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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第1章 君に出会って
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第五十話 眠れぬ夜は

 思い返してみれば、最初からあの女は無茶苦茶だった。

 異世界から来たという時点で驚きだが、あの性格は彼女の世界では普通なのだろうか。

 だが、分かりやすいので付き合いやすいのも事実だった。


 元々女子は苦手な方だった。

 すぐに泣くし、筋の通らない事を感情的に言ってくるのが尚更苛立って仕方が無かった。


 ここに入学してから、エルガと仲良くなりその後にルーカスが加わり固定メンバーになった。

 エルガは最初は女かと思った程、不思議な雰囲気と迫力があったがつるんでみれば頭はおかしいが楽しい奴だった。

 エルガはそもそもの見かけが男女共通で目線を引くので、隣にいる自分にも注目が集まっていくのを感じていた。

 お陰様でというのか、女子からの人気は高い方だ。

 だが、何度かお付き合いというものを経験してみたがやっぱり女は苦手だった。

 どれだけこっちが我慢しているのか分かっていないようで、急にキレ出して自分の言いたいことだけ言った挙句、気が済んだら手の平を返してすり寄って来る。

 数日で駄目になるなんてこともあったが、どれも最初から終わりは見えていた。


 だったら最初から無くていい。


 そもそも一緒にいた所で馬鹿な事も出来ないし、一緒に爆笑なんてあり得ないんだ。

 何が可笑しいのか分からない事でも甲高い声で笑う奴らを見ていると、不愉快な気分になってくる。

 どいつもこいつも甘えた声と自分を可愛く見せる事ばかり力を注ぐのは勝手だが、こっちにそれに対しての反応を求めてきやがる。

 それならまだなんのサナギか分からないものの観察日記をつけている方が、愛着も湧いて些細な変化に気付けるだろう。

 約束とは名ばかりで、実際は自分の把握できない時間を如何に減らすかを考えているようにしか思えない。


 結局は俺を好きで一緒にいる訳じゃないんだと、何度目かの交際期間の最短記録を塗り替えた辺りでようやく気が付いた。

 この教訓一つ得るのに無駄な時間を随分費やしたものだと思った。

 やっぱり頭が悪いってこういうことなんだろうか。


 誰とも付き合わなくなってから、俺自身の益々人気は上がった気がする。

 被害者が増えないからだろうとルーカスは笑ったが、こっちからすれば被害者は俺だと言いたかった。


 エルガはあいつが現れる昨日までは博愛主義を気取っていた。

 自分が一番好きだといつも言っていたが、家柄的に簡単に誰かと付き合うとかが出来ないからその言い訳だと思っていた。

 どうやら昨日からエルガは頭の中に悪い虫が大繁殖しているようで、あいつに対してのアピールが酷い。

 恐らくエルガの冗談だろうが、こうも打って変わると鬱陶しい。


 ルーカスは大人しいし、なんだかかわいコぶってやがるから同じ星組と月組の女子から好かれているが、毎回丁寧に断っている。

 あの性格だから様々な女子に期待を持たせているのだろう。

 ああいうタイプがいつか恨みを買って事件になるんだ。


 こう考えていくと、あいつはどうにも女子というカテゴリではない気がしてきた。

 見かけが悪いわけでは決してないが、口を開いた瞬間からどんどんマイナスポイントが増えていく。

 女子が人の馬乗りになる瞬間を見たことのある人間はどの位いるっていうんだ。


 そしてあいつは、あんまり笑わない。

 それこそ不敵ににやりとする事はあるが、基本的に真顔で事態を見ている。


 そしてあいつは、泣かない。

 異世界から来て、戻る手段が無いと星を見上げて言った彼女はもしかしたら泣くのではと思ったが無用な心配だったみたいだ。

 でも、じゃあ、こんな時に泣かないのであれば、あいつはいつ泣くんだ。


 そんな奴の癖に、妙に人の気持ちの振れ幅に気付くんだ。

 ルーカスだって、あのチビにだって、クリスにだって。

 ぼんやりマイペースでいる癖に、いざという時にはいつもと変わらない調子で。


 本当に変な女だと思う。

 人の事をどうこうしてやってる暇があったら、自分の事をなんとかしないとまずいんじゃないのか。

 

 今夜初めて、あいつはこの学校のあいつにとっては知らない部屋で寝るのか。

 もしかしたら、あんな奴でももしかしたら不安を感じて少しは泣いてしまっているのかもしれない。


 明日はあいつを笑わせて、少しでも楽しい事を教えてやろう。

 帰りたくない、といつかあいつが帰る方法が見つかった時に言わせてやろう。


 女の笑わせ方は知ってるけど、あいつの笑わせ方はこれから探さないと分かんねえな。




 シェアトは制服姿のまま、深く眠りについた。

 明日に向けての意気込みを燃やしながら。

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