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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第2章 学び生きていく
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第七十話 ご武運を

 甲斐とビスタニア、アイリスとアーク。

 太陽と月組のペアで行う授業が始まった。


「いっくよーん! っらあ!」


 先制攻撃を仕掛けたのはアイリスだった。

 拳を振り上げた彼女が、どんな魔法を繰り出すのか。

 勉強不足な甲斐には全く分からず、一応警戒はしてみたが気が付いた時には皆がこちらを見上げていた。

 どうやら上空に吹き飛ばされたようだ。

 送れて腹部に重い痛みと息苦しさを感じたが、このままでは地面に落下してしまう。

 続け様にどこからか背中を思い切り下へ押され、落下速度が速くなった。


「死ぬ死ぬ死ぬ! 赤毛ぇ! 無能! 性格破綻者! 俺様主義イィイイイ!」


 思いついた事を叫んでみたが、あっという間に地面目前となった。

 目を力一杯閉じて、落下に備え体を小さく丸める。

 しかし、なにか柔らかい感触が体に広がり妙に沈み込むのを感じる。

 目を開けてみれば手触りの良い白い毛に包まれていた。

 そして次には沈み込みが一気に押し返され、また甲斐の体は宙へ舞った。

 上から見てみると、白く楕円形の毛の塊ようなものがビスタニアの前で微妙に動いている。

 地面が近付く頃には落下地点へ毛玉が移動しており、また甲斐を受け止め、そして包み込んだ。


「あら~、おっしい !やっぱ一撃じゃ無理かあ……。あの子戻ってきちゃったら面倒だね、お! 気が利くじゃんっ」


 やはりそのまま落下でフィニッシュ、という結末にはならなかったが、アークは動じた様子も無く青みがかった防御膜を展開させた。

 それは前方に突出した形で、傘を開いた形状に似ている。




「なんだこれ……すごい高級な手触りなんだけど」




 今度は弾き返されず、ゆっくりと毛玉の上に移動させられた。

 生きているような温かみも感じ、撫でていると目の前で目の眩むような光が炸裂した。

 エルガやルーカスと違い、手をかざさずに腕組みをしたまま、ビスタニアは二人を覆うには大きすぎるほどの透明度の高い盾を出現させていた。


「目が潰れるううううう! 浄化されるうううう!」

「やかましいぞ、実戦中なのを忘れたか。とりあえず相手の事も大体分かった。攻めに転じる。フラッフィーから降りて来い」

「ん? このふわふわ、フラッフィーっていうの?」


 名前を呼ぶとまるで返事をするように毛が波打った。

 何気なく毛の塊に目をやった時に、毛に埋もれている大きな二つの黒い瞳と目が合った。




「ナバロナバロナバロ! なんかいるなんか生きてる! あの毛玉こっち見た!」




 取り乱してビスタニアへ駆け寄り、ビスタニアの腕を掴みながら毛玉を指さして必死に伝えるが、腕を思い切り引かれて手が離れた。

 落ち着きも注意力も経験も、何もかもが足りない彼女への怒りを目を閉じて耐えていたが、かなりの力を使い、どうにか冷静な声を作り出した。


「フラッフィーという、気の良い奴だ。気は、済んだか? 攻撃に、転じる。いいか? 言っている、意味が、分かるか?」

「あ、はい……。よーし! お望み通りミディアムにしてやるよ!」


 片腕を回しながら飛び出そうとする甲斐の襟を後ろから掴み、雑に引き寄せる。


「勝手に突っ走るな。いいか、あの女は真空波を強化してお前に当てただけだ。そしてその威力の強化はアークが手早くサポートしている。俺の盾はあの女の力では壊せない。そして、アークの盾は恐らくこちらよりも脆いだろう」

「そうなの? 何で分かるの?」

「……よく見ろ、向こうの盾の色がはっきり分かるだろ。精度の高い盾はこのように透明なんだ。それに前に突出させることにより、ダメージを周りに分散させている。だからお前の人外な力を攻撃に反映して叩き込めば勝負は決まるはずだ」


 見比べると確かに向こうの盾はこの距離からもどこからどこまでの大きさか、見て取れる。

 一方でビスタニアの展開させている盾は至近距離で目を凝らさないと端が分からないほどに澄んでいる。


「ほえ~、結局あたしは攻撃すればいいんでしょ?あ、でもあたし一個しか魔法使えないよ?火出すやつしかまだ分かんないし」

「……はぁ、編入して来たのにか……? お前、どこから来たのか知らんが一年次は何をしていたんだ…。まあいい、属性は問題無い……んだが」

「何? 他に何が問題なの? さっさとお言いなさいよさあさあ!」

「攻撃をする場合、盾から出ないとならないんだが……大丈夫か?」


 数秒の沈黙の後、お互い見つめ合ったまま固まってしまった。

 そうしている間にもアイリスの攻撃が激しくなっている。




「早い話が死ねとおっしゃってます?」




 薄ら笑いを浮かべている甲斐に、ビスタニアは目を逸らして何も答えなかった。

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