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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
番外編:バレンタイン編
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番外編:5 友よ・さらば


「よし、あのおかっぱにも渡したし……。後はルーカスとクリスの癒しコンビか」


 星組の二人は本当にきっちりとしているので、大体早めに食堂に来ている。

 向かってみるとやはり二人はもう座っていた。


 しかしこの甲斐が気付くほどにクリスの顔が赤らみ、ルーカスが嬉しそうに笑っていた。

 いそいそとラッピングを開け始めたルーカスの邪魔をしては悪い。

 出直すべきだと思い、甲斐が一度食堂を出てみるとシェアトがこちらに向かって来ていた。


「まさかもう食い終わっちまったのかよ!? ちょっと待てよ、一緒に食おうぜ。あ……その……、バレンタインありがとな。 お菓子とかそういうの越えて手料理渡してくるとは思わなかったぜ。お前、作るの上手いんだな」

「どういたしまして。あたしはまだカラフルキャンディしか食べてないよ!?  冤罪だ! 冤罪だ! 食堂には悪鬼が浄化されそうな空気が立ち込めてるよ。シェアトなんて数秒で灰になるけどそれでも行ける?」

「キャンディ?  砂糖がバッテリーとかルーカスに毒されてんな……。食堂で何が起きてんだよ……? 俺が灰になるって何事なんだ」


 甲斐の言葉を聞かずに食堂へ入ったシェアトは青い顔をしてすぐに戻って来た。

 目を泳がせながら、甲斐の肩を掴む。


「く、クリスが気味悪ぃ顔してニタニタしてたぞ……。なんだあの不愉快な幸せオーラは……! あいつらに人目を気にするっつー配慮は無ぇのか……? つーか付き合ってもいないあいつらに何で俺達が気を使わなきゃなんねぇんだよ! むしろルーカスに渡してたあれに何か魔法でもかかってんじゃねぇのか……?」

「ね……? あたしもあの二人の空間にどんな顔して入って行けばいいか分かんなくて戻って来たんだよ。うちらの席、ある? オブジェになってない?」


 青い顔をして壁を殴りつけているシェアトと、その背中をさすりながら参っている甲斐達の元へこれまた悩ましい人物が現れる。


「二人ともそんな所で僕達の登場を待ちわびていたのかい!? 待たせてすまない! さあ、カイ! 僕の手を取って二人で入場しようじゃないか! シェアトは適当に花でも持ってぼんやり後ろを付いて来てくれたまえ!」

「テメエ、目ぇ開けたまま寝言か?別にお前らを待ってた訳じゃねぇよ! クリスとルーカスが周りに花咲かせまくってて臭くて敵わねぇんだ」



 そして更に邪魔者は増える。



「か、カイちゃん助けてぇ! ウィンダム君がずっと狂ったように私の個人情報をあの手この手で聞き出そうとしてくるよううう」

「フルラちゃん! 僕は至って真面目に君の家族について知識を深めているだけさ! さあ、全員の生年月日を偉大なるお父様からいこうか!」

「黙れおかっぱ! 川に帰れ! フルラも、証言するのは怖いだろうけど犯罪として立件する勇気も必要だよ!」

「……何を騒いでいるんだ。早くしないと食事の時間が無くなるぞ」


 とうとう一番遅いはずのビスタニアにすら追いつかれてしまった。


 エルガは何も気にせずに、堂々と胸を張って食堂へ入って行く。

 恐る恐るその後に続くと、ルーカスの耳と鼻、そして最後に口から見事に緑の煙が上がった所だった。

 床に落ちているのはクリスから貰ったであろうバレンタイン仕様のラッピングがされた箱と、何て事は無さそうな大き目のハート型クッキーだった。


「……なるほど? ハニートラップか。古典的かつ単純なやり口だが、信頼を培った上で行うと相手の精神的にも多大なるダメージを与えられるしね。クリス嬢がこんなにも出来る人だとは思っていなかった。見直したよ!」

「そうだな……、冷徹な一面も兼ね備えているのか。彼女の将来は明るいな」


 倒れた友人を心配するでもなくこの場面を解析するエルガと、一瞬にして何が起きたかを理解してしまったビスタニアは決して彼女の傍に行こうとはしない。



「ルーカス!? ちょっとやだ、どうしたのよ!?」



「……まるで自分が犯人ではないという演技も完璧だな……」

「おや、こちらに気が付いたようだね。彼女が手に持っているのはもしかすると僕らへのバレンタインのお菓子じゃないかな? ……どうする?」


 ルーカスが机にごとりと頭を打ち付け、床に体を倒すと周囲からは悲鳴が上がった。

 すぐに治癒室担当のフィーネが飛んで来て気付けを始める。


 エルガが最初に口にしたなるほどの意味はよく分からないが、割と冷静な月組メンバーにシェアトは恐れを抱いた。

 クリスが心配そうな顔をしながら、ルーカスをフィーネに任せると、手にした紙袋を持ってこちらに駆け寄って来る姿がスローモーションに見えた。





「大規模な爆発を目の当たりにしたあたし達に爆弾魔が爆弾持って走って来てるんだよ?退避以外無いでしょ」




 甲斐に続いて皆が脱兎のごとく逃げ出したが、その後ろでクリスが大声で何かを言っている。

 ルーカスの体が心配なのは皆同じだったが、今は自分の命が狙われているのだ。


 生きていてくれと心から思いながら、本気で走る六人の背後では中々スタミナのある爆弾魔が脱落者を待ちながら追い掛けて来ていた。

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