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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第6章 全ての始まり
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第百七十話 生意気弟、進路を知って

 昼の食堂は人がまばらだった。

 上級生の面談の様子が気になっているのか、下級生達も仲の良い上級生と話している姿が多い。


「お疲れ様でした! ナヴァロ先輩! 如何でしたか!?」


 ビスタニアに輝く瞳で話しかけたのはクロスだった。

 甲斐達と話すときよりも可愛らしい笑顔と少年にしては高い声で、まるで別人のようである。


「……嫌味かとも思えるぞ。父のいる機関には首席での卒業が試験を受ける資格要件だ。息子と言えど俺も例外じゃない。まあ、今までが首席でも卒業時に死守できなければそれまでだしな。どの道チャンスは一回きりってわけだ」

「なんだ、随分と軽く言うじゃないか。前までの君なら今頃怒鳴り散らしているか、頑なに言葉を発さないのを貫いていたんじゃないかい」


 くすりと笑いながらウィンダムが茶々を入れる。


「ウィンダム……余計な事を……! ここまで来たら、どうもこうもないだろう。面談でも、激励をされて終わっただけだ。俺は太陽の誰かとは違って、どの科目も問題は無いし得手不得手も無いからな。問題は上位二人だが、それも自分の力でなんとかするさ」

「応援しています! なんていったって、ナヴァロ先輩は月組のエースですから! 確かにミカイル先輩とベイン先輩は中々手強いかもしれないですが、信じています!」

「あたしの事は応援してくれないの~?ね~」


 正にお邪魔虫である甲斐がクロスににやにやしながら話しかける。


「そんな露骨に瞳の光を消し去らなくても! さっきまでのあの可愛い後輩君はどこへ行ったの!?」

「……虫って……」


 わざとらしく肩を落とし、大きく、そして深いため息を吐くとクロスは甲斐を睨む。


「え? 何? 虫? どこどこ?」

「虫って、うるさい上に同じ所に来ますよね。何に誘引されているんでしょう?」

「それを今、あたしに聞こうと思ったのはなんで?」

「大きい虫は何で死にますかね?」


 うるさい奴が来てしまった事に完全に気を削がれたクロスは、渋々といった様子で友人の待つテーブルへ戻ろうとしている。

 それを察知して甲斐が行く手を阻むと、誰かを殺す直前にきっと人はこんな目をすのであろう瞳をしていた。



「虫博士やめろ。自分で調べろや。クロスちゃんはナバロの進路の状況聞くよりももっと気にすべき人がいるんじゃないの?」



 大きく舌打ちをした後に、頭を掻いてから応えるクロスはふてぶてしいことこの上なかった。



「ミカイル先輩にははぐらかされましたけど、ベイン先輩は教えてくれましたよ。それに貴女の事は正直どうでもいいです。進学も就職もどちらも想像できないですし、テレビでお会いしない事だけを祈ってます。もちろん業績を上げてとか、そう言った事では一切想定していません。犯罪者として出ないように、という意味ですよ。あ、ちなみにこれは心配ではなくこの学校の名誉の為にですけど」

「はいはい、そういう強がりはどうでもいいんだけどさ。あんたの兄ちゃんの事が最優先でしょ」



 甲斐の言葉が本気で分からない、といった顔をして斜め上を見上げている。

 そしてようやく手を打って笑った。



「……兄? ああ、いたなそんな人。余り成績が良くない事も噂で聞きましたし、どうせ適当な所に就職するんでしょう。……興味無いですよ。ただ就職もする気が無いというのであればこれでようやく家族としての縁が切れるかもしれないので、朗報なんですが」

「あんたって子は。ホントに馬鹿なんだね。シェアト、ダブリューダブリューダブリュードットみたいな所に推薦決まるかもってさ」

「……なんですかその妙に語感の良い所は。聞いた事無いですけど」

「気になるなら直接聞けば~? あたしはクリスとかフルラの面談結果聞きたいから、じゃね。あ、まだ終わってないかな?」


 言いたい事だけ言った甲斐は、足元に纏わりついている龍を抱き上げてクロスに渡すと自分の席へと戻って行ってしまった。

 龍はクロスの顔を覗き込んで話しかけているつもりなのか、小さく鳴いていた。


 優しくクロスに抱きしめられると、安心したのか大人しくなった。

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