エピローグ 物語は、次へ
とても気持ちのいい天気だった。
風は無く、暖かな気温はようやく上着を置いて出かけても良さそうだ。
「じゃあ……行ってきます」
甲斐は硬い笑顔を浮かべ、玄関を出る。
「はいはい。ドアの弁償代、待ってるからね?」
吹き飛ばされたドアの件について、甲斐は卒業式の後しこたま質問攻めにあっていた。
特殊部隊への入隊式までの間、本来ここにいるべきもう一人の甲斐に合わせているのは相当の負担だった。
「分かってますー。帰る時は、連絡するから」
「連絡なんていらないから、いつでも帰って来るんだ。お前の家だろう」
遊馬はいい父親だ。
亜矢の怒りと詮索に参っているときに何度も助けられた。
「……そうだった! あ、迎えが来たね。紹介するよ、これが一緒の部隊の……」
『……言語共通魔法をかけなきゃ分かんねぇだろ。ってお前もか?失礼、よし。』日本語になってます? シェアト・セラフィムです! あー、将来の旦那になるかもしれないのでよろしくお願いしまーす!」
「人の親に何言ってんだ! やめろ!」
的確にシェアトの腹に蹴りを入れる甲斐。
久しぶりの再会だというのに、何一つ変わらない。
「面白いね、嫌な姑になる予定の亜矢でーす」
「ほらほら、遅れてしまうよ。……俺は本当は反対なんだ、ここで娘を抱き締めたまま離したくなくなる。早く行きなさい」
どの道を、間違えてしまったのか。
それとも最初からこの道しか無かったのか。
あれ以来、何度も映像通信を友人達としていた。
しかし、誰一人としてエルガのナンバーを知らなかった。
シェアトは彼の話題は一切受け付けず、思い出す事すらも拒絶していた。
エルガの発したサインは極僅かな物だったが、それをキャッチし切れなかったとルーカスは悔やんでいた。
もっと上手く受け止められていたら、そう何度もこぼす彼の姿に甲斐は共に涙を流した。
常に鬱屈とした闇を抱え、悲鳴を上げていたはずの心を殺し、悟られぬようにと神経を研ぎ澄ませていたのだろうか。
冷酷に友を切り捨てた時、エルガもまた苦しんだはずだ。
傍にいたはずなのに距離があったという現実にショックを隠し切れない友人を励ましつつも、落ち込んでばかりもいられなかった。
指輪の映像の未来を阻止する為にW.S.M.Cへと入隊したのだ。
それは、シェアトだけを救う為ではない。
全員を守る為に、より良い未来の為に。
やるべきことは、見えた。
「うん、そんじゃまったねー!」
道は、無限大なんだ。
長いお付き合い、本当にありがとうございました。
さてさて√8ですが、ラストから考えました。
滅茶苦茶仲良かった友人が残酷な裏切り、といったところから始まり、そうすると仲の良さやこいつが嘘!?となってもらうためには日々の中で思い出や心動かされるようにしていかなければ、と肉付けしてました。
今回のラスト、ぽかんとしてしまった方もいるかもしれません…。
まだまだ力不足な石船は、最終話に時間が掛かりました。
エルガには可哀想な役回りをしてもらいましたが、彼だけは変わらない配役だったので今までの彼の行動でもこの根底があったと考えるとあー!だからあの時…ってなってもらえるかもしれません。
SODOMはちょいちょい出て来ていましたね。
333話でルーカスの入団試験に使用されていたのはソドムのウィルスでした。
その他にも手広く武器や兵器の開発事業を行っているソドムに新しく最高責任者として就任したエルガがこの先、どう生きていくかも書くのが楽しみです。
結局、完結ですが何も解決していないですね。
指輪も元の世界にいる甲斐についても、この先の未来についても、甲斐が戻れるのかも。
申し訳ないです…、ただ卒業までが一つの物語にすると決めていたのでこれで完成形です…。
恋愛を書くのが苦手な石船、どうにかまとめあげました。
本当に最初はシェアトと甲斐のコンビで結ぶつもりだったのですが、ナバロが思った以上に良い動きをするのと、お読みいただいている方々のナバロ株の上昇と共に、考え直しました。
タイトルの意味も分かるかなー?というような期待と共に付けました。
伏線というような大層なものは無いのですが、ちょっとした謎や仕組みは分かるようで分からないようにしてみたのでたまにばっちり正解している人もいましたね!
突っ走らずに、リアルタイムでお読み下さった方々が内容に置いてけぼりにならないようにと気を付けていましたがそんなに文の上手くない石船はドキドキでした。
キャラクターですが、ここまで沢山の人物を出したのは初めてで最初は自分でもこいつの名前なんだっけなと思ってました。
容姿は完全に石船の好みが反映されてます。
甲斐の女子力を低くしたのは正解でした。
絡ませやすい絡ませやすい。
フルラは成長が分かりやすかったかなと思います。
それぞれの成長を書いて行く中で、譲れない物や彼らなりの思考を考えていくのは楽しかったです。
特にクロスが勇気を振り絞って助けを求める時は静かにテンションが上がっていました。
正直、サクリダイスには期待してます。次の話でも全然出てきます。
あそこまで徹底して嫌な奴っていいですよね!!!
良い人ばっかじゃ世の中回らないぜ!フゥ!
先生方に焦点を余り当てなかったのは、学生にとって教師はそんなもんだよなっていうのもありまして…。
先生はどうしたって先生で、生い立ちも気になるかもしれませんがそれを知ってしまうとその時からどこか違って見えたりしませんか?
魔法があるのに空は飛べず、戦いに特化した学校にしたのもゆくゆくを考えてこうなりました。
甲斐が拳で戦うのはあんれえ?と石船もなってましたが結果オーライです。
次の話では、今までの舞台は学校でしたがこの魔法世界に視点を移してみようと思います。
もう書き始めているので、来週には公開できそうですがチャレンジから始まるのでパソコンからしか最初は読めないかもしれません…。
どういった形で皆が暮らしているのか、元の世界と何が違うのか、秩序を守るにはどうしているのか、その辺りも書きたいなあと思っています。
甲斐を中心に物語が進むので、ナバロ、ルーカスといったメインキャラは暫く出て来ないので…その辺りも申し訳ないです。
ただ新しい部隊の先輩達といったキャラクターがうじゃっといます。
エルガもソドムにいるので出るのは先です。
出てきたら懐かしい!となるかもしれません。
最後に、ここまでお読み下さりありがとうございます。
もう言葉でいくら言っても足りないほど、感謝をしております。
オススメをして下さった方、お気に入りをして下さった方、コメントをくれた方、イラストを下さった方…支えて頂きました。
そのおかげで完走できました。
全てがやる気に変わり、ずぼらな石船も更新ペースを守る事が出来ました。
長い話なのに敬遠せずにそっと読み始めて下さった方々に拍手喝采でございます。
何と書けば伝わるのか分かりませんが、幸せでした。
死ぬみたいですが全然元気です。
これから全員がどういった年の取り方をして、多くの体験の先に何を思うのか。
またゆっくりと歩いて行きましょう。
石の船で海を渡る。そんな名前を自分に付けたのも可能性を広げたいなと思っての事です。
皆さまの面白おかしい日々を願っております。
続きも長い話ですが、良ければお付き合いください。
『=X』連載中です。
石船海渡