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第二百九十九話 リベンジ面接練習

「おねっしゃっしゃっす!」

「威勢が良いのは認めるよ。でもそれ、一歩間違えると失礼だからね。その時点でマイナスだからね。それでもいいなら良いんだけど」


 翌日、かなり気合の入った甲斐がやって来た。

 ギアの質問に対して一晩考えて来たのだろうか。

 目の充血が酷く、くまもしっかりと残っている。


「……まあ、座って。トウドウさん、人を殺した事ある?」

「ないッス! 一度も! 未経験でッス! あ、そちらはありそうですね~! 日課ッスか!?」

「ストップ、ストップ。何? どうしたの? 面接官に逆に質問とか何? いや、いいよ。話題。問題なのはそこですよね。もー、この前の方が良かったじゃないですか。今ペット飼った事ある? って私聞きました? 人殺すのが日課って聞いた事ないでしょ?そうだったらこの人ここでのうのうと面接とかしてられないよね?」


 

 顔を両手で覆って悲鳴のような声を漏らし出した。

 仕切り直して質問から始める。



「……この部隊では体験してもらったように、危険な場所へ赴くことが多いんですがそれについてどう思ってます?」

「……正直、怖いと思います。でも、それでもあたしも何か部隊で役に立ちたいと思っています!」

「そうですか。他の安全な職業では無く、何故我が部隊に志願したのですか?」

「……あたしは、魔法を使うのが好きなんです。それに、攻撃魔法が得意で……。この力をせっかくなら役立てたい。そう思いました。恐怖心に打ち勝てばいいだけです」


 模範的な回答だ。

 特にマイナス点ではないが、印象には残らない。


「……分かりました。貴女の元いた世界と、こちらの世界。何が違いますか?」

「魔法が、あるか無いか。それだけです」


 そう言って間を取る彼女は一度、斜め右上を見て思考をまとめているようだった。


「……ただ、あたしはこの世界に来てからずっとフェダインにいたのでこの世界の日常というものを知りません。情報が入って来ないので。ただ、私は元の世界にいた時も積極的に世界について考えた事はありませんでした。同じ世界で暮らしているのに、どこか……それこそ異世界のような気持ちで他国を見ていたのかもしれません。だから、この学校に入って驚きました。未来の主導者達を見ているようで。自分を恥ずかしいとも思いました」


 はっきりと言い切った彼女の言葉は、力を持っていた。

 ギアは一度目を閉じて、問いを考える。


「……成る程。案外、本当に違いは無いのかもしれませんね。魔法が使用出来る人など人口の二割にも満たないですし、全ての適合者は登録されています。それほど魔法使いは脅威に成り得るのです。魔法があるから、統制機構が生まれた訳ですし。……まあ、結局のところ魔法の使えない人々は、魔法のように人を殺せる兵器を手にしますから。さて、貴女は人のいう事を素直に聞ける人間でしょうか?」

「……そう、ですね。どちらかといえば、鵜呑みにしやすいです。そのせいで失敗もあったのかもしれませんが、まだ痛い目を見た事はありません。疑う事が上手く出来ないです」


 言い換えれば単純で、素直である。

 扱いやすいと踏むか、使いにくいと切るかは面接官次第といったところか。




「……ふむ、まあ大体十五分程らしいですし 正直面接官なんて普通は毎年変わるのでその人に合わせて話をして下さいとしか言えないんですがね。ただなんというか、貴女らしさに欠けますね」


 

 切り捨てられた気持ちになった。

 甲斐はがっくりと肩を落とした。

 

 ミスどころか完璧な出来栄えだと思っていたのだ。



「バッサリかあ……。うう、あたしらしさなんて出していいの……? 出したら絶対落ちると思うけど……!」

「あの部隊、個性派が多いですよ。貴女の今までの回答を沢山の志望者に混ぜて聞いてもきっと、誰の答えか分からないでしょうね。ああ、異世界との違いの回答は良かったです。きっと自分でも今までの生活の中で考えて来た事なのかなと思いました。そんなマニュアルみたいな答えばかりでは時間の無駄だと言われますよ」

「……ぐうの音も出ない……。鼻長くして待ってろよおおお!」


 また飛び出して行った甲斐は無駄に練習用に使っているドアも開けて出て行った。

 重い扉はギアが少しだけ開けておいたのでめりめりと自分を押し込む形で脱出している。


 なんとなく、言われた通りギアは自分の鼻を魔法で少し高くしてみたが視界に入り込むのですぐに元に戻した。

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