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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第2章 学び生きていく
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第七十六話 友よ、話を聞いてくれ

「ビスタニア……怒っているのかい?そんなにショックを受けると思わなかったんだ……」



 シェアトが皆に追い立てられた頃、ウィンダムは非常に焦っていた。



 無言のままどこに向かっているのか分からないが、治癒室を出てしまった彼に付いて来てしまった。

 危うく靴すらも履き替えずに行ってしまいそうだったビスタニアをなんとか止め、履き替えさせるのにも一苦労だったが、この無言を打破するのもかなり骨が折れそうだ。




 考えてみればプライドが人一倍高い彼が好きな女子に横抱きにされたなどといった事実を喜ぶはずも無かったのだ。



 この様子を見ていると付き合うどころか、告白もまだのようだ。

 関係を温めていたのかもしれない。

 しかし、別にいいではないかとも思う。



 あの編入生だって守ってくれた相手に対して、倒れて格好悪いなどと野暮な事を思うようなタイプではなさそうだし、もしかしたら好感度が上がったかもしれない。

 確かに女子の考える事は分からないし、男からすると何がいいんだというような所がツボだとも聞いた事がある。

 何か力になれないかと模索しながらも、前向きな事を言おうとした時に突然ビスタニアが立ち止まった。





「待て、嫌な予感がする……」





 そう言うと今度は隠れられそうな場所を探し、目に留まった花壇の後ろに隠れてしまった。

 こんなビスタニアを見るのは初めてだった。

 一体何から隠れているのだろう。


 ウィンダムは不審に思いながら戸惑っていると、ビスタニアがあまりにも必死に手招きをする。

 仕方がないので彼の隣に腰を下ろすと、何やらこちらに向かって来る気配と賑やかな声が聞こえて来た。


 じっと待っているとビスタニアと犬猿の仲である、確かシェアトという太陽組の男子生徒とその仲間の二人、そしてその後ろにはあの編入生と気弱そうな顔をしたピンク頭の女子がいた。

 しかし前方は離せと喚いているシェアトを二人で抱えて歩いており、異様な光景となっていた。


「ほら見ろ……やっぱりだ……。危なかった……」

「ビスタニア! こんな所でぼうっと見てるだけでいいのかい!?」

「……何がだ? 静かにしていろ、気付かれてしまう……」



 本当に分からないといった顔をしているので、ウィンダムは再度考え直してみる。




「(そうか、声を掛けたいのは山々だが今のビスタニアは上半身の制服が酷い状態で出るに出れないんだな!)」



 会いたかった人がいたのだ。

 傷ついたビスタニアは彼女の顔を見れば安心するだろうし、話したい事だってあっただろう。


 やはり考えが甘かった、月組なのにこんな事でいいのかと反省するウィンダムにビスタニアは少し身を引いた。

 だが、今ようやく友人の力になるべき時が訪れた事に喜びを噛み締めているウィンダムはいい笑顔をビスタニアへ向けた。




「安心するんだ、我が友よ。鈍い僕を許してほしい。さあ、これを着るんだ」

「……はっ?」




 ビスタニアには、何故友人がこんなに素敵な表情で少し誇らし気に自分のジャケットを差し出して来たのか理解できなかった。

 半ば強引に袖が焼き切れたジャケットを脱がされていく。

 抵抗しようにも騒げばあの集団に気付かれる恐れがあるので、何も言えないまま今度はウィンダムのジャケットを着せられてしまった。


「おい……、何のつもりだ?」

「大丈夫、全ては僕に任せて。戦略はばっちりだよ!」

 

 そう自信ありげに言うなり、破れたジャケットを傍らに置くと立ち上がり、演技掛かった口調で五人に近づいて行ってしまう。

 もうすぐ忌々しい彼らが通り過ぎようという時だったので、この行動にビスタニアは歯ぎしりが止まらなかった。


「こんばんは、皆さん。お急ぎですか?」

「あ?なんだお前……ああ、噂のナヴァロさんのお友達じゃねぇか」

「記憶の片隅に置いてくださり、光栄です。さて、シェアト君を抱えている両脇にいるユニークなお二人にも少しお話がありまして……お時間を頂きたかったのですが!」


 非常に穏やかな口調で提案され、思わず指名されている三人は顔を見合わせた。

 その様子を花壇から見ているビスタニアは自分は一体前世でどんな人物で、何故このような罰を与えられているのかという思考の旅に出る寸前だった。

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