表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第6章 全ての始まり
173/393

第百七十二話 フルラの進路

 一年の時から変わらずにフルラの面談はシャンが請け負っていた。

 シャン自体が親しみやすいので、フルラも話しやすいのだろう。



「全然緊張しないでね~。んと、フルラちゃんはずっと就職希望だもんね。ただ、希望は未定だった……と。面談はまだ受けられるから、無理して決めなくていいよ~。どこか希望は見つかった?」



 一年ぶりの面談でシャンは内心とても驚いていた。

 昨年まで変わらずにおどおどと、目線を余り合わせなかった彼女は、今や見違えるほどに成長していた。

 しっかりとシャンを見据え、背筋を正して座っている彼女は元から礼儀正しくはあったが、それに良い方向に自信が付加されたようだ。


 一度深呼吸をしてから、ゆっくりと芯のある声で話し出した彼女を、今後また馬鹿にするような者はきっとどこにもいないだろう。


「……私は、研究職に、就きたいですっ。あの、成績は普通ですが、根気は、あります!」

「あら、研究職なの~!? いえね、いいのよ。フルラちゃん、武器召還の成績がかなり良いから……てっきりガーディアン辺りを狙っているのかと思ったわ」

「私は、武器を出せても、その……それだけなんです。守ろうと思っても、相手を傷つけられなくて。勇気がやっぱり、足りないんです。でも、それじゃあ……きっと、誰も守れないから」


 彼女が語るその言葉には、何か強い思いを感じさせた。




 あの臆病な少女が、誰かを守ろうとした事がある。

 その事実が、シャンの胸を熱くさせた。




「……そう、そうなの! フルラちゃんがしたい研究はぼんやりでも決まっているかしら? それが分かれば、いい研究所を探しておくわ! この学校の名前があれば、フルラちゃんの成績なら推薦も狙えるかもしれないし!」

「ほんとですかぁ!? あの……、高価な魔力器以外にも、魔法を使えるようになる方法を探したいんです…。限られた人だけが使えるんじゃなくて。手に入らなくて困る人が少しでも、減ったらいいな、って」

 

 きっと、彼女を変えたのは周りにいる友人の力だろう。

 下ばかり向いていた彼女の顔を覗き込んでくれた人物が、いたのだろう。

 そしてその気持ちは、彼女の強さへと変わっていったのか。


「な~るほどね! うん、オッケー! そしたら、魔力研究の方面で探しておくね! 恐らく着手しているとこもあるだろうから!」

「本当ですかぁあ! ありっ、ありがとうございますうううぅ…」

「ただ~……成績は落とさないように! 研究職は通年の成績を見られるからね! 前の試験では順位が上がってたし、最後の試験ではがつんともっともぉ~~っと上げちゃってちょ~だい!」

「ふええぇ……、頑張りますぅ……」



 二つに結われている髪の毛まで、彼女の気持ちに合わせてうな垂れたように見えて、シャンは堪え切れずに吹き出してしまった。

 不思議そうにこちらを見ているフルラの顔は、もう赤くなる事は無さそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ