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番外編:小ネタ集②

「あっ! クロス君だ~! おはよう! ほっそいねぇ、ちゃんと食べてるのかぁ~?」


 アイリスは組が違っても、この愛嬌と朗らかさのおかげか友人が多い。

 その中にいつの間にかクロスも組み込まれたようだ。

  

 最近行われた卒業プロムで打ち解けたようで、最近はこうして見かけるたびに話しかけてくれる。

 クロスからすればアイリスは他の女子生徒とは違い、煩わしい恋愛感情を向けてこない上に普段一緒にいる甲斐やクリスと違って頭がおかしくないという久しぶりのまともな女性という認識である。


「おはようございます、アイリス先輩! 食べてますよー! そういうアイリス先輩も細いじゃないですか」

「んん~? そんなお世辞言ったってダメだぞ~?」

「おはよう。クロス、調子はどうだ」


 笑顔もなく、不愛想な言い方で不自然に話しかけてきたのはアークだった。

 酔った勢いであのプロムの日に話し、意気投合したのはいいが普段から特別交流があったわけではない。


「お、おはようございます!」

「……良ければ、なんだがお前に繋がる映像通信の番号を知りたいんだが」


 突然、本当に突然の申し出だった。

 一瞬面くらってしまったが、取り繕ってみせる。


「映像通信……そうか、卒業したら連絡取れないですもんね。まだ個人用を開設もしていなかったので……すぐに取り掛かります。あ、そうだ、じゃあこれ」


 空に指を走らせ、手のひらに移し、アークに手渡した。

 それはまた浮かび上がり、黒い文字となる。


「住所……?」

「卒業後は観測機関を受けるつもりなので、受かれば毎日家には帰って来られます。アーク先輩が用があって、もしまだ僕が開設に手間取っていたらいらして下さい」

「なにそれー! ずるいよ、あたしにもちょーだい!」

「……そうか、お前は俺に用は無いと言いたいのか。なるほどな」


 自分の連絡先だけを渡してしまったせいか、アークは拗ねてしまった。


「えっ、あ、いやそういうつもりでは……!」

「……これは俺のナンバーだ。……俺は参謀省に入る事になった。まだ一人暮らしの家も探せていないが卒業後に決まったら連絡しよう」

「ちょっと無視しないでよ~! どうせあたしはメディア関係に普通に就職しますよーだ。でもあたしのもあげるね!」

「……ありが、とうございます……」


 この先。

 

 卒業後も関係が続く、というのは少し不思議な気持ちだ。


「あと、お前は笑うのが下手なんだから愛想を振るのはやめた方が良いぞ。癖なんだろうが俺の前ではやめろ。……その、なんだ。距離を、感じる」

「……アーク先輩はもっと笑った方が良いですよ、僕と違って老け顔なんだから」

「……!?」

「……なんちゃって!」

「クロス君の瞳に一切の光が無くなったよ……? それ……自力で出来るもの……?」



















「……カイっていつも同じ髪形よね、センター分けでストレート。可愛いわよ、可愛いんだけど……せっかくならもっと巻いたりしたら?」


 甲斐の髪型を様々な形に魔法でセットしながらクリスはつまらなそうな声で話す。


「……食堂に行く十分前に起きてるあたしにどうしろと?」

「え? 三十分前の言い間違いかしら?」


 三十分前に起きるという考えがそもそも甲斐には存在していないのを、クリスは知らない。


「ううん、だって朝にシャワー入んないし。たまに夜も忘れる時あるけど起きれないから」

「そんな私の目を見て言い放たないでよ……、どんな顔をしたらいいの? でもカイの髪の毛、質が良いのか寝癖って無いわよね」

「いや、お手伝い天使が着替えてる時に凄い速さで髪の毛整えてくれてる。いいって言ってもやるんだもん」

「カイ……あなた……あなたって人は……!」

















「え? 朝の用意に掛かる時間?」

「そうなのよ……カイがなんていうか……耳を疑う事ばかり言うのよ」


 早速クリスはこの学内で一番の麗人へ告げ口をしていた。

 もしかすると、甲斐の美意識向上に一役買ってくれるかもしれない。


「僕はどうしても朝が苦手だけど準備には時間が掛かるからね。 最悪でも二時間前には起きないと間に合わないな」

「……あら、儀式でもしているの? 朝じゃないと取れない生贄がいるのかしら?」


 話す相手を間違えた。

 そうクリスは強く感じていた。


「まず起きてから一度鏡で顔の調子を見るだろう? それからシャワーでトリートメントは一つに二十分ほど費やすからね。起きた時間に合わせて使う種類を減らしたり増やしたりと考えて……、そうそう! その日の体調や髪の状態を見て全てのプランを練り直すんだ。バスルームから出て、まず先に保湿さ。化粧水を全身に、手で押さえて染み込ませるんだ。それを何度も繰り返して肌がひんやりして来たら乳液で蓋をする。オススメだよ。それから髪の毛には更に微量のオイルを使うんだけど、オイルもかなりこだわりがあってね……」

「ここって美容学校だったかしら? あとわざわざ顔の調子なんて見ないわよ! そこまでするならもういっそカツラでも買ったら!? それに聞いている中で貴方はまだ着替えてもいないわ! 張り切りすぎよ! どの先生を落とすつもりなの!?」

「クリス、苛立つと美容に悪いよ。ここまで美しく生まれてしまうと高みを目指したくなるものなんだ」

「カイと足して二で割れば普通の人間が誕生しそうね」

「カイとのベイビー……? 愛の結晶……? 朝から君はなんて話を振るんだ! でもそれだと二で割るんじゃなくて、二乗だろうね! 間違いなく!」





















「シェアトって甘い物嫌いだよね?」

「ああ、匂いだけで吐き気が……待て! なんかくれるのか!? なら食うぜ! お前からなら大丈夫だ! そう俺の胃も叫んでる! くれ!」

 

 興奮しているのか、血走った眼で迫るシェアトは怖い。


「聞いただけだから! 血圧の上昇がヤバそう。他になんか苦手なもの無いの?」

「なんだよ……。あー……デカい虫は駄目だな。なんか怖ぇ」


 目を左右に動かすと、甲斐は弱い声を出す。


「食べるの……? い、いや……別にシェアトのご家庭の味を馬鹿にしてるんじゃないんだけど……へぇ……」

「食う訳ねぇだろ! 食べ物限定で聞いてんならそう言えよ! 普通に苦手なモン答えちまっただろうが!」

「まあいいや、よし。じゃあ、そういう事で!」

「な、何しに来たんだよ? どうせならここで話して行こうぜ、俺も暇なんだよ」

「あたしは暇じゃないんだ。クリスとルーカスからシェアトの苦手な物聞いて来てって言われて来ただけだから。じゃね!」

「おー。そうか。 ちょっと待て、この先お前と会えるか分かんねぇからもっと顔をよく見せてくれ……」

「なっ、なんで泣いてんの!? 怖い怖い怖い!」

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