか、今日はもう寝ようとか。
そんな事で一々未来が左右されるなんて。
そんなこと、あるわけないでしょ?
そうだ、「普通」なら、そんなことはない。
もしそうだとしても、気づくことはまずない。
でも、私にはわかるんだ。
今の「選択」が、「明日」にとって、どんな意味を持つのかを。




