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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第6章 全ての始まり
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第百七十九話 ごめんなさい、全てが嘘で

 お茶を出され、二人はそれを飲みながら甲斐がこれまでの指輪の話をしていた。

 三つの映像を見たという報告と、その魔法の発動した単語をランフランクへ伝えている。


「一個めが『MAGI』でしょ。で、二個目が……あっれーなんだっけな。そうだ、 『FIRE』。あと、最近のが『LORE』だよ」


 甲斐は、改変しランフランクへ伝えた。 


「……『MAGI』、古代の魔法使いの名称だな。なるほど、未来から過去の君へ贈られたものだから納得だ。そして君が魔法を使えると分かっていたようだな。ここに着いたのも必然という事か」


 それを聞きながら、紅茶を飲み干すとあっという間にお代わりがカップから湧いて来た。

 残りの二つについての考察も入る。


「そして『FIRE』か。これは前後の単語の雰囲気とは違うな。文は覚えているか?」

「えっと……、確か炎の詠唱呪文に似てた気がする。しっかり思い出せないけど。でも映像はどこかの戦場っぽかったよ」

「戦場……。映像に関しては後で聞こう。そして最後の『LORE』だが、伝承の他に物語といった意味もある。どちらも過去の話を現す意味合いだな。文は?」

「確か、これは未来からの……みたいな途中で終わってた文だよ。 書き留めるって事をしない愚鈍な生徒でごめんなさい……。手が何の為に付いてるのか分かっていなくてすいません……」


 本当は、全て覚えている。

 忘れないように何度も口に出して言い続けたのだ。


「……そうか。未来からの伝承か、随分と洒落た言葉の使い方をするな。して、映像は? 一つ目は以前に聞いた。二つ目と三つ目を教えて欲しい」



 二つ目の単語を隠し、正直に志望理由を言わなかったのも『W.S.M.C』に関わる事だったからだ。



 この世界の甲斐が、もしも『ゼータ』の兵器の開発に関わっていたのだとしたら、自分が研究職に付かなければ変えられるかもしれないと思った。

 そしてもしもこの世界の甲斐があの戦いの原因で無かったとしたら、別の誰かが未来のシナリオ通りに兵器を開発し、一つ目の映像の事態は巻き起こるだろう。

 だが、あの時何かの爆発に巻き込まれたとみられるシェアトも、自分が同じ部隊に入る事が出来たら助けられる気がしたのだ。


 きっと、シェアトやルーカスに伝えたとしたなら、彼らも近い未来に起こるこの事態について真剣に考えてくれるだろう。

 何といっても、異世界から来たという話を信じて助けてくれたのだから。

 しかし、この指輪の贈り主は決してそれを望んではいないのだ。

 ならば、自分なりに考えうる限りの最善の策を取ろうと思う。



 二つ目の映像の事は、音声も無く、誰と誰が戦っていたのか分からないまま終わってしまったと伝えたが、ランフランクに怪しんでいる様子は無い。

 そして、三つめの映像についても散らかった部屋で最初の映像と同じくテレビを映していたものだと伝えると悩んでしまったようだ。

 番組を聞かれるのはまずいので、テレビの電源が入っていない状態だったと付け加えておいた。



「これに関しては私も困った。思った以上に難解だ。そしてその映像は削除されてしまうので君の記憶頼りとなってしまうな。いや、人間誰しも記憶の錯誤は起きるものなのだよ。私もたまに教員席ではなく、生徒の席で食事をとってしまいそうになる事がある。何十年経っても、まだ学生気分のようで困ったものだよ」

「座ったらきっと周りの生徒にタメ口聞かれますよ。生徒との距離がぐっと縮まる! ……さてと。それじゃあ、今回は収穫ゼロですかね」

「そうだな、恐らく次が最後のようだ。見る事が出来たら教えて欲しい」

「りょ~かいです。それじゃあ、失礼します! 紅茶飲み過ぎて今にも下のお口から飛び出してきそう……」

「……余計な事を言わずに早く戻るといい。それと……気持は分かるが、指輪にばかり構っているんじゃないぞ。あくまで今は自習期間だというのを忘れずにな」



 やはり油断ならないと甲斐は生唾を飲み込んだ。



 怯えた顔で甲斐が部屋を出て行ったのを見届けると、ランフランクに何か考えているような色が見えたがすぐに忙しなく手を動かし始めた。

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