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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第6章 全ての始まり
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第百六十九話 ルーカスの決意

「よし、っと……。あれ、まだこんな時間か。思ったより早めに片付いたな…」


 予定していた範囲も終わり、やはり勉強は自分一人でやるものだと実感した。

 面談の結果は手応えのあるものだった事も、今夜のやる気に繋がったのだろう。


 ここに来た時には『光無き神の子』を目指しているなど、口にするのもおこがましいと思っていた。

 心の中の思いを、あの時の自分は一体誰から守ろうとしていたのか。

 今となっては分からないが、自信の無さがそうさせていたのだろう。


 堂々と合格ラインが安全圏の職業を目指さなかったのも、破天荒な甲斐の影響力が強いのだろう。


 何かをするのに彼女は臆する事なんて無かった。

 その姿はまるで自分とは対照的で、そして時には心に葛藤を生んだ。

 決定的だったのは、今ある全てを捨ててでも日本へ迎えに行くと決めた瞬間、今までの保守的な自分はどこか遠くへ行ってしまったように感じた。


 努力して入ったこの学校を、もし退学となったとしても後悔なんて無いと思える強さがあるのは全て、あの小さな彼女のおかげだろう。

 誰かを助けたという実感がある経験は初めてだった。


 いつも自分が周囲に助けられて生きてきたような気がして、申し訳なさがあったのは事実だ。

 自分の命がこの世界に生まれた事の意味を、初めて実感した気がした。




 星組は治癒に特化する技術を身に着けられるのだが、実戦では余り役に立てない。



 太陽組が主戦力となり攻撃をしている中で、月組は戦況を読みつつ皆を守る。

 その中で星組の自分は、じっと誰かが負傷をするまで待つしかなかった。


 太陽組のように強力な攻撃魔法は出せない。

 月組のように高精度な盾も出せない。


 どちらも気休め程度の物しか、星組にいる者の多くは治癒方面以外の魔法は不向きであり出来ないの

だ。





 なので合同の実戦練習では非常に肩身が狭かった。

 教員指定の知らない者同士で行う実戦練習の日は、よく月組に嫌味を言われたのを思い出す。

 『屑星』はよく的を射ているじゃないかと、最初に言われた時は感心したものだ。


 しかし、今は違う。


 皆、自分は自分の仕事をするだけだと胸を張って言える。

 それぞれに向き不向きがあり、出来る事と出来ない事がある。

 だからこうして組が分かれ、それぞれに特色があるのだ。

 最初から示されていたはずの答えが、その意味が分からなかったのは、自分自身に誇りが無かったからなのだろう。





 戦場で出る負傷者の数を調べた時に愕然とした。

 死傷者の数には、驚愕した。


 何故医療班も部隊と共に行っているはずなのに、このような数になってしまうのか分からず、調べていた。

 その理由として分かったのは、負傷した際に拠点まで戻る力が無く、周りも己の事で手一杯になってしまい、結果的にそこで命を落としてしまうケースが多いからだった。


 医療班は拠点にいるらしいが、それは責められなかった。

 危険な場所で治療をしていては、意味が無いのだ。

 安全性の高い場所で治療を行うのは当然だし、医療班には攻撃力が高い者もいない為戦場には入れない。





 だが、それではいけないのだ。





 自分達の命を守り抜いているので、結局は誰も助けられない。

 果たしてこれは正解なのだろうか。


 『光無き神の子』の名は知っていたし、有名だったので単純に憧れていた。

 彼らが他の医療団と何が違うかも分からずに。




 そして、知った。

 彼らが過酷な戦場の中で身を隠しながら、その戦場の中で負傷者の所属を問わずに出来る限りの命を救っている事を。



 今日、面談で目指しているものを伝えた。

 沈黙するギアを黙って見つめ続けた。


 そして暫くの間の後に、足りない技術は残された時間で補うようにと言われ、入団できる確率は半分より低く、何もかもが不足しているとも言われたが、単願で志望する事にした。

 こんなにも強く何かを希望し、意見を述べた事など初めてだった。

 そのおかげで鼓動が痛い程、鳴り響いていたがそれすらも心地良かった。



 早く彼女に会いたい。

 そして頑張るよと苦笑いを浮かべ、眉を下げてしまう僕をどうか、いつものように荒っぽく励ましてほしい。

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