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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第1章 君に出会って
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第四話 言い合い


 両者、一歩も動かなかった。



 その状態に痺れを切らしたのは甲斐だった。

 というよりも振り返った状態の首が疲れ、体ごと赤い髪の少年へ向き直ったのだ。


「あの、携帯貸してもらえないですかね。いや、貸して欲しい。拒否権とか無い前提ですから」

「うわっ! 前はもっと酷いな……これは……酷過ぎる……」




 赤い髪をした少年にお願いしてみるも、返ってきたのは残念そうな声と表情だった。




「なっ……なんだこいつ、 髪型変だし超態度悪い!」


 気持ちをそのまま口に出した甲斐は、はっとしたように取り繕う。

 

「あ、まずい口に出してしまった。へへへ、冗談でっせ。さあ大人しく携帯を出してもらおうか」



 じりじりと距離を詰めるも、近づいた分だけ後ずさりされてしまう。



「なんで下がるんすか。携帯貸してくれたらあんたになんて用無いんすよ。ホントマジで。ちょっと、何さっきより下がってんすか。むしろあんたじゃなくて携帯に用があるんすよ!」

「くっ、来るな! こいつはなんだ、一体何を言っているんだ……!?」

「あああイライラするうう。なんすか、まずなんで下がってくんですか!? お願いしているでしょう! ねえ! あれか?女性恐怖症か!?」



 どうにも上手く事が運ばない事に甲斐は苛立ちを見せた。



「ふん、笑わせるな。どこに女性がいるんだ。そんな下着のような格好で校内をうろついて、あろうことか裸足でだ! 貴様、そのジャケットは一体なんの意味があるんだ!?」

「あたしだって好きでこんな格好でうろついてんじゃないわ! ふざけてんのか! あっ……ジャケット……」


 ようやくルーカスから借りたジャケットに気が付いたが、今はそれどころではない。

 次にいつ出会えるか分からない人間を逃すわけにはいかないのだ。


 だが事態は好転するどころかどんどん悪くなっている。

 彼は少し顎を上げ、見下すような表情で甲斐の羽織っているジャケットを見つめると、やがて馬鹿にしたように笑った。


「なんだ、やはり星屑か。貴様のような奴までいるとは流石だな。うちの組はありえんと思っていたがやはりそうか。害が他の奴にも及ぶ前に着替えろよ」

「何言ってんのかちょっとよく分かんないけど、なんていうか糞野郎だなあ。あら、また口が勝手に。ちょっと何勝手にユーターンしだしてるんだよ! 携帯貸しなさいってばもおおおお!」

「さっきから貴様、何を言っているんだ!やめろ、近寄るな! 離れろ! そのケイタイだかは他の奴に借りたらいいだろう! お前と一緒にいるところを見られたらどうするんだ!」



 ずかずかと赤い髪の少年に近づくが、しっかりと大きな歩幅で後退される。



「そんな性格だから連絡取る人もいないの?だから携帯の存在すらも知らないの? ねえ、ほんとそういうのいいから。……えっ、嘘でしょ? 本気で携帯持ってないの?」



 やっとどうにかなりそうだと思っていたが、今度は役に立たない上、どうにも馬が合わない奴に出会ってしまったようだ。



「だからさっきからそう言っているだろ! さっさと授業でも部屋にでも戻れ! 必要以上に絡まないでくれ!下着姿の女と下手な噂が立ってみろ! ナヴァロ家の恥になる!」

「え? ナバロ? なんて? そして、これは、下着では、ない。っていうか本当に失礼だな。人様に対する態度教えてもらってないの?」

「失礼なのはどっちだ! 公共の場でそんな不埒な格好をしてうろついて! 常識が欠落しているんじゃないか!?」


 

 そして彼は、まるで切り札のように言い放った。



「俺はビスタニア・ナヴァロ、聞いたことぐらいはあるだろ! ……もしかして編入か?」

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