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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第14章 そう、この日を待っていた
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第三百三十六話 卒業試験・午後

 前半を終えて、昼食を食べに来た三年生は大半の表情はまだ固い。

 結果が分からないので手応えがあった者でも不安が残っているようだ。



「ルーカス、食べなすぎじゃない? 光合成できるタイプだっけ?」


 

 その不安とは無縁の者もいるのだが。

 甲斐は心配しているようだが、きっちり自分の皿を料理で山盛りにする事を忘れていない。


「カイ……人に光合成できるタイプは存在しないよ……。もしいたとするならそれは人間じゃないから気を付けてね……」


 明らかに元気の無い声で力無く笑うルーカスの隣に座っているシェアトが、彼の肩に手を回した。

 

「どうしたんだよ? ヤマが外れたのか?」

「やめてよ、ルーカスがヤマを張るような人に見える? その…… ちょっと私がふるわなかっただけよ……。それで、ちょっと心配かけちゃったの」

「そういえば、ポーター。奮わなかった、というが元の成績はどうなんだ? 俺は総合順位だとミカイルとベイン位しか見ていないから分からないんだが」


 興味を持ったビスタニアに酷く慌てた様子でクリスは答える。


「ま、まあ普通よ普通! ……今までは、だけど」

「ううっ……胃痛が……。もう、僕はいいや……」


 ほとんど何も食べずにルーカスは手を置いてしまった。

 エルガは意気揚々と励ますつもりがあるのか無いのか、無神経な言葉を吐き出した。


「クリス嬢がもしも卒業出来なかったらシェアトも寂しくないし良かったじゃないか!」

「ちょっと待てよ! なんで俺が留年するって決めつけてんだ!? 午前は俺の野生のカンが仕事をしたからな! 午後からの科目は板書もしてた奴だから余裕だぜ!?」

「馬鹿か。板書だけで余裕な試験であれば、お前以外の全員が余裕を通り越して楽勝だ。馬鹿め」

「二回も! あーもう今のでマジで馬鹿になった気がする! やめろよこの赤毛が! バカバカバーカ! 俺なんて三回バカって言ったからお前は俺よりバカになったな! ざまあみやがれ!」


「本当にこんな兄と仲良くして下さってありがとうございます……。 近いうちに両親と殺処分の日取りを決めますので……」

 


 そう周りに頭を下げたクロスの瞳はそれはそれは、とても冷たい光を帯びていた。



「フルラちゃんはどうだった? ちゃんと兵の配置は出来た? 一問目はシェアト君がいたね、でも他は知っている名前も無かったしあの問題も誰も犠牲に出来ずにクリア出来ただろう?」

「んあっ!? あー……えーっと……」

「おいクソガキ、ちょっとこっち来いよ! ……あん? なんだよなんの話だ?」


 おどおどとしているフルラの横でシェアトに月組の試験内容を伝えると、自分の名前が出ていたという問題を見せられ、嬉しそうに笑い出しだ。


「マジだ! 流石にファミリーネームまでは出ないのか。で? お前ら月組達はちゃんと俺を活躍させてくれたのか?」

「ああ、犠牲者はお前一人だけだ。ゴミはゴミでも燃やされる前に役立てたようだ、どうだ? 嬉しいか?」

「僕も君の尊い犠牲のおかげでクリアする事が出来たよ、感謝する。安らかに眠れ!」


 ビスタニアとエルガは淡々と残酷な現実を語る。


「月組では友人を先に殺すようにとお触れがあったのか?そうじゃないならお前らの謎な連携はなんなんだよ。その点おチビはいいよなあ、お前の旦那も俺を助けてくれたみたいだし優秀じゃねぇか!いい夫婦だ、うん」

「あ、えと……わ、私は忘れちゃったぁ……あはっ」



 死にそうな顔色になったフルラを怪しむ事もしないシェアトは、やはり単細胞なのだろう。



「そういえば兄さんも筆記試験だったんですよね?……なんか、少し痩せました? ハードな実技試験でもした後みたいに見えますが……」

「あ、そうだった……! あたし午後の授業はシェアトの隣ではもう受けないから。滝行かよって位の汗流しながら妨害行為ばっかしてくるし、邪魔の権化みたいなんだもん。もうやだよ」

「もしかして俺、いじめられてんの? そうじゃなきゃ何この袋叩き」


 午後の授業を受ける前に上手くストレス解消が出来た数名はすっきりとした顔をしていた。

 またもや甲斐は落ち込み、非常に面倒臭い状態に陥っているシェアトを引きずりながら教室に連れて行く事になり、大切な試験前に疲労を溜めてしまった。












 午後は全組が四時間で四科目の試験であり、二時間後に一度休憩が入る。

 複数の教科が纏めて試験問題に入っているので、得意と不得意が別れている者でも点が取りやすいのだが、どの科目が何問あり、配点の詳細は不明なので油断は出来ない。


 シェアトは試験開始まで走り書きの字が並ぶ落書きだらけのノートを必死に読んでいたが、何がどこに繋がる、どういった意味の単語なのかは分からないままだった。

 甲斐は希望通りシェアトの後ろの席に座り、視界に入り込んでくる汚い彼のノートを時折見ていた。



「( ……ダメだ、なんかシェアトのノート見てると誤字と脱字がありすぎて何が正しいか分かんなくなってきた……。くそ、どうしたって邪魔しかしないのかこの男は……)」



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