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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第6章 全ての始まり
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第百八十二話 もう一人の、自分

『どうしようかなあ、何から話せばいいのかなあ。あれもこれもそれもダメなんだよなあ。いやあ、ちょっとアレは……名称出さなきゃギリギリいける……?  ……そ、即死じゃないと思うしいってみるか……』

「やめろいくなーーーー! どーれって試すリスクが臓器一つ爆発って重すぎるわ! それあたしにもリンクするんじゃないの!? あたしの世界で急に女子高生の臓器が爆発したなんてなったら大問題だわ!」


 なんと恐ろしい事を映像の自分は言っているのか。

 そしてこれで本当にすべき事が分かるのだろうか。


『あ~……ヤバいヤバい話す事まとまんない。と・に・か・く! おたくにはやって欲しい事があるの。後始末みたいで申し訳ないんだけど。なんっかもう、凄い大変なわけ。『W.S.M.C』が軍事的圧力かけてきたと思ったら、あっという間に総攻撃しかけて来るしさー』

「……攻撃される側……。やっぱりこっちのあたしは『ゼータ』側なんだ……。何、やってんの……」

『まあそれもこれも、先のお話なわけ。で、今の甲斐ちゃんにしか出来ない事があります! それはな~に~か! あたしが自分で伝える事が出来ない分、どうにかこうにか死ぬ気で撮って来た映像使ってるわけですよ。なんとなくしか理解できてないかもしれないけど、それでも十分だから安心して』



 やはり、これはもう一人の自分へ当てた映像だった。

 これが、もう一人の自分かと思うと怒りが湧いて来た。


 へらへらと笑ってはいるが、自分が何をしでかしたのか分かっていないはずもないだろう。

 大量殺戮兵器を開発した、この事実は大罪ではないのか。

 そうでなければ、成長したシェアトのいる特殊部隊は動き出さないだろう。



『とりあえず、シェアト君だっけ? あいつさー、妙に勘が良いの。仕事上、何度か話した事はあるんだけど臓器が無事だからあたしから漏れたとは思えないし、どこでどう情報貰ってんのか分かんないんだよな。まあいいや、こんな大事になったのもヤツが原因だと思う。絶対そう。だから、どうにかしてほしいの』

「どうにか……って? ……ひ、平手打ちなら。 挨拶代わりにしてもあいつなら大丈夫でしょ…」

『そもそも依頼者が……ととと……駄目か。心臓ヤられるとこだった……。まあ、出来たら進路を変えて貰うのが一番かなあ。それで全部が丸く収まるから。でも難しかったら、他の道。あれだね、いるでしょーそっちにお坊ちゃん。あれとめっちゃ仲良くしといてよ』


 簡単に言ってくれるが、シェアトの進路を変えるなどかなり難しそうだ。

 そもそも、彼女の言う『丸く収まる』というのは誰にもばれずに大量殺戮兵器を完成させる事が出来るという事だ。

 何故、そんな事の為に彼の夢を犠牲にしなければならないのか。

 そんな事の為に、自分はこの世界へ呼ばれてしまったのか。


 お坊ちゃんとは、ビスタニアの事だろうか。

 しかしエルガも昨夜の口ぶりからもそうだが、これまでの日々で見ていた彼の振る舞い的にもいい家の出である事は間違いなさそうだ。

 お坊ちゃんと仲良くして何がどう変わるというのか分からないが、この世界の自分はとても優秀なのだろうが、心底嫌な奴だとも思った。




『ホントはね、もうこうして他の世界の自分と関わったりなんて完全にアウトだし……、未来を変えるだなんて論外。完全にばれたら一発アウト。それこそタブー云々以前に心臓どころか肉体ごと長期休暇取らされちゃうわ。でもね』




 ぐっと映像を映している機器に近付くと、顔のアップになった。

 にやりと不敵に笑う彼女を見ながら、自分はいつもこうして笑っていたのかと思う。



『それでも、譲れない物もあるし守りたい人もいるんだ。ちょっと位、手伝ってよ。無理なら無理でいいんだ、今までのは全部あたしのお願い事をずっと喋ってただけだし。もしかしたら、あんたも興味出たかもしれないしね。でも、約束してよ。死なないって。様子が分かるといいんだけど。とりあえず、あたしは暫く動けそうにないからあんたに任せるよ。……信じてるからね」


 映像を消そうとしたのか、奥へ手を伸ばした際に脇腹の辺りが映った。

 それは青い光に包まれている部屋の中で赤黒く見える、血に染まった白衣の一部だった。


 映している機器が転がってしまう。


 床には、大きな血溜まりが出来上がっている。

 そして、震える手でどうにかカメラを掴むと電源を切られた。


 もしかしたら、前の戦場の映像と同じ日なのかもしれない。

 では、あの映像を撮っていたのは。

 命がけで撮って来たと言っていたが、誰かに酷く攻撃を受けていたのは。


 こうして最後の映像は終わり、指輪にはもう謎かけの様な文が刻まれることは無かった。

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